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水深800メートルのシューベルト|第1004話

 それは准将への昇進の事だと気づくのにたっぷり三秒はかかった。大尉は、にやりと笑った。
「しかも、大佐のままでは退役は間近です。昇進すれば、退役を先延ばしできますからね。ただし、昇進は簡単にはいかないと思いますよ。将官というのはハードルが高いですからねえ」


 大尉はパイプを握って備品庫に入り、そこにあるつくりつけの小さなテーブルに腰かけると、疲れを吐き出すかのように息をついた。
「しかし、ここで何らかの成果が挙げられたら話は別です。成果といっても、わざわざ魚雷をぶっ放す必要なんてないでしょう。オーカスの同盟国として、本艦が示威行動を取り、それが相手に影響を与えたと、上層部に伝わればいいのです。それには、まずこの艦の性能をよく知っておきたい。そのためには試せることは試しておきたいと考えるのが自然ですからねえ」

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