深読み探偵おかえもん引退作品『BACK TO THE FUTURE(バック・トゥ・ザ・フューチャー)』第2話
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さて、ホントにどこまでわかっていることやら…
それじゃあ、ひとつ、テストでもしてみるか。
テスト?
これを見て、何を思う?
あんたに「愛の力」が、わかるかな?
映画『BACK TO THE FUTURE(バック・トゥ・ザ・フューチャー)』の、あまりにも有名なオープニング・シーン…
マイケル・J・フォックス演じる主人公マーティーがスケボーに乗ってる時に流れる『Power of Love』が「愛の力」だろ?
やれやれ。あんたはやっぱり何もわかちゃいねえ。
違うのか、パパゲーノ?
ドクのガレージ、学校の廊下、オーディション、時計台前広場…
「愛の力」について触れる場面なんて、どこにも無かったはずだ。
どこにも無いだと?
ば~か。全部なんだよ。
ぜんぶ?
あの4つのシーンすべてが「愛の力」だ。
映画の冒頭10分間、「愛の力」以外何も描いちゃいない(笑)
「愛の力」以外何も描いていない?
いったいどういうことだ?
ふふふ。
そもそも映画『BACK TO THE FUTURE』における「Power of Love」、「愛の力」とは何だ?
マーティーが、父と母をくっつけて、自分を妊娠させること…
自分自身の手で、父と母を結び付け、自分を誕生させることだ。
その通り。
この映画における「Power of Love」とは、「自分の手」で「父と母」を結び付け「自分を妊娠させる」という奇跡のわざ…
まだ生まれてないどころか、母の胎にも存在しない者が、自分の手で自分を妊娠させる奇跡、「自作自演の受胎」ということ…
これとクリソツな話、そっくりな出来事があったよな?
あんたが元いた現実世界で。
そんなこと現実に有り得るわけないだろ。
これは映画の中の話、つまり作り話、フィクションなのに。
「手を貸して♡」
は? 何だよ急に女みたいな声を出して。
気持ち悪いからやめてくれ。
いいから手を貸せ。俺の腹に手をあてるんだ。
お前の腹に僕の手を?
わかったよ…
これでいいのか?
「ほらココ。動くのわかる?」
はい? 動くって何が?
「赤ちゃん。まひとさんの弟か妹よ」
赤ちゃん? まひとさん?
いったい何の話だ?
そうか…
あんたは5年も夢の世界を彷徨っているから、知らないんだな。
だからこの俺様を見ても…
知らないって、何を?
あんたの元いた世界では、宮崎駿の最新作が公開された。
宮崎駿の最新作?
バカ言うなよ。そんなのあるわけないだろ。
宮崎駿は『風立ちぬ』で引退したんだ。
カヘッ、カヘッ、カヘッ(笑)
宮崎駿の引退詐欺を真に受けるとはお目出度い奴だな。
これまで宮崎駿は何度「引退」を口にしてきた?
確かにそうだけど…
『風立ちぬ』は本当に引退作だって、あんな記者会見まで開いて…
あんたが五年もうつつを抜かしている間に撤回したんだよ。
さっきの俺のセリフは、その最新作の冒頭10分の中に出て来る。
主人公がヒロインのお腹をさわる場面だ。
新しいお母さんのお腹の中に子供が…
本当のお母さんは、映画冒頭でいきなり死んでしまうのか…
そんな重要な登場人物が、物語のはじめに亡くなってしまうなんて…
しかし再び主人公の前に現れる。
若い頃の姿で。
死んだはずの人間が若い頃の姿で現れる?
つまり主人公が過去へ行くってことか?
そして主人公と出会ってしまったことにより、未来に自分が悲惨な最期を遂げることを知ってしまう。
ええっ!?
しかし主人公のために、その未来を選ぶんだな。
自分が死の危険を冒すことによって、主人公は時空を超えた前代未聞の冒険、奇跡をやってのけたわけだから。
なるほど…
何だか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクみたいだな…
ドクはこっそり防弾チョッキを着て、死んだふりをしていたけど…
だけどなぜ急にそんな話を?
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の冒頭10分の中、時計台前広場のシーン…
主人公がヒロインのお腹を触っていただろ?
ああ、確かにマーティはジェニファーの腹を触っていた。
キャンプに行って二人きりでロマンチックな夜を過ごそうって言いながら…
その通り。
マーティは「Lie out underneath the stars」つまり「星空の下でチョメチョメしよう」と言っていた。
だから彼女のお腹を触ったんだな。
あれはジェニファーが妊娠することの暗示だ。
「チョメチョメ」って山城新伍か。
そんな古いギャグ、久しぶりに聞いたよ。
「lie out ~」は「~に寝転ぶ」だから、普通に「星空の下に寝転んで」と言えばいいだろ。
「寝る」には「エッチする」という意味もあるから、わざわざ「チョメチョメ」なんて言わなくてもいい。
ば~か。騙されてやんの。
普段エッチなことばかり考えているから、そういう発想しかできないんだろうなあ(笑)
でも、周りに誰もいない場所で若い二人がすることはエッチ以外に無いし、妊娠するにもエッチが必要だろ?
そうだ。大文字の「H」が必要。
ほらみろ。やっぱりそうじゃないか。
あんたは「H」を何もわかっちゃいねえ。
エッチ無しで妊娠するには、大文字「H」の力が必要なんだよ。
大文字「H」?
マーティが言った「lie out」 は「寝る」と「嘘をつく」のダブルミーニングだ。
「Lie out underneath the stars」は「星空の下で嘘をつく」という意味にもとれる。
つまり「lie」は「横たわる・寝る」と「嘘をつく」の駄洒落ってことか?
ああ、そうだ。英語ジョークの定番中の定番だな。
この駄洒落を使った歌の最高傑作が、Simon & Garfunkel(サイモンとガーファンクル)の『THE BOXER(ボクサー)』。
冒頭でポール・サイモンは「ぜんぶ嘘や冗談なのに、人は自分の聞きたいことしか聞こうとしない」と言っているのに、みんなコロッと騙される(笑)
ポール・サイモンの語る話「若い頃に故郷を遠く離れ、ニューヨークでボクシングをしていた」は嘘ってこと?
そんなの、みんな知ってるさ。
そもそもポール・サイモンはニューヨークっ子で、ヤンキースが大好きな野球少年だった。
大人になってからもヤンキースタジアムへ通い続け、メジャーリーグ中継でもヤンキースの帽子を被って応援しているポール・サイモンの姿を何度も見たことがある。
キャリー・フィッシャーと結婚していた頃だけは、なぜか阪神タイガースの帽子を被ってたらしいけど。
そういう話をしているのではない。
ポール・サイモンが「人は自分の聞きたいことしか聞こうとしない」と言っているのは「ボクシング」のことだ。
ボクシングのこと?
では尋ねる。
『THE BOXER』のクライマックス3番を聴きながら、何を思い浮かべた?
「僕」が殴られてノックアウトされるシーン。
街角の空き地で行われていた草ボクシングで。
ほらみろ。ポール・サイモンが嘆いていた通りだ。
あんたは自分の聞きたいようにしか聞いていない(笑)
え?
あの歌の「ボクシング」とは「拳闘」の「ボクシング」ではない。
「箱詰めする」の「boxing(ボクシング)」のこと。
Boxing Day?
だから2番で「Leadin' me goin’ home(僕を導いている、故郷へ帰ろうと)」と歌われるんだな。
クリスマスの翌日「Boxing Day(ボクシング・デー)」は、住み込みで働く執事や女中などの奉公人が、一年で唯一故郷へ帰ることを許される日だから。
じゃあ、「僕」はボクシングでボロボロに負けて故郷へ帰るんじゃなくて、ボクシング・デーだから故郷へ帰るってこと?
そういうこと。
ポール・サイモンは「ボクシング」のことを一言も「殴り合うスポーツ」だと言っていない。
でもなぜ「僕」はボコボコにされるんだ?
ボクシング・デーでは人を殴らないだろう?
「Boxing Day(ボクシング・デー)」は元々「Saint Stephen's Day(聖スティーヴンの日)」だった。
聖ステファヌスは、街角の空き地でボコボコにされ、home(真の故郷・天国)へ召された聖人。
つまり主人公の「僕」とは「ぼく」でもあり「しもべ」でもある。
そういうことだったのか…
だから「ライラライ、ライラライライラライ…」と「嘘」が繰り返されるんだな…
この「ボクサーの嘘」を応用したのが、長渕剛の『JEEP』さ。
あの歌の「ジープ」も嘘。
CDジャケットの写真で長渕剛が乗っているのは「ジャガー」だ(笑)
確かに『ジープ』の曲調はS&Gの『ボクサー』そっくり…
というか、いったい何の話をしてるんだ?
問題はポール・サイモンや長渕剛の嘘じゃなくて、マーティの「lie」だろう。
そうだったな。
なぜだか知らんが、あんたと話してると、どんどん話が脱線していく(笑)
パパゲーノ、人のせいにするなよ。
Lie out underneath the stars…
「星空の下で嘘をつく」って、どういう意味なんだ?
なぜ彼女とメイク・ラブするのに嘘をつかなきゃならない?
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』における「メイク・ラブ」とは…
大文字「H」の手による、エッチ無しの、肉体の交じりの無い「メイク・ラブ」なんだな。
はぁ?
ちょっと何言ってるか分からない。
あんたと話してると埒が明かんから、単刀直入に言おう。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の冒頭10分は、この絵のことしか言っていない。
フラ・アンジェリコの絵…
コルトーナの受胎告知?
つづく
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