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歳時記を旅する17〔蜩〕中*かなかなや裾から暮れる神の山

佐野  聰
(平成十年作、『春日』)

 箱根神社は、箱根三所権現として奉られるより前の、今から二四〇〇有余年前、聖仙上人が、箱根山の駒ヶ岳(一三五六m)から、主峰の神山(一四三七m)を神体山としてお祀りされて以来、山岳信仰の一大霊場となったとされる。

 蜩の声は、山間部でも聞かれる。
平地に多いアブラゼミは芦ノ湖の標高(七二三m)では聞かれない。
那須高原(標高約七~八〇〇m)で過ごしていた頃にも、ひと夏を通して聞こえる蝉は専ら蜩だった。

 山の神を召し祀るには、人も通わぬような深山が似つかわしい。

句は、頂に蜩も寄せつけないような尊い山を思う。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和三年八月号「風の軌跡―重次俳句の系譜」)

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