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大分県IT業界で働く|ファブラボ大分 豊住大輔さん

こんにちは、末綱です。今回は、ファブラボ大分豊住大輔さんをご紹介します。ファブラボ大分は、3Dプリンターやレーザー加工機など様々なデジタル工作機械が使えるものづくり施設です。

これまで紹介したきたIT分野とは少々異なるかもしれませんが、パソコン一つで造形物ができたりとインターネットの使い方も変わってきました。デジタルの力で、自分の手で行えるものづくりの幅も広がり、実際に商品を作って売る方もいるようです。

そこで今回、豊住さんのご紹介とともにファブラボ大分のものづくりについても詳しく見ていきましょう!
最後にフリーランスに大事なことも聞いていますよ(^o^)


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写真:豊住大輔さん(ファブラボ大分)


※コロナのため、施設利用は現在予約制のようです。詳しくは下記ホームページをご覧ください。


ものづくりを仕事にするきっかけ

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Q.ものづくりを仕事にするきっかけはなんですか?

豊住さん
僕の経歴にも関わりますが、もともと僕は公益財団法人ハイパーネットワーク研究所で働いていたんですね。2013年、大分県にもデジタルものづくりを広めていこうと拠点を作った際、その担当で始めたのが発端です。
本来、研究所はインターネットを研究の対象としていたので、ものづくりとは少し離れていたんです。ただ、3Dプリンターを始めとしたファブラボ内の工作機械は、コンピューターで作ったデータをそのまま形にすることができます。逆に言うとデータを送るだけで、同じ機械さえあればブラジルの人でも同じものが作れるんですよね。そうすると、”インターネットの使い方が変わるのではないか”というのがそもそもの研究テーマにあって、実際に自分たちもやってみないとわからないということで、大分県の委託事業として拠点を作ることになりました。


3年経て、県の事業から独立

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Q.独立したきっかけはなんですか?

豊住さん
県の事業で施設を運営し始めて、約2年間で延べ3000人が利用してくれました。色んな方の声を聞いていると、”自分の会社の試作品をがっつり作ってみたい”とか”直接売り物を作りたい”とか委託事業内でできるルールを超えたところをやりたい人がたくさんいたんです。やはり県の事業だと税金を使うので、利益追求を目的にしにくいとか色々ルールがありました。県の事業としての3年間が終わって、次のステップをまたどこか行政と連携してやるのか、民営化してルールに縛られずに本当にやりたいことを自由にやれるようにするのかを考えたときに、明らかに後者の方が面白いだろうと思って独立しました。独立した2016年から前職の同僚であるスティーブンと一緒に運営しています。

Q.独立したときはどうでしたか?

豊住さん
やりたいことがやれるようになったのはもちろんです。県の事業だったので、これまで無料で使えていたり、運営側が代わりに無料で作ったりしていたのが、独立後は費用をいただくようになりました。制作にどれくらいかかるっていうのが依頼者にわかってもらえるようになりました。実際にこれくらい時間がかかるから、これくらいの費用が発生しますよ。って、しっかり理解してもらえるようになったことは、良かったなと思います。
ファブラボは、基本的に自分で何でも作るっていうのをベースに置いているコミュニティなので、利用者にやり方だけをレクチャーして、なるべく自分で制作してもらうようにしています。材料費とか、ものを作るまでにかかる時間とかがわかってくると、大体みなさん100円ショップのものが”100円でできるのがすごい”とか”買えるものは買ったほうがよっぽどお金かからない気がする”みたいな気づきがあるようですね。


豊住さんのお仕事

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Q.仕事内容はなんですか?

豊住さん
ラボに来た利用者の対応や、小中高でワークショップや授業をすることもあります。また、制作依頼を受けて作ることもありますし、製造業の方に向けたIoT講座をファクトリーサイエンティスト公認TAとしてお手伝いしています。

Q.IoTはどんなことをされていますか?

豊住さん
一般社団法人ファクトリーサイエンティスト協会というのがあって、4半期に1回、年に4回ある講座の講師をしています。
例えば、マイコンと温度計センサーを組み合わせて、センサーが取得した値をクラウドサーバーに送るプログラムをサンプルケースとして、受講者に教えています。製造業の方に向けた講座なので、工場の室内の温度が何度以下になったら失敗が増えるとかのデータを取って、改善根拠をつくることなどに活用されていますね。また、講師陣で作ったさまざまなセンサーのサンプルプログラムを参加者の方に配って、それぞれの職場で必要なデータを集められるように書き換えて使用してもらっています。


フィギュア1体に30時間

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Q.ものづくりはどのくらいの時間がかかりますか?

豊住さん
意外とみなさん3Dプリンターって5分、10分でできあがるんでしょっていうイメージで来られるんですけど、例えば某アニメのキャラクターフィギュア1体を出力するのに30時間くらいかかったりします。なので、プリンターだからすぐできるというものではないですね。もっというと、出力するためのデータを作るのに何十時間とかかるので、複雑なものや少し変わったものを作ろうとすると少なくても1週間くらいはかかるかなと思いますね。


ゼロからイチを生むより、既存のものを改良する

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Q.何を作ったらいいか、アイデアがなかなか浮かばないです。

豊住さん
”ものを作る”っていう言葉のハードルが高いなと感じています。世の多くの人は、”今までなかったものを作らないといけない”とか”何か新しいものを作る”ということが”ものづくり”で、ゼロをイチにしないといけないように感じているようです。しかし、ゼロをイチにするってなかなか難しいことで、今1あるのを1.1とか1.2とか自分なりに改良することが大切だと思います。その方が簡単で、色々考えられます。また、自分にとって便利なことであれば他の人にとっても便利な可能性があるので”つくる”っていうのをあんまり難しく考えないでほしいです。ものをつくることがゼロイチしか無いとなると辛いですよね。”なんか作っていいよ”と言うと、大人は100%”何を作ったらいいのかな”っていう思考する時間が長くなって、気付いたら2時間終わってしまったなんて方もいますね。そうじゃなくて、普段使っている包丁の取っ手が少し細いからそこにグリップつけたらより良いのになとか、考えたらキリがないくらい出てくるはずなので、そういうところからスタートしていいと思います。


結婚式のウェルカムボードやプラモデルの修復まで作れる

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Q.利用者はどんなものを作られますか?

豊住さん
例えば、レーザー加工機で特徴的なものとしては、自分の結婚式のウェルカムボードや席表、各テーブルに置く名前入りのコースターとか作られますね。結婚式関連は新婦主導がほとんどです。
3Dプリンターは結構幅が広くて、自分のパソコン用の小さいセンサーのケースを作りたいとか、とりあえずサンプルとして作ってみてどのくらいの大きさか調べたいとか、フィギュアの頭を作りたい、プラモデルの部品を作り直したいとか色々ですね。


3Dプリンターは意外と大変!?

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Q.3Dプリンターのデータの作り方も自分で習得する必要がありますか?

豊住さん
触ったことない人には、データを作成するソフトを紹介、直接パソコンを持ってきていたらその場で使い方を軽く教えます。パソコンが家にあるようだったら、YouTubeで探すと色々参考になるのがあるので、まずはそれを見て、わからなかったら聞きに来てもらっています。ただ、そうは言っても、覚えることがたくさんあるので、3Dデータを作るのは心が折れやすいんですよね。慣れてしまうと簡単だと思えるんですけど、何でも新しいものには慣れるまでが苦痛なので、”20時間したけど、ここまでしかできんかった…。もうお金払うから作って”ということもありますね。
あとパソコン上でデータは作りますが、現実的な”もの”にするので、大きさが決まっていないと何もできないんですよね。プログラム内でエラーや変更点が出てくれば、機械を動かす前にモニター内で修正がかけられるんですけど、例えばスマホケースを作ったけど、寸法が1ミリ小さかったから入らないとかもあるんですよね。そしたら、データを修正して、また10時間くらいかけてもう一回作らないといけないので、そこが心折れるタイミングだったりもしますね。
だけど、作ろうと思えばみんな作れるんですよ。制作過程に対するコストをどう捉えるかですね。

Q.3Dデータは奥行きを考える力も必要そうですね。

豊住さん
そうですね。とある大学の先生は、「情報をテレビやYouTubeなども含め、モニターから得ることが増えてきていて、見えているところの情報はみんなすごく持っているんだけど、その裏側や反対側を考えにくくなっているんじゃないか」って言っていて。実物が見れる時は、1周歩いて見たり、移動しているときに裏側を見ることができるんですけど、そうじゃないことが増えてきた今はなかなか裏側を意識しにくくなってきていますね。車を例にしても、側面の写真を見たときはすぐに車種を答えられるけど、反対側を聞かれたら途端に自信がなくなるということもあります。そういう奥行きやもう一方という概念が苦手な人は、3Dデータとか立体を起こすことは、とっつきにくいかもしれないです。


やりがいについて

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Q.やりがいはなんですか?

豊住さん
やりがいは、制作依頼を受けたもの関しては、完成品を見せたときに依頼主が”すげぇー!”って言ってくれたら勝ったなという気がしますね。もちろん依頼主の反応が予想より薄かったら、”ちょっともう一回やり直してもいいですか”っていう気持ちにもなります。やはり対価をもらうのもあるので、喜んでもらわないと作った甲斐がない気がしますね。基本的に喜んでもらえるつもりで作っているんですけど、僕が良いと思うものと相手が期待しているものでは意思疎通をしっかりやっていても、人と人なのでズレが生じることもあるんですよね。そこがもうドンズバでハマって、”すげぇー!”ってなったらやり甲斐というより勝ったなと思いますね。作って良かったなと思います。
また、小学生のときに教えた子が中学生になっていて、年をとっても覚えてくれていたのは嬉しいところだったりしますね。


フリーランスに大事なこと

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Q.フリーランスに大事なことはなんですか?

豊住さん
お金は大事ですね。今月末に案件の支払いがくるんだけど、その前に自分が建て替えていた外注のお金とかを支払わないといけないときとかは大変です。お金がないわけではないのに、今はまだないから困るということも最初のうちはあったりするんですよね。お金がないと色々考えが貧しくなったり、余裕がないと色んなことに集中できなかったりもします。
起業したい学生とかに、起業はチャレンジとしては良いことだと思うけど、個人的にそんなにハッピーなことばかりじゃないと思うよって助言することもあります。もちろん最初から仕事があって、スキルもあって、プライベートもしっかり作れて順風満帆に進む人もいるんですけど、半数くらいの人はどれか欠けてしまうような気がしているんですね。しがちなのはプライベートを削って作業することですね。ただあまりにしすぎると嫌になるし、家に帰るのも嫌だし、職場に行くのも嫌になって旅に出たいみたいな。休み所がなくなるのは結構辛いんじゃないかなと思いますね。
起業しないとできないことなのか、企業の中でやろうと思えばできることなのかは見極めることが大切だと思います。例えば、自分の名前を世に出したいのであれば、企業の中ではうまくいかないかもしれないです。ただ、自分のやりたいことを世に出したいだけであれば、企業というお財布を使った方が賢かったりします。起業は手段であって目的ではないし、勤めながら起業できる会社もあると思うので、自分がどうしたいか見極めが大事だと思います。



いかがでしたでしょうか?
今回は、ものづくり施設である”ファブラボ大分”の豊住大輔さんをご紹介しました。
自分のアイデアが形にできるワクワクな場は大分では珍しいですよね。想像よりも制作は大変だということがわかりましたが、唯一無二のものを作れるから楽しそうですね。
場所もわかりやすいので、ものづくりしに訪れてみてください(^o^)/

豊住さん、インタビューのご協力ありがとうございました。
それでは、また次回です^^
最後まで読んでいただきありがとうございました。