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「針と梔子(クチナシ)」を読んで。

こんにちは。oi汰(おいた)と申します。

詳しいことは前回書いたnoteを読んでいただきたいのですけれど、私はしがない絵描きで、別に文章を書くことが得意なわけでもなんでもありません。しかし、「文章が書けるようになりたい」と思い、最近noteを始めました。

(↓前回の投稿です。)

noteで、本を1冊読み終わったらその感想を書いていけたらな、と思っていまして。今日また1冊読み終わったので、その感想を書きたいと思います。


今日読んだ本は、こちらになります。

針と梔子

針と梔子(クチナシ)
著者:yukica
個人での出版
値段:3,600円 

こちら作家活動仲間のyukicaさんの書かれたもので、ご本人に許可をいただいた上でここに感想を書かせていただいております。


まずこの本が特殊なのが、この本はこれ一冊で完結しているわけではなく、あくまでyukicaさんの個展があった上での、展示記念冊子な点です。

去年の今頃、名古屋にある画廊&雑貨屋「箱の中のお店」にて、旧ガルデニア邸の扉が開かれました。(つまり、yukicaさんの個展が行われました)
yukicaさんは、絵も文章も両方描(書)かれる方で、その上空間演出までするといいますか。美術的な言い方をすると、インスタレーションというか…

去年の個展が一番分かりやすいのは、この動画かな、と思います。yukicaさんの展示は没入型なので、一番いいのは実際に足を運ぶことですが、次にいいのは動画を見ることだと思います。写真より動画の方が、入り込んだ気分が味わえるかと。

これを見れば分かるように、めっちゃ作り込んであるんですよ!本当に、そこに物語の舞台となる「ガルデニア邸」が現れたのです。
yukicaさんの展示は実際に足を運んでみてナンボだと私は思ってるので、私も勿論観に行きました。東京から名古屋まで。笑。

yukicaさんの個展「針と梔子」の様子をもっと知りたい方は、こちらをご覧下さい。Twitter で「#針と梔子」のハッシュタグ付きで呟かれたものの中から、yukicaさんご本人のツイートのみを検索したものです。展示の様子が沢山見られます。

また、展示された絵や文のダイジェスト版というようなものがこちらのツイートのリプに続いていますので、どんな絵が展示されたかや、雰囲気などをお知りになりたい方は、是非覗いてみて下さい。


この冊子を語る上で個展の存在は欠かせないので、まず去年の個展の話をさせていただきました。

それで、冊子の話に戻りますが。そもそもあの個展でも、キャプション(説明文のこと)が沢山貼ってありまして。動画で短冊型の紙が壁に沢山貼ってあるのが見られたかと思いますが、あれが全部キャプションで。めっちゃ文字数あるんですよ。
だから、冊子を購入する前は、「あのキャプションと冊子はどう違うんだろう?」と思っていたのですが。読んでみて分かったのは、冊子の方は完全に小説でした。展示のキャプションはストーリーの大事な部分を抽出したもので、小説の方がストーリーの細かい部分まで感じ取れる、物語の裏側を補強する役割のものかな?と私は勝手に思いました。
なので、展示を観に行った人でも、この冊子を読めば更に展示の世界の奥行きを感じることが出来る。また、展示を観に行っていない人でも、展示と同じ世界観や空気感が味わえるので、観に行った気分になれる。と、私は思いました。

自分が個展をやった時にも思ったのですが、展示はギャラリーを短期間借りて行うものなので、期間限定のもので。期間を過ぎたらその空間は儚く消えてしまい、また違う様相に様変わりするんですよ。同じ空間をずっとは残せない。
なので、こういう「本」という形態で、あの空間の一部を閉じ込めておいて、その残り香を今でも感じ、思い出せるのは、なんだかとってもすごいことなのでは?と思ったり。個展の記念で本を出してくれる作家さん、ありがとう…個展するだけで大変なのに本まで、ってなると、かなり大変なのに…


それで、小説なので、あらすじを教えて!と思う方もいるかと思いますが。あらすじどうこうというより、文章の口当たりみたいなところを含めてのこの物語だと思っていますし、yukicaさんもそこを大事になさっていると認識しているので、この冊子の中身の文章が読めるとこのリンクをここに貼ります!ドーン!
中身を読み始める前の、このリンクを貼ったページに、あらすじも書いてあります。私があらすじを書くより、yukicaさんが書かれたものを読んだ方がいいと思うので。

最近、展示から1年経って、yukicaさんが「針と梔子」の文章の中身を、ネットに公開なさってて。毎日少しずつ。だから、文章自体はネットでも読めます。まず雰囲気を知りたい、とか、手軽に読みたい、という方は、こちらもオススメです。
”文章自体は”というのは、冊子には絵も入っているからです。それと、百守さんという方の作られたコラボ楽曲が聴けるQRコードとパスワードも、冊子には含まれています。百守さんの作る音楽、とてもいいですよ。人の世界観をめちゃくちゃ汲み取って作って下さる方なので。
文章と、絵と、音楽!冊子ならその3つが楽しめるわけです。五感で世界観を体験出来るわけですね。
冊子は今も通販していて、私もそこで買ったので、そちらのリンクも最後に貼らせていただきます。
感想を読む前に冊子が欲しいよ〜っていう方は、最後まで飛ばして下さい。すみません。


で、ここまでは紹介で、ここからは冊子を読んでの私の感想です。重要なネタバレはない…はずです。物語のストーリーどうこうというより、感想なので。

技術的なことや難しいことは私にはよく分からないのですが、読んでみて思ったのは、「この本、好きだな!」ということでした。超ざっくり。笑。
でも自分が創作活動をしていて思うのは、「よく分からないけど、なんとなく好きだ!」という、「好き」の感情を抱かせるのが、実は何より難しいってことです。「好き」の気持ちは、技術的な上手い下手とか、周りの評価とか、そういうのを全部突き抜けるんですよ。何より大事な感情で、他の感想を全部超えてくる。だから「好きだな」って人に思わせるってめちゃくちゃすごいことで、強いことだと、私は思います。

でもここはnoteで、人に読んでもらうために書いてるので、ちゃんと人に感想を伝える努力をしますよ!もちろん。
自分がなんで「好きだな」と思ったのか、分解して分析してみました。4点出てきたので、聞いてください。

好きな点その1「雰囲気・世界観が好き」
一言で言うと、「耽美」または「幽玄」。この小説には、薄いもやの中に迷い込んだみたいな雰囲気があって。煙に巻かれたとも言えるかもしれない。掴みどころがなくて、掴もうとするとサラサラと手から滑り落ちていくような。それと、目の前にスクリーンがあって、そこに映像が映し出されて、それを眺めているような。現実感がなくて、ただ目の前を美しいものが流れていく。そういう夢を見たみたいな。抽象的な表現になってしまいますが、そんな雰囲気を感じました。
私は普段そういう雰囲気の小説をあまり読まないのですが。それでもこの本には馴染めて、スッと本の中に吸い込まれたようでした。

好きな点その2「読みやすい」
これ〜これ大きかった!yukicaさんってキャプションを書かれる時も詩的だし、文豪の作品を好んで読んでらっしゃる印象があったので、「難しかったらどうしよう…」と少し身構えていたのですが、読みやすかった!なんていうんでしょうね…テンポがいい…というか、文章の中で余分な部分が全然ない!と感じました。
個展が始まる前に、yukicaさんが「今日はこれくらい文字数書いたけど、これくらい削った。」みたいなツイートを毎日のようになさってて。そんなに削るのか〜と驚いていたのですが、絶対それが効いてるんだと思いました。
全部の言葉が、表現が、そこにあるべくしてある、という感じ。近道も回り道もなく、見るべきものを見させられて、聞くべきものを聞かせられて、みたいな。難しい言葉や古い言葉もあるけれど、それもその言葉であるべくしてその言葉が選ばれていて、簡単で今風な言葉に直したら、それはもう違うものになってしまう。そういう感じがしました。

好きな点その3「続きが気になる」
「謎が明かされる…!?」と思いきや深まったり、「展開が進んだ…!?」と思ったら、また霧が立ち込めたり。どんどん奥へ奥へと誘われていく感じ。ハッキリ見えないからこそ、見たくなって、知りたくなって、どんどんページを進めるのに、またヒラリと躱されるような。語り手が何人も出てきて、度々変わるのですが、語り手によって言ってることが違ったりするのもいいな、と思いました。明瞭には全体図が見えなくて、探りたくなる。梔子の迷路に迷い込んだ、みたいな気分になれました。

好きな点その4「性癖が詰まってる」
美少年、美青年、鉱物人形、人型人外、魔女、旧い館…
出てくるモチーフやキャラクター、キャラクター同士の関係性が、刺さる!
耽美な文体とモチーフが相まって、世界観を創り出してるな、と思いました。
大衆にウケる!みんな大好き!キャッチー!って感じではないけれど、誰かの心臓をめっちゃピンポイントにブスッ!と刺しにきて、息の根止めるわ、みたいな。もしかしたらそれはガルデニア邸の仕立て屋が落とした針かもしれないですね。
萌える…という俗っぽい表現が合ってるかは分からないけど、尊い…とか、そんな感じ。本人がほんとに好きなものを煮詰めて、突き詰めてやってるから、見る側にも刺さるものがあるのかな〜と感じました。

感想としては以上です。私の感想が伝わって、読んでみたくなった人がいたら幸いです。


では、最後に、冊子の通販ページと、yukicaさんに繋がるリンクを貼っておきますね。推し作家さんなので。

まず、BOOTH(通販)のページから。
こちら↓で購入できます。

https://yukica.booth.pm/items/1389195

あらためてページ数見ると狂ってますね…(褒めてる)
届いた時「分厚っ!」ってビックリしました。スマートレターパンパンで、全然スマートじゃなかった。個人発行だけど、薄い本じゃなくて厚い本です。笑。

あとはyukicaさんのTwitterと、pixivFANBOXのリンクを貼らせていただきます。
Twitter
https://twitter.com/yukica_6008

pixiv FANBOX
https://yukica6008.fanbox.cc


そんな感じで、書き残したことはないはずです。ひたすらyukicaさんを推すnoteになりましたね。
今までTwitterで絵や展示の感想を呟いたり、直接ご本人に感想をお伝えさせていただいたことはあったのですが、こうやって記事を書くというのは初めてですね。何か少しでもいい方に影響があるといいなと思います。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
また本の感想を記事にするのは続けていけたらいいなと考えていますので、どうかよろしくお願いいたします。

2020年6月8日 oi汰

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