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選評*邯鄲の声吹かれ散る草の原

【スキ御礼】「選評*新涼や干す間に乾く白布巾


邯鄲の声吹かれ散る草の原     
岡田   耕

昔、中国の邯鄲の町で盧生が、ひと眠りの夢のなかにこの世の栄枯盛衰を見て、人生のはかなさを痛感したという、「邯鄲の夢」の故事からこの虫の名が付けられたと言うが、その由来の通り、邯鄲の鳴き声は誠に美しくもはかな気で、聞く者を幽玄の世界に引き込むような趣きがある。
しかし都会ではめったに聞く事はない。
以前、清里で全国大会を行った折、翌朝の散歩に畑や畔でいっぱい鳴いていたが、高地の里山では昼間でもよく鳴いている。
草叢でル、ル、ル、ル、と今にも消え入りそうに鳴く音を、あるいはその趣きをどう表現したものかとずっと思いあぐねて来たが、掲句はそれを「声吹かれ散る草の原」と詠った。
まさにこれ以上ないと思われる邯鄲の鳴きようである。

俳句雑誌『風友』令和四年一月号「ー風紋集・緑風集選評ー風の宿」磯村光生

邯鄲について、すみ さんが短歌を詠まれています。
ご紹介いたします。

(岡田 耕)

写真/Hiroyuki AONO (カンタン(昆虫)-Wikipedia)

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