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水深800メートルのシューベルト|第874話

「こら、ユースレス。お前、俺には用がない筈だろう? 泳いでこいよ」
 彼は足を振り解くように動かしてきた。ドビーが心配になったのか、近くに来て、
「その辺にしておけ。落水して引っ張り上げるのは大変だぞ」
 と言った。しかし、ロバートに助けようという気は更々ないらしく「教育的指導ですよ」と反論して、足に力を込めた。


 もう駄目だ。泳ぐしかない、でも怖い。不安と絶望が入り混じる中、覚悟を決めた時だった。
「おい、そこの者! 何をしている、やめんか!」


 聞き覚えのある声に、ざわめきが一斉に鎮まり、波の音だけが艦とぶつかって響き合っていた。その静寂に隙に、僕は彼の足に両手でしがみつき、よろよろと立ち上がった。ズボンが濡れて重くなり、下半身にびちゃっと貼りつく嫌な感じが残った。

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