夏が終わる

夏が終わる。

今年の東京は拍子抜けするように夏が終わりそうだ。うだるほどに熱いと感じた日は数日だったように思う。梅雨らしい天気じゃなかったなと思う梅雨明け宣言から、雨が続いたまま夏が終わるイメージだ。

海にもお祭りにも行かないまま、20代最後の夏は終わってしまった(この場合の海に行くとは泳ぐことを指す。浜辺で足をちゃぷちゃぷはした)。唯一の夏らしいことと言えば、熱海海上花火大会に行ったことくらい。熱海の花火大会は夏だけではなく通年やっているそうで、8月だけでなんと5回も開催された。そんなにやるということは、1回にかけるパワーは大したことないのであろうと私は勝手にたかをくくっていたのだ。が、さすがは観光地。立派な花火大会でお見逸れしました。浴衣を着て見に来たかったなと後悔。次は温泉に入って冬の花火大会なんかもいいなあ。

夏の終わりはなんだかさみしい。学生時代は夏休みの宿題を後回しにするタイプだったから、8月の終わりと言えば焦りしかなかった。大人になったいまは夏の終わりが名残惜しい。フジファブリックの『若者のすべて』、吉田拓郎の『夏休み』。夏の終わりを感じる曲を聴くとただただ物悲しい。別に秋がきらいなわけではないのに。9月の涼しい空気はすがすがしい気分さえ感じるのに。いったい何がそんなに切ない気持ちを呼び覚ますのだろう。ほかの季節の終わりとは少し違う。どんなに苛烈な酷暑だっていつか終わる。そこに諸行無常を感じるのかな。こども時代の夏休みを思い出すのかな。とにかく切なくて寂しくて惜しくて。

この記事を下書きしたまま放置してから一週間。もう本当に夏は終わってしまった気がするし、私は30歳になっていた。

ひまわり、夕立、蝉の声。

夏が終わるとなくなってしまうものたちと、私はきちんと別れを惜しめたかな。

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