舟を掘る鳥
北海道には「舟を掘る鳥」という異名を持つ野鳥が生息しています。
クマゲラという日本最大のキツツキの仲間です。
北海道滞在中に一度はお目にかかりたいと強く願っていたんですが、クマゲラご本人(ご本鳥?)とのご対面と同じぐらいに楽しみにしていたのが冒頭の写真の樹の穴なのです。
10cmほどの厚みがある辺材の部分を貫通して、中心部分の心材にまで到達しています。
こんなダイナミックな穴は本州のキツツキ達には掘れません。
よく見るとクマゲラの嘴の痕が残っています。
まるで生きる鑿(ノミ)のよう。
人間が鑿を使って作業したとて、ここまでの穴を掘るには相当な時間を要します。
日本最大とはいえ50cmに満たない大きさの鳥が、これだけの穴を自らの身体のみで掘ってしまうなんて信じ難い事実です。
舟を掘る鳥というのは、この大きな穴に由来します。
今回は4つの穴が独立していましたが、上下の穴が繋がってより縦長の穴になることも。
北海道に住むアイヌ民族の方々が大きな丸太に穴を彫って作る「丸木舟」というものがあり、この丸木舟に形状が似ていることから、クマゲラの穴の特に縦長のものが舟掘型と呼ばれるんです。
丸木舟を掘るような鳥ということで、アイヌ語で舟を掘る鳥を意味する「チプタチカプ」と呼ばれていたそうです。
丸太一本を船にするってなかなか大胆なアイデアのように思うのですが、大昔のアイヌの方がクマゲラの掘った穴を見てインスピレーションがわいたんじゃないかと私は勝手に思っています。
穴の大きさもスゴいが、その破片もまたスゴい。
ひとつひとつがデカ過ぎる…!
15cmぐらいの大きさがあり、折ろうとしてもなかなか折れないぐらいの堅さ。
割り箸よりもぜんぜん硬かったです。
トドマツという樹に掘っていたので破片の香りが良く、ヒノキを思わせるような香りでした。
クマゲラの舟堀の破片から作った爪楊枝とかいいんじゃない?
お土産にあったら買っちゃうなぁ笑