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エピローグ第9話:犯人の告白 『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解剖
確かに犯人であるウィロビー署長役のウディ・ハレルソンは、この編集長の描写する「徽章をつけた紳士」通りね…
詳しくは前回をどうぞ。
しかも編集長は「徽章をつけた紳士」の眼の奥に、こんなことを感じるんだ。
その眼には善良さと、さらに何か、しかるべき呼び名をつけにくいものが、かがやいている。この《何か》は、小さな動物が悲しんだり、苦しがったりしている時に、その眼の中に見いだし得るあの光だった。何かこう、哀願するような、おとなしく我慢しているような幼い感じの光だ…
中央公論社版(訳:原卓也)より
これって…
末期癌っちゅうことを告白した時にウィロビーが見せた《哀願するような眼》そのまんまやんけ…
あと、吐血した時に見せた目…
グ、グウゼン デショウ…
それだけじゃない。
小説『猟場の悲劇』の「前書き」には、もっと興味深い描写がある。
殺人事件の真犯人である「徽章をつけた紳士」の書いた『予審判事の手記』を編集長が読むシーンだ。
このシーンが『スリー・ビルボード』では、
「真犯人であるウィロビー署長の手紙をテラスで読んでいるミルドレッドの横を列車が通過していく」
というシーンに置き換えられた。
マジで!?
『スリー・ビルボード』を語る上でも非常に重要なシーンなので、詳しく解説しよう。
4月のある日に「徽章をつけた紳士」から手記を受けとった編集長は、約二ヶ月間ほど放置していた。
そして休暇で別荘へ向かう列車の中で、編集長は暇つぶしに手記を読み始める。
この時に《何か》が引っ掛かり、編集長は別荘に着いてから改めて手記を二度も熟読するんだ。
夜が明けた頃、編集長は手記の言葉の端々に隠されている《恐ろしい何か》を確信し、別荘のテラスでひとり身悶える…
車室に腰をおちつけるなり、わたしはノートを開き、中頃から読み始めた。(中略)その晩、わたしは寸暇もない身でありながら、小説全篇を、書きだしから、達筆で書かれた《了》という言葉まで、すっかり読み通した。夜もふけてから、わたしはもう一度この小説を読んでみた。そして夜明け頃には、まるで、不意に舞いこんできた新しい、やりきれぬ考えを頭から拭い去ろうとでもするかのように、テラスを隅から隅へ歩き回り、こめかみをしきりにこすっていた…。また実際、堪えられぬほど鋭い、辛い考えだった…
中央公論社版(訳:原卓也)より
ミルドレッドがウィロビー署長の手紙を読むシーンの「列車」と「テラス」は、こっから取られたんやな。
あの局面で今まで一度も通らなかった列車が通過するのは、どう考えても「何か理由がある」としか考えられないもんね。
しかしよくマーティン・マクドナーは、線路が真横にあるテラスを見つけたな(笑)
僕ももっと早くそこに気付いてチェーホフ『猟場の悲劇』を読むべきだった。
そうすれば、あんな遠回りをせずにここへ辿り着けたというのに…
まだこのエピローグ編を読んどらん連中は、いまだにオッサンが唱えた「ウィロビー=レイプ犯」説を信じとるかもしれんな。
あの時は一日数十万アクセスあったけど、今は数千だからね。大部分の人がこのエピローグ編を読んでいないことになる。
今これを読んでいる人たちには、ぜひ拡散に協力して戴きたい。
誤解し続けている人たちのためにも…
わたしからもお願いするわ。
お前ら、カメラ目線でなに言うとんねん。
さて、編集長の狼狽の描写は続く…
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