岡本太郎との対話

岡本太郎展


1度目の感想はもう一度ここに来たい。
芸術の見方はあまりよく分からないが何か強いものにぶつかった気がした。
岡本太郎の作品を初めて生で見て、初めて著書に触れたうえで。

聞いたり、教わったりするんじゃなく自分自身が発見する。自分の問題としてです。

『今日の芸術』著・岡本太郎 
芸術の見方-あなたには先入観がある より抜粋

2度目の鑑賞では自分の中にも何か残したい。
そこで、引用した一節を自分なりに解釈し鑑賞において二つ縛りを設けることとした。


鑑賞においての縛り

先入観をなくす

『題名を見ない、既存の概念に当てはめない』
題名から作品へのイメージを固定しない。
形容詞で作品のイメージをとらえるような既存の概念に当てはめるのではなく、自らに問うような形で鑑賞を進める。

自分の問題として発見する

『生きるとは何かを軸に問う』
自分の問題として発見する。この言葉を自分が今抱えている問題にぶつけてみようと思った。
生きるとは何かがわからない。目的・存在意義・なんなら今自分が生きているということがよくわからない。
モラトリアム期を終えようとしている中アイデンティティの拡散を短期間で何度も繰り返しているという、自分の中で何より大きい問題を岡本太郎の作品にぶつけてみることにした。

ただ"生きている" "生きている歓び"。
生きる歓びとは、生きる強烈なつらさと背中あわせだ。
”つらさ”があるから”生きる歓び”が湧きあがる。

『自分の運命に楯を突け』著・岡本太郎 
この瞬間瞬間に賭ける。将来なんて勝手にしろだ 逆境にあるほど、人生はおもしろい より抜粋

この相対主義を感じる一節を読んでより一層生きるについて聞いてみたくなった。


追体験のススメ

みなさんにもこの縛りを設けた鑑賞を追体験していただきたい。
まずは今自分が抱えている大きな問題を一つ決めてほしい。
そしてそれを作品にぶつけてみてほしい。
そこで浮かんだ単語や感情を作品からの答えとして受け取ってみてほしい。

ここでは特に印象的だった7点の作品をみなさんと共有しようと思う。
題名に関しては都合上表示せざるを得ないためご了承いただきたい。



鑑賞中の作品との対話

ここからは私自身の生きるとは何かという問題を作品に問いかけ返ってきた答えを共有しようと思う。

生きたくない
死にたくもない
わからない
承認欲求


なにがしたい?なにを喜びとする?
生きるとは何だと思う?教えてあげる
離れたくない
泣きそう
一番親しみを持って話しかけてきた


クラクラする
何がしたいか問われ続ける
陰の中の陽を逃すな


無意識の中のしがらみから解放されろ
気にしていないといいつつ気にしていたり、
自己防衛のために発する自虐や否定をやめて正直になれ。


生まれてから永遠に選択の連続
どれを選んでもいい
時に選択は交じり合う
(この作品に関しては固定概念にかなり引っ張られた)


取り繕った言葉
でまかせで話す定型文
猫かぶりと本音


対話の結果

問われることが多かった

向き合おうとポーズをとっているだけの自分へ、つかれたくない痛いところをこじあけられた

見て見ぬふりをしてきたものとの対峙

岡本太郎の正直な作品たちに触れて、もうこれ以上見たくないと思う作品も多かった。
正直さという見て見ぬふりを繰り返した自分にとってぶつかりたくないものの中に引きずり込まれたからだと思う。
嫌われたくないがゆえの自虐や定型文、猫かぶり。
生活環境から形成された処世術。
かつてはこの環境に置かれた自分の財産だと強く思っていたものへの疑問。
直面するのが怖かった。
長所とすら思っていたから全てを否定するような気がした。
本音で喋ったほうが自分自身楽で生きられるのは分かっているのにただ一瞬その場で良い人に思われたいがために垂れ流す口からのでまかせ。
結果空回りすることも何度もあった。
なんとなくごまかしながら生きてきた自分は最終的に失感情に陥った。
好き嫌いをはっきり感じることができるものが心に僅かに存在していることに気が付いた。
ようやく自分自身と本来の意味で向き合う覚悟が出来た、そんな気がした。


瞬間の生きる

今この瞬間を生きるうえでの課題は何か。

思考・感情の言語化

分からないと感じること、逆に問われることが数多く見受けられたのは結局のところ言語化ができていないからではないかと思った。
分からないには知識や思考、インプットなど解決策が沢山ある。
分からないを漠然と抱えたまま生きていくのは私には難しい。
自分が生きやすくなるために思考、感情の言語化は必須だと思った。

感情と行動の一致

可能な限り自分の感情に従って生きること。それは長期的に見れば自分の生きやすさに繋がる。
社会的に生きやすくなるためにはある程度の取り繕いが必要なのは知っている。
感情のままに我儘になれというのではなく、いいとこどりをしていこうと思う。
相反する本音を持っていたとしてもそれを自覚することと大切にすることが出来なかったから好き嫌いすらわからないような状態になってしまったんだと思う。
絶対に譲れない趣味や思想に関しては強いこだわりを持ち、ごまかすことをせずに生きていきたい。
どちらでもいいものに関しては共感することしかしてこなかったが、正直にどちらでもいいと伝えればいいじゃないかと今では思う。




正直さと自分の手段で向き合うことが生きること。
これが私が展覧会岡本太郎で得た一つの答えだ。



しゃにむに





展覧会 岡本太郎

@東京都美術館《開催期間中》
2022年10月18日(火)~12月28日(水)

@愛知県美術館
2022年1月14日(土)~3月14日(火)


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