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水深800メートルのシューベルト|第1005話

「そんな機会が訪れるでしょうか?」
 大尉がここまで海軍の話をするのは珍しい。とはいってもバリオローガン地区のミルバスというタコスがお勧めだの、ノースパークのクラフトビールを一度は飲むべきだといった、グルメや酒の話はよくするので、人と話すのは嫌いではないだろう。彼は僕の問いに手を振って微笑んだ。


「平穏無事に任務を終える可能性の方が圧倒的に高いでしょう。ただ、荒っぽい航海にはなりそうですが。私だって、あの地位に昇っていれば、将軍を夢見ていたかもしれません。決して艦長の資質を疑うつもりはありませんよ」
 大尉は老人のように背を丸め、腰をトントンと叩いていた。

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