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句集紹介 山本一歩『春の山』 

句集『春の山』 山本一歩  
二〇二二年 本阿弥書店

作者は、岩手県大迫町(現、花巻市)生まれ。昭和五十五小林康治「林」創刊に同人参加。平成十年に同人誌「谺」の主宰となる。現在「谺」の主宰。
 本書は平成二十九年の『谺』に続く第六句集。合計四〇〇句を収載する。
 「父の死後やがてわが死後春の山
表題の『春の山』の「山」とは、ふるさと岩手に聳える早池峰山、家を取り囲む名もなき山々とのこと。
山々をあたたむる雪降りにけり
「俳句は平明な言葉で、見えるように、美しく」を主眼として、一読して映像が浮かぶような俳句こそ、理想だと考えているという。
風光るまなこつむりてゐてもなほ
作者はまた、「私の眼はもはや新しい映像をとらえることはできない。机上での作句はほとんどが私の心の風景」であるとも。俳句からは、そこに生活する人々の姿が読者の心に映像として浮かんでくれたら、これ以上の喜びはない、という。
 「豊年の大きな声の僧侶かな」(自選十二句より)
心に浮かぶ映像は、眼に見える映像よりも豊かで広い。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和五年ニ月号「句集紹介」)

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