見出し画像

言語を継承するってどういうことだろう。

今、海外に住んでいる日本人は約141万人。そのうち約52万人が「永住者」とカテゴライズされている。「永住者:永住権などを持ち、生活の拠点を日本以外に移した、日本に戻る予定のない日本人」は、平成の30年間に2倍以上も増えている。(外務省「海外在留邦人数調査統計」2019年調べ)おかえりハウスメンバーの私たちも、統計上はこの永住者になる。


日本に生まれ育ち、生活し続ければ考えることもない「言語」としての日本語。様々な理由で日本国外に移住する日本人が増えている中、親は子供へどのようにして日本語を「継承」しているのか、近年研究され始めている。継承というと大げさに聞こえるが、要は、子供に日本語を教えるべきか。習わせるべきか。どこまで日本語を習得すれば十分なのか。どのように教える・習わせるのがいいか。いつまで続けるべきなのか。海外に住む親ならば、そして子供の親のもう1人が日本人でなければ尚更、1度は向き合わなければいけない、これらの「問い」のことである。

私たちは、これらの問いに対する1つの提案として、日本の地方で休みを過ごす「にほんごキャンプ」を企画した。それは、夏休みなどを利用して日本へ親戚や友達に会いに行く永住者ファミリーとその子供たちを対象に、日本の地方に滞在しながら日本語に触れ、地元の人と交わり、郷土文化を発見する、家族で参加する合宿みたいなキャンプ。日本語が生活の主言語でない子供たちの日本語や日本文化への親近感を高め、自分たちと同じようにちょっと他より複雑なアイデンティティーを持つ仲間に出会うチャンスを作ろうと、2020年の夏実施に向けて、プロジェクトを進めていた。コロナウイルスの世界的大流行を受け、残念ながらまだ実施には至っていないが、日本にルーツを持つ親の、子供に日本語を身に付けさせたいという熱意の方が、子供の意欲より大きくなりがちな中、子供側の日本語や、日本に対する興味や親しみ、楽しみを喚起するきっかけになることを目指している。
そこで、私たちの仮説を検証できる(=にほんごキャンプを実施できる)日がくるのを待つ間、キャンプの対象となる、日本にルーツを持つ海外に住むファミリーにもっと話を聞いてみることにした。言語を継承する、これらの「問い」に対して、みなはどのように接してきたのか。3つの違った視点からそれぞれのライフストーリーや体験談を語ってもらった。

継承させたい人(親)の視点
継承する人、させられる人(子)の視点
継承を手伝う人(教育者)の視点

見えてきたのは、それぞれが、家族ごとに様々な歴史や事情、環境、想いや思い、それとたくさんの試行錯誤があり、その過程で悩みながら、学びながら、笑いながら、子供とともに前に進む姿だった。色合い豊かなこれらのストーリーをシェアすることを通して、改めて言語を継承するってどういうことなのだろうかということを考えてみたい。

第1弾目として、継承する人の視点で、パリ在住の女性シマさんとアメリカニュージャージー州在住のユリさん。続いて、継承させたい人の視点で、パリ在住のヨシエさん。そして、継承を手伝う人の視点でナント在住のエイコさん。それぞれのストーリーを紹介する。

にほんごキャンプ ロゴマークデザインby TAKAIYAMA inc.

*このインタビューは、2020年度東芝国際交流財団助成プログラムの日本語教育を振興する事業として支援を受け実現したプロジェクトです。

画像1




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?