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【開催レポート】カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』を語る読書会 2023年2月18日(土)

水野ゼミの本屋の書店主、itatana(イタターナ)様が主催するイタリア文学の課題本型読書会。2023年は、イタロ・カルヴィーノ生誕100周年を祝して、カルヴィーノ作品の連続読書会。その第1弾として『まっぷたつの子爵』を語る読書会が開催されました。

参加者は主催者を含め8名。ご予約受付途中で満員御礼、札止めとなる人気ぶり。
男性が4名、女性が4名と「まっぷたつ」。カルヴィーノ作品を初めて読んだ、という方が4名で、やはり「まっぷたつ」。しかし分断も対立もなく、終始、和やかで楽しく、それぞれの感想を共有することができました。

登場した話題・論点・疑問は次の通り。

・「メルヘン」と謳いながら、冒頭の生々しい戦場風景の描写。
・「幸せを運ぶ」イメージのこうのとりが、屍肉をついばむギャップ。
・一面的なモラルを押し付ける「善半」の恐ろしさ。
・「善半」と「悪半」はその後の様々な作品に影響を与えているのでは?
石ノ森章太郎「人造人間キカイダー」や永井豪「マジンガーZ」のあしゅら男爵を想起させる。
・「善半」と「悪半」は、戦争のPTSDで統合失調症を患う帰還兵のメタファーでは?
・作品全体が、語り手である「ぼく」の空想の産物という印象。
・「きのこ平」、「寒さが丘」といったサブ・コミュニティは、スピンオフ作品ができそう。
・パメーラ、トレロニー博士、ピエトロキョード親方などサブキャラも魅力的。「悪半」の独裁恐怖政治に、抵抗する者、従順する者。
・剣ではなく、「大砲」で「まっぷたつ」になる不思議。
・イタリアでのカルヴィーノの位置付け、読者層は?

正しい読み方を求める読書会ではなく、他者の多様な読み方を知ることで、自身の読みの幅を広げていく読書会。
一人で読了したときには、気付かなかった記述、視点が多数あり、再読したくなりました。

話題は尽きず、2時間があっという間に過ぎました。
僅か150頁の短編。平易な言葉遣いで、あらすじを追うだけなら、すぐに読了できるのですが、ゆっくり落ち着いて読むと、色々と引っかかる記述があり、奥が深い。読むたびに新たな発見ができそうな、奥の深い作品です。

主催のitatana様が、読書会終了後に、
あなたがまっぷたつになるとしたら、〇半と〇半?」という問い掛けのツイートをされていました。
皆さんは、何半と何半ですか?

私は、カルヴィーノ作品を今回初めて読みました。
勝手に難解なイメージを持っていましたが、その先入観は払拭されました。

カルヴィーノ連続読書会第2回は、
『木のぼり男爵』を課題本として、
4月15日(土)に、水野ゼミの本屋(大阪市北区西天満)で開催予定です。
詳細は後日ご案内。

皆様のご参加をお待ちしています。

文責:水野五郎

以上

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