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静かな夜明け、それは音さえ眠ったままの世界【2012.08 仙丈ヶ岳】

それはそれは静かな夜明けだった。地上の音は宇宙から贈られた真空のベールをかぶり、安らかな眠りについているかのよう。手の届く距離に宇宙があるような、そんな場所に人は立ち、音が宙に吸われていく様を見届ける。どう足掻いても真空空間には決して届かない音たちを尻目に、太陽の光はすべてを突き抜けていく。大地を色鮮やかに染め上げ、朝を告げて回るのだ。いつしか真空のベールは舞い上がり、静寂の住人である星たちは、誰にも悟られることなくひっそりと姿を消していく。風は轟々と騒ぎ立て、雲は踊り囃し立てる。景色は生命の息吹を得て、一斉に動き出す。そうしてようやく、人々の間に歓喜の渦が訪れる・・・。遙か昔より変わらない営み、それは地球の抱える悠久の物語。語り継がれることなき、神話の世界。

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