「風・瓶の蓋・柳」Man in the Mirror(マン・イン・ザ・ミラー)中篇 ~『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日
スナックふかよみ
つまり「A summer's disregard」とは…
「何かの目的のために壮年期が犠牲にされた」という意味なのですか?
いったい何のことでしょう?
もっと具体的に言って欲しいわよね。
なんでオブラートに包んだような言い回しなわけ?
それは次の「A broken bottle top」を読み解けばわかる…
ちょっと待って!
その前に、もう1回『マン・イン・ザ・ミラー』を聴きたいかも!
どうぞ。
サンキュ!
それではミュージック、スターティン!
うーむ…
ちなみに《ボトル・トップ》って、瓶のフタのことですよね?
そうです。
素材・形状・瓶の大きさによって様々なボトル・トップがあります…
だけど、なんで《壊れた瓶の蓋》なの?
《bottle top》を別の表現に言い換えればいいんだよ。
言い換え?
《瓶の蓋》を意味する英語《bottle top》は...
《 jar lid 》と言い換えることが出来る。
ジャー・リッド?
確かに、広めの口の瓶のことを《ジャー》って言うわよね…
そして《リッド》は…
《まぶた》のリッドかしら?
そう。lid は《フタ・まぶた》という意味ね。
そして《 jar 》は駄洒落になっている。
またダジャレ!?
《 jar 》は《 Jah 》のダジャレ。
Jah(ジャー)は Jeh・Yah・Yeh とも書くんだけど、これは《神ヤハウェ》のことを指す。
「神を褒め称えよ」という意味の Hallelujah(ハレルヤー)とか、「神は救う」を意味するイエスの本名 Yehoshua(イェホーシューア)など、祈りの言葉や人名に《ジャー/ヤー》はよく使われるんだ。
レゲエの歌詞にも出てくる《ジャー》のことですね。
つまり jar lid(瓶の蓋)は Jah lid(神のまぶた)ってこと?
その通り。
A broken bottle top
⇩
A broken jar lid
⇩
A broken jah lid
打ちひしがれた神のまぶた
こういう仕組みになっていたというわけだ。
A summer's disregard
犠牲にされた壮年期
A broken bottle top
打ちひしがれた神のまぶた
そして次は
And a one man's soul
ひとりの男の魂
これって…
30代前半という壮年期に《生贄の子羊》として処刑されたイエス・キリストのことじゃん。
『十字架のキリスト』エル・グレコ
だから、こう続くんだ。
They follow each other on the wind ya' know
それらが風に乗ってフォローし合う?
どういう意味でしょうか?
ポイントは「the wind ya' know」だ。
マイケル・ジャクソンは「ザ・ウィンド・ジャー・ノウ」と歌っている。
ああっ!またジャーが…
「the wind ya' know」は「神のみぞ知る風」という意味になっている。
冒頭でボブ・ディランの『BLOWIN' IN THE WIND(風に吹かれて)』が引用されていたけど、この《the wind》というのは《真理・万物の究極の答え・神の計画》という意味なんだ。
そもそも『BLOWIN' IN THE WIND(風に吹かれて)』自体も、旧約聖書『伝道の書』を元ネタにして作られていた。
『伝道の書』では、何度もこう繰り返されるんだよね…
「人間にはモノゴトの理由や本質を理解することはできない。塵から生まれ塵に帰る人間の一生など《空》に過ぎない。真理は《風》のように掴むことはできない」
映画『GATTACA(ガタカ)』の冒頭で引用され、物語の元ネタにもなっていた『伝道の書』ですね。
まるで仏教や禅のように「一切は空である」が連呼される異色の書でした…
つまり、こういうことか…
犠牲にされた壮年期...
打ちひしがれた神のまぶた...
ひとりの男の魂...
神による人類救済の答えは風の中
あたし、てっきり《家が無くて、お腹いっぱい食べられない、可哀想な子供》のことを歌ってるんだとばっかり思ってた…
ダブルミーニングになってるんだよ。
《家が無くて、お腹いっぱい食べられない、可哀想な子供》とは、イエス・キリストのことでもあるからね。
あ、確かに…
だから続く歌詞も、2つの意味にとれるような内容になっている。
Cause they got nowhere to go
That's why I want you to know
《可哀想な子供の歌》として読めば…
行き場のない子供たちは八方ふさがり
だから僕は君にわかって欲しい
《哀しみの子イエスの歌》として読めば…
この地上に神の愛は留まり続けている
だから僕は君にわかって欲しい
なるほどね…
ネガティブな内容とポジティブな内容が同時に歌われているんだわ…
すごい…
そしてサビだ。
I'm starting with the man in the mirror
I'm asking him to change his ways
And no message could have been any clearer
If you wanna make the world a better place
Take a look at yourself and then make a change
Na na na, na na na, na na na nah
出発点は、僕の目の前にいる、鏡に映る《その人》だ
自分の生き方を大きく変える覚悟はあるか?
これ以上はっきりとしたメッセージはないだろう
世界を少しでも良いものにしたいのなら
自分自身を見つめ、どうすればいいのか考えてみよう
そうすれば、自ずと変化はもたらされる
ここは特に問題ないですね。
「Na na na, na na na, na na na nah」は?
そこは別に意味はないでしょう。ナナナ、ナナナ、言ってるだけですから。
全くの無意味ってわけでもないんだな、これが。
え?
そこはまた後で詳しく話そう。
2番の歌詞を見ていくよ…
I've been a victim of a selfish kinda love
It's time that I realize
There are some with no home
Not a nickel to loan
Could it be really me pretending that they're not alone
僕は独りよがりの愛に酔っていた
今こそ気付かなきゃいけない
家が無い人がいる…
あっ!「小銭もない」って…
コインの帰属問題ですね。
『皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい』
ピーテル・パウル・ルーベンス
そして、歌詞はこう続く…
A willow deeply scarred,
Somebody's broken heart
And a washed-out dream
They follow the pattern of the wind, ya' see
'Cause they got no place to be
That's why I'm starting with me
出たわね。問題のヤナギ!
柳は深く傷跡を残している
誰かの傷ついた心
そしてボロボロになった夢
なんで突然ヤナギ? 何のことかしら?
もしかして、イエスが磔にされた十字架のことじゃないですか?
柳の木で作られていたとか…
バカね、あんた。
柳の木なんてクネクネしてて、どう考えても十字架に不向きでしょ!
あ、確かに…
ではなぜ柳の木?
♫willow weep for me~♫
え?
うふふ。
『Man in the Mirror』にヤナギが出てくるのは、この歌を想起させるためなの…
今の若い人は知らないかしら?
『柳よ、泣いておくれ』って歌...
あ、そのタイトルは聞いたことがあります…
でも曲は知りません…
じゃあ、歌っちゃおうかな。
文代さん… セクシーすぎます…
だけど、この歌ってさ…
恋人にフラれたから、柳の木に向かって「アタシのために泣いて頂戴!可哀想なアタシを慰めて!」って言い続けてるだけの歌でしょ?
さすがに演歌でも、ここまでイタい歌はないわよね?
全然『マン・イン・ザ・ミラー』と関係ないじゃん。
実は、そうじゃないんだよね…
『Willow weep for me』は、そういう歌じゃないんだ...
なに言ってんの?
だってタイトルが「柳よ、泣いて頂戴」なのよ。
そもそも《willow》は《柳》ではない…
は?
つづく
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