我々はどこから来たのか?我々は何者か?我々はどこへ行くのか?《深読み 千と千尋の神隠し&タイタニック》vol.14
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2019年12月XX日
途方もない考えに取り憑かれた男の夢の中
第一階層『千と千尋の神隠し』
国道21号の分かれ道
そしてこの『受胎告知』は、『Gisselle(ジゼル)』だけではなく、「ジャックのスケッチブック」から導き出される絵でもある…
つまりジャックが描いた絵とはローズの妊娠を伝えるもの…
そこからローズの本当の人生が始まる…
その通りだレウコノエ…
それでは次に行くとしようか…
この絵も非常に興味深い…
ローズが次に見たのは『わき毛のある女』ね…
とってもわかりやすく、ローズのポーズとよく似てる…
ちなみに、ケイト・ウィンスレット演じるローズには腋毛は無かった…
まだ17歳だから生えていなかったのか、もしくはセレブ女性のたしなみとして手入れされていたのか…
それなのに、ローズの未来を描いたジャックの絵には「わき毛」があった…
しかもチラッと見えるレベルではなく、堂々と「わき毛」を見せつけるポーズを取っていた…
ジャックは、いったいどんなビジョンを見て『わき毛のある女』を描いたのか…
はたしてジェームズ・キャメロンは、あの『わき毛のある女』で何を伝えようとしたのか…
James Cameron
『わき毛のある女』を描く際にジャックが見たビジョン…
それは「パティ・スミス」のビジョンだ…
ジェームズ・キャメロンは、1978年の春に発表された PATTI SMITH GROUP のアルバム『EASTER(イースター)』のジャケット写真を踏まえて、あの絵を描いた…
クリソツ…
しかも、アルバム『EASTER』からシングルカットされた曲のレコードジャケットは、服を脱いだパティ・スミスが乳房に手を置いたポーズだった…
つまり『わき毛のある女』は、アルバム盤のジャケ写とシングル盤のジャケ写を組み合わせたものになっている…
ここまで来ると、もう間違いないわね…
ジェームズ・キャメロンは、明らかにパティ・スミスの『EASTER』を想起させようとしていた…
映画『TITANIC(タイタニック)』の物語に秘められた真実、真のテーマを伝えるために…
その「真実」とは…
婚約していたローズが、大西洋上のタイタニック号船内で、夫ではない男性ジャックの子を身籠ったこと…
そしてローズの孫娘リジーも、大西洋上のタイタニック号探査船内で、トレジャーハンターの子を身籠るということ…
ローズはジャックと「ダンス」して、リジーはトレジャーハンターと「ダンス」した…
映画『タイタニック』における「ダンス」とは…
「妊娠」のフラグ…
その通り…
ちなみに「ダンス」が「妊娠」のフラグというアイデアは、四福音書の1つ『Luke(ルカによる福音書)』第1章から来ている…
有名な「天使ガブリエルによる処女マリアへの受胎告知」の次に起きる出来事…
『Annunciation(受胎告知)』
Fra Angelico(フラ・アンジェリコ)
天使ガブリエルはマリアへ告げた…
親族のエリサベトも同じように妊娠していると…
しかも十代後半のマリアとは違い、もう子供を持つことを諦めていた高齢での初妊娠…
天使ガブリエルが去った後、マリアは急いでエリサベトのもとを訪れる…
いわゆる「マリアのエリサベト訪問」という逸話…
『Visitation』
Mariotto Albertinelli
(マリオット・アルベリティネッリ)
マリアがエリサベトに挨拶をすると、お腹の中で胎児のヨハネがダンスを始めた…
二人は喜びに包まれ、天使ガブリエルが語った主のメッセージを真実だと確信する…
『ルカによる福音書』1:39-45
そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、ザカリヤの家に入ってエリサベツに挨拶した。エリサベツがマリヤの挨拶を聞いた時、その子が胎内で踊った。エリサベツは聖霊に満たされ、声高く叫んで言った、「あなたは女の中で祝福された方、あなたの胎の実も祝福されています。主の母上が私のところに来てくださるとは、なんという光栄でしょう。ごらんなさい。あなたの挨拶の声が私の耳にはいった時、子供が胎内で喜び踊りました。主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう。」
そして、ローズの孫娘 Lizzy(リジー)の名は、マリアの親族エリサベトの英語形 Elizabeth(エリザベス)の短縮形…
つまりジェームズ・キャメロンは、リジーの妊娠を暗示させるため、わざわざ「エリザベス」という名がつく女優スージー・エリザベス・エイミスを起用した…
Susan Elizabeth Amis(1962 - )
リジーが祖母ローズと共にタイタニック探査船に乗った1996年時の年齢は定かではないが、おそらくあの雰囲気からすると、リジーを演じたスージー・エリザベス・エイミスと同じく三十代後半に差し掛かる頃…
三十代後半で妊娠して初めて子を産む場合は高齢出産とされる…
まさにマリアの親族エリサベトと同じように…
しかもスージー・エリザベス・エイミスは、あの後本当に妊娠をして高齢出産をした…
彼女をリジー役に起用した張本人ジェームズ・キャメロンとの間にできた子を…
リジーをゲットしたジェームズ・キャメロンは、まさにトレジャーハンターだったというオチ…
このオチは、さすがのジェームズ・キャメロンも想定外だったはず…
まさか、あのシーンが本当に「受胎告知」になり、リジーのお腹の中をダンスさせてしまうとは…
ちなみに、トレジャーハンターのBrock Lovett(ブロック・ラヴィット)が「宝石」に異様な執着心を持ち、なぜか「葉巻の香り」にこだわっていたのは、エリサベトの夫ザカリヤが投影されていたから…
ルカ第1章の記述によると、ザカリヤは神殿の宝物を扱う聖職者で、いつも聖所にこもって香を焚いていた…
苗字「ラヴィット」は、ヘブライ語で聖職者を意味する「ラビ」を想起させるもの…
ジャックの名前「Jack Dawson」も、ルカ第1章「受胎告知」から取られたものだ…
天使ガブリエルがマリアに言ったセリフが由来だな…
『ルカによる福音書』1:31-33
「見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」
「Dawson」とは「Davidson」の短縮形、つまり「ダビデの子」という意味…
「Jack」は「John(ヨハネ)」の愛称であると同時に「Jacob(ヤコブ)」の短縮形でもある…
『ルカによる福音書』第1章が元ネタの「ダンスは受胎のフラグ」は、『タイタニック』以外でも使われている…
最も有名なのが『BACK TO THE FUTURE(バック・トゥ・ザ・フューチャー)』のダンスパーティー「ENCHANTMENT UNDER THE SEA(魅惑の深海)」のシーンだろう…
BTTFは「受胎告知」の物語…
確かにフラ・アンジェリコの絵『受胎告知』は、マリアのいるホールの天井が水面みたいになっていて「海の底」のように見える(笑)
『EARTH ANGEL(地上に降りた天使)』で「受胎告知」を成功させたマーティは、アンコールに応えて『Johnny B Goode(ジョニー・B・グッド)』をハードロック風に演奏する…
しかしハードロックを初めて聴いた1955年の若者は、その音色に驚いてダンスをやめてしまう…
そしてマーティはこう言った…
「君たちにはまだ準備が出来ていなかった。君たちの子供は大喜びするんだけどね」
「Johnny B」とは「John the Baptist」つまり「洗礼者ヨハネ」のこと…
そして『Johnny B Goode』とは「Johnny be good」つまり「ヨハネは喜ぶ」という意味…
だからロバート・ゼメキス監督は、『STARWARS(スターウォーズ)』のルーク・スカイウォーカーみたいに、マーティの右手を失わせた…
「受胎告知」「お腹の中のヨハネが喜び踊る」の元ネタは『Luke(ルカによる福音書)』だから…
では、話を戻そう…
ローズがジャックと踊った THIRD CLASS DANCE(三等客室のダンス)は、いわゆるケルト音楽によるものだった…
だから演奏していたバンドには、バグパイプ奏者がいた…
パティ・スミス『イースター』のバンドにもバグパイプ奏者がいた…
最後の1分30秒間はバグパイプの音が流れる…
そしてパティ・スミス『イースター』の歌詞は…
映画『タイタニック』における、ローズとリジーの物語そのもの…
出だしはこう歌われる…
Easter Sunday, we were walking
Easter Sunday, we were talking
Isabelle, my little one
Take my hand, time has come
復活の主日 私たちは歩みを進めた
復活の主日 私たちは語り合った
私の可愛いイサベルよ
私の手をとって 時は来た
Isabelle(イサベル)とはエリサベトのフランス語形で、英語の Elizabeth(エリザベス)にあたる…
つまり「時は来た」と悟った「私」が「手をとって」と頼んだ「可愛いイサベル」とは…
海底のタイタニック号の金庫の中からハート・オブ・オーシャンを身につけた自分のヌード画が発見されたことを報じるニュースを見たローズが、あそこへ連れて行ってと頼んだ孫娘リジーのこと…
そしてタイタニック号は、キリスト教で最も重要な祝祭「イースター(復活の主日)」と深い関わりがある…
タイタニック号は1912年の4月10日にイギリスのサウサンプトン港からニューヨークへ向けて出航した…
この年のイースターは4月7日で、その日から次の日曜日14日までは「主の復活の8日間」と呼ばれる復活節の最初の重要な一週間になり、毎日の特別な礼拝や典礼が行われる…
多くがアイルランド・スコットランド系のカトリック教徒だった三等客室で盛大なダンスパーティーが開かれていたのも「主の復活の8日間」だったから…
そして、流氷との衝突事故が起きたのも、「主の復活の8日間」の最終日14日の夜だった…
そして歌はこう続く…
Isabella, all is glowing
Isabella, all is knowing
And my heart, Isabella
And my head, Isabella
イサベラ すべてが火照っている
イサベラ すべてが示される
そして私のハートが イサベラ
そして私のヘッドが イサベラ
「私のハート」とは…
誰にも言わず隠し続けて来た「ジャックを想うローズの心」であり…
「Heart of the ocean(碧洋のハート)」のこと…
そして「私のヘッド」とは…
ジャックと再会する夢(ビジョン)を見させた「頭の働き」であり…
ローズの命を救った「CROSSHEAD(クロスヘッド)」のこと…
多くの人はローズが乗っていたものを「ドア」だと勘違いしているが、あれは「ドア」ではない…
ドアの上部「CROSSHEAD(クロスヘッド)」と呼ばれる部分…
ローズが横たわっていたのは「ドア」ではなく「クロスヘッド」…
なぜならあの時ローズは、お腹の中に夫の子ではない子供を身籠っていた…
つまり「INRI」を受胎していたから…
『Crucification(キリストの磔刑)』
Bramantino(ブラマンティーノ)
「磔刑図」のモチーフは、ローズがハート・オブ・オーシャンを海に投げる際に、はっきりと再現されていた…
欄干のシルエットや、水面に映ったクレーンで…
そして、パティ・スミス『イースター』の歌詞が凄いのは、ここから…
『タイタニック』の物語に隠された、ローズとリジーの秘密が語られている…
つづく
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