深読み_ライフ_オブ_パイ_4あ

「TNKとFOX」『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』


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2019年9月19日 夜
スナックふかよみ

スナックふかよみ ライフ・オブ・パイ



おかえもん 爽やか にこっ

そしてついに「ぼく」が「ボクサー」として戦うシーンが歌われます。

傷だらけになって意識が遠のきながらも、倒れずに立ち続けている壮絶な姿が歌われるんですよね。

その前にまずは舞台となる「ニューヨーク」の説明から…

Then I'm laying out my winter clothes
And wishing I was gone
Going home
Where the New York City winters
aren't bleeding me
Leeding me, going home

「ぼく」は仕舞っていた「冬服」を並べながら「故郷」に帰りたいと願います。

ニューヨークの冬は寒すぎて「血も流れない」と愚痴り、どうか「故郷」に導いて欲しいと訴えるんです。

良介山ママ 

なんだか岡江ッチの話を聞いてると、すべてがアヤシク聞こえるわ。

おかえもん 爽やか にこっ

「あやしく聞こえる」んじゃなくて「あやしい」んですよ。

ふかよママ

「clothe(服)」が出たら「cross(十字架)」だと思え、の法則ね。

英詩あるある。

おかえもん 爽やか にこっ

その通り。

「ぼく」は「クロス」に「lay out」されると歌っているんだよね。

つまり「十字架に張り付けられる」という意味だ。

ヒロノブさん

「winter」は?

おかえもん 爽やか にこっ

「冬」のイメージは「暗い・寒い」ですよね?

イエスが十字架に掛けられた時、分厚い黒雲が空を覆い「夜」みたいになったと聖書には書かれています。

日差しが無ければ気温も下がったことでしょう。

それをポール・サイモンは「winter」と表現したんですね。

ヒロノブさん

ほう。なるほど。

おかえもん 爽やか にこっ

そして、物語はこう締めくくられます…

In the clearing stands a boxer
And a fighter by his trade
And he carries the reminders
of ev'ry glove that layed him down
or cut him till he cried out
in his anger and his shame
"I am leaving, I am leaving"
But the fighter still remains

「広い空地」に立つボクサー…
彼のトレードマークは「戦う人」…
彼の体には数々の傷跡がある…
打ちのめされ、肉を断ち切られ…
怒りと恥辱の中で彼の心は叫んだ…
ぼくは帰るんだ、ぼくは帰るんだ…
だけど「戦う人」はまだ立ち続けている…

良介山ママ うるうる

処刑場であるゴルゴタの丘でイエスが息絶えて、聖霊は肉体から抜けて天国へ帰ったけど、肉体はまだ十字架に掛けられたまま立ち続けているってことね…

画像12

『磔刑図』
アンドレア・マンテーニャ

おかえもん 爽やか にこっ

そういうことです。

これで『THE BOXER』の語り手「ぼく」が話す内容が全部「嘘」で、実はイエス・キリストの物語だったということがわかってもらえたかと思います。

良介山ママ うるうる

まさにライラライね。グスン…

おかえもん 爽やか にこっ

ちなみにカズオ・イシグロの『日の名残り』も全く同じ構造です。

イシグロは「イエスの生涯」を逆さまに描いていますけどね。

十字架刑が投影された書架シーンから始まって、クリスマスイブが投影された埠頭シーンで終わります。

ふかよママ

映画版は「室内に入って来た鳩」で「受胎告知」まで再現してたわよね。

そして鳩を捕まえて、バルコニーから空へ逃がすの。

完璧に「イエス・キリスト物語」の逆回転バージョン。

太陽がいっぱい受胎告知アンジェリコ

『受胎告知』
フラ・アンジェリコ

おかえもん 爽やか にこっ

あと、イサク・ディネセンの『バベットの晩餐会』もそうだったね。

バベットはパリに住んでいるときは世俗的なユダヤ教徒だったけど、亡命先のスカンジナビアで生き延びるためにプロテスタントに改宗する。

そして一流シェフだったプライドをかけて、フルコースの料理とお酒を使って「イエスの生涯」を表現した。

良介山ママ 

え? バベットは元々カトリックだったでしょ?

アタシ映画を何回も観たから間違いない!

おかえもん 爽やか にこっ

『バベットの晩餐会』は、小説版と映画版で設定やストーリーが異なるんですよ。

イサク・ディネセンの原作では、バベットは自分がカトリック教徒だとは一度も言いませんし、そんな素振りも見せません。

バベットが台所で「黒くて分厚い本」を読んでるところを姉妹が覗き見て、それを「カトリックの祈祷書」と勘違いするんですね。

スカンジナビアのド田舎で世間と隔絶した生活をしている姉妹は、これまでユダヤ教徒もヘブライ聖書も見たことなかったので、そう思い込んだというわけです。

良介山ママ 

そうだったんだ…

ヒロノブさん

ちなみに私は海外に行くと、初対面の人に突然こう言われることがあります。

「あなたはユダヤ教徒ですか?」

ふかよママ

え? ヒロノブさん、そうなの?

ヒロノブさん

もちろん答えはNOなのですが…

ふかよママ

じゃあ、どうして?

ヒロノブさん

私の名前「戸中ヒロノブ」は、アルファベットで書くと長いんです。

だから苗字の方の母音を省略して、こう書くことがあるんですよ…

Hironobu TNK

だから勘違いされるんですね。

ふかよママ

は? 意味わかんない。

おかえもん 爽やか にこっ

「TNK」とは「ヘブライ聖書」のことなんだよ。

「TNK」と書いて「TaNaKh(タナハ)」と読むんだ。

ふかよママ ああ!

まあ。知らなかった。

そりゃ間違えられても仕方ないわ。

おかえもん 爽やか にこっ

さて、丁度いい話題になったので「FOX」の話に戻ろう。

監督のアン・リーは「FOX」を使って、この物語における「2つの核心」を伝えようとしたんだったよね。

スクリーンショット (108)

ふかよママ

1つ目は「嘘」ね。

おかえもん 爽やか にこっ

そして2つ目が…

この物語が「ユダヤ人」に関するものであるということだ。

ふかよママ

え? インド人じゃなくてユダヤ人?

おかえもん 爽やか にこっ

FOX映画の創業者ウィリアム・フォックスは、ハンガリーから移民してきたユダヤ人だったからね。

ウィリアムが生まれてすぐ、両親は差別から逃れるためにアメリカへ渡って来たんだ。

19世紀末から20世紀初頭にかけて、東欧を中心にユダヤ人に対して同化政策や迫害・虐殺などが相次いで行われた。

だから多くのユダヤ人がアメリカへ渡ることになったんだけど、現実は厳しく、アメリカでも就ける職業は限られていた。

その1つがエンタメ業界だ。

作詞家、作曲家、歌手、脚本家、そして映画人…

ユダヤ系移民や、その2世3世が、アメリカのエンタメ業界を築いたと言っても過言ではない…

たとえば…

大林少年

岡江教官に1930年代40年代アメリカの作詞家・脚本家を語らせたら、朝までコースどころか二泊三日コースになってしまいます。

誰か止めて下さい。

ふかよママ

岡江クン! パイよ!

今夜は『ライフ・オブ・パイ』の話よ!

おかえもん 爽やか 考えごと 汗

あ… そうだった…

僕としたことが…

良介山ママ 

岡江ッチ、もっとパイの話して。

アタシたち、もうすぐ上に戻らなきゃだから。

ふかよママ

アタシ「たち」って、ヒロノブさんも含まれてるってこと?

良介山ママ 

当たり前じゃない。アタシたち一心同体少女隊なんだから。

おかえもん 爽やか 考えごと

では先に重要なことを言っておきましょう…

『LIFE OF PI』の「PI」とは…


「パレスチナ・イスラエル」の「PI」なんです…


ヒロノブさん 深代 良介山ママ

ええ!?

おかえもん 爽やか 考えごと

つまり『LIFE OF PI』とは…

「パレスチナ・イスラエルのLIFE」

という意味なんですね…

ふかよママ

パ、パイは… 円周率の「π」じゃなかったの?

おかえもん 爽やか 考えごと

そっちは「ダミー」というか「おまけ」みたいなもの…

メインは「パレスチナ・イスラエルのLIFE」を描くことだから…

ふかよママ

ホントに?

おかえもん 爽やか 考えごと

オープニングシーンの続きを見ていけば、それがよくわかるよ…



つづく




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