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2024年J2第21節横浜FC-ロアッソ熊本「仮初め(かりそめ)の」

秋田が清水を下したことで、上位3チームが勝ち点43で並ぶものの得失点差の関係で横浜が暫定ながら首位に躍り出る事になった。

連勝中の首位のチームを止めれば、リーグの流れが変わる事がある。

自分がまさしく清水戦の観戦記で書いたことが起きている。首位のチームを横浜が粉砕した途端に音を立てて崩れていく清水。ここ最近のアウェイゲームは横浜、山口、愛媛、そして秋田と4連敗。6試合で4敗、1ゴール10失点と急ブレーキがかかった。勝ち点12もあった差が今節でなくなった。


祭りの始まり

終わってみれば5-0の完勝劇だった。試合開始4分で先制し、その後は小川慶治朗が2ゴールを挙げて前半で3-0とすれば、後半にも2点を追加して5得点。守っては熊本攻撃陣をシャットアウトして完封。出来すぎ以上の出来すぎだった。

福森の左足から2点先制をした横浜は、藤枝戦と同じくその後やや緩み熊本の攻撃を受ける格好になった。熊本はボールを繋いで組み立てようとするのだが、パスはズレて裏に長いボールもない。前線で熊本・大崎は孤軍奮闘しているがボールを預ける場所がなく、横浜は簡単にボールを回収できた。ショートパスが身上のチームのパスがずれて引っかけられてカウンターを食うのは、まるで蜘蛛の子を散らすかの如く、選手同士の統率がとれておらず横浜からすれば各個撃破のように、一人剥がせばスペースとチャンスが広がっていた。

前半38分、山根が自陣低い位置でボールを奪い返すと、中盤フリーのカプリーニにパスを通す。カプリーニは前線に走る小川にスルーパスを出す。これは相手選手にカットされてしまうが、バックパスが明らかに短く「相手がミスするかもしれない」と狙っていた小川が奪い返しそのままGKとの1対1を制して3点目をゴールに流し込んだのだった。

あのイバでも小川航基も達成できなかった2試合連続複数得点をここまで3年近くゴールのなかった小川慶治朗があっさりと記録したのは嬉しい驚きであった。

しかし、この日の横浜はこれで終わらなかった

夢見心地の夜

点差もありまたやや前に出てゴールを目指す熊本の後ろのスペースがある事で、カプリーニを後半19分に下げて室井を投入するとこれがすぐに当たる。
投入から3分後の後半22分中野のクロスに合わせたボニフェイスのヘディングシュートはクロスバーに弾かれるが、そのボールを身体を預けてゴールに押し込んだのはその室井。控えの選手がこれだけ好調だと、前線の選手もパフォーマンスを落とせない。

室井に続き前線の3人の交代していない2人髙橋と小川を下げて櫻川と三田を投入。4点も差があれば大勢は決しているし、体力温存の意味もある。

その三田にもチャンスが早速訪れる。裏のスペースに抜け出して左足でシュートを放つも熊本DFのブロックにあいゴールを捉えられない。それでも後半34分、中野のクロスを櫻川が胸トラップで落として右サイドに展開。

山根のクロスにフリーで合わせたのはまたしても途中交代の三田だった。

色濃く映る影

5点目を挙げてゴール裏に一目散に飛び込んでいく三田。これでこの試合のゴールショーは全て終わるのだが、これで俄然熾烈なのは2列目のポジション争いである。室井も隠れているがリーグ戦2試合連続ゴール、天皇杯も含めると3試合連続ゴール。三田も3試合で2ゴール。
このポジションには先発したカプリーニと小川がいて、室井に三田。負傷から戻れば伊藤翔がおり、この日ウィングバックで出場した村田や中野も適性がある。
そして試合の前日にはパウロの新加入も発表。タイプ的にはシャドーかセカンドトップか。既に発表されているリマも1トップかシャドーの起用が濃厚。一気に選手層が厚くなった。室井の怪我からの復帰、三田のコンバートがあればこのポジションにここまで選手が必要なのかという問いも出てくるかもしれない。

仮初め

そのまま5-0で勝利し、翌日清水が敗れた事で横浜は首位に立った。ただ、これは通過点に過ぎない。水曜には2位長崎が未消化の試合を行う。引き分け以上で長崎が正式に首位になる。この段階での勝ち点差1や3はないに等しい。だからこれで過剰に自信を持ったり、抜かれても狼狽える必要もない。

喜ぶのは夏の短い夜に見る夢の中だけでよい。
足元を見るとガブリエウや岩武が負傷している中で本職ではない中村や小倉が準備していて、攻撃は水物でこれがいつまで続くか保証もない。7月から移籍となるリマやパウロもどうフィットするかわからない、夏の移籍市場で何が動くか。守備陣にこれ以上の負傷者が出ないとも限らない。2週間の中断期間で各チームは休息も入り、戦術も練り直される。

まだ5ヶ月リーグ戦は続く。今度は首位に立って追いかけられるのは横浜。清水がそうだったように、1つの負けがバランスを崩すこともあるかもしれない。そう簡単にいかないのは、2022年も2019年も経験しているはずだ。大切なのは11月にどこにいるかだ。仮初めの夢ではない、本当の夢を手に入れる。


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