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「駿河三保の松原」−奇を衒うとそこはどこ…?!−『六十余州名所図会』

まじ久々の投稿になります。
先月から大学院生になり、しかも大学からそのままエスカレーターではない外部の大学院に進学したので一気に環境が変わり適応するのにやはり時間がかかりました。

その間息抜きにたくさん本を読みました。
主に小説ですが、国内外の作品にいくつか触れました。

その詳細は語りませんが、おすすめの一冊をご紹介。

山田詠美さんの『無銭優雅』

恋愛小説なのですが起承転結感情の起伏が山あり谷あり、誰と誰がくっついた離れた、という定番小説ではありませんでした。
主人公の女性が恋人の男性との生活についてリズムよく語る小説です。
もちろん物語に起承転結はありますが、語り手が男性への想いや日常で抱えがちなツッコミを勢いよく語り倒していくのが痛快で呼んでいて気持ちよかったです。

そんなこんなで色々な本を呼んで通学・通勤時間を過ごしておりました。

・・・

いい加減に浮世絵の解読に話を戻さないと、読了の紹介を始めそうです。

本日は前回(と言っても2ヶ月前、、汗)に引き続き歌川広重『六十余州名所図会』を見ていきます。

今日は『六十余州名所図会』「駿河 三保のまつ原」です。


国立国会図書館蔵

三保の松原

副題にある通り、三保の松原という名所について描かれています。

三保の松原は静岡県にある富士山が望める名所。
江戸時代もよく名所絵に描かれますが、現在もなお静岡の名所一つですね。

絵には帆が立っている船がいくつも浮いていますね。
漁や交易が盛んだったのでしょうか?

このあたりは清水区にあたり、この湾は清水港がありますね。
なので当時から交易や漁が盛んだったのでしょう。

三保の松原の公式HPにはこんなありがたい特集があります。

三保の松原を描写した芸術作品を紹介しています。
浮世絵だけでなく詩歌や絵画作品、工芸品まであります。
いくつか気になる作品があったので見てみましょう。


国立国会図書館蔵

歌川芳艶『東海道名所之内 清見寺』です
清見寺という清水区にあるお寺からの眺望を描いた昨日です。
三保の松原ってこれまで見たきたものだと手前の湾から富士山を望む画角が多かったのですが、今回は湾よりも富士山側にあるお寺から描いています。
しかもお寺に装束を纏った武士一行を描くことでその一行が富士山と同じくらい高みにいることを称しているかのように感じさせます。
描かれているのは14代将軍徳川家茂であるそう。
一行を華やかに描いている一方で、富士山は線一本で勝負。
それでも引けを取らない荘厳さが感じられなくもないです。感じられてしまうかな?笑

もう一つはこちら

国立国会図書館蔵

周磨(河辺暁斎)『東海道名所之内 三保松原』です
こちらの作品は三保の松原でありながら、富士山を描いていない作品です。
”三保の松原”といえば!の手前の湾と向こうの富士山という組み合わせが描かれていないですね。
おそらく絵の左側に富士山が聳えているのでしょうけれど、その気配が全く感じられませんね。
暁斎もなぜ富士山を描かない角度を設定したのでしょう。
もしかしたら画面右に列をなす大名行列的な一行を描きたかったのでしょうか。

(『星落ちて、なお』早く読まないとと思い出しました。)


三保の松原と『山水奇観』

以前とある論文で広重の『六十余州名所図会』淵上旭江『山水奇観』という山水画譜を参照していることがわかっているという文章を読みました。

吉田恵理 
『「山水」画譜の諸問題−『芥子園画伝』和刻の経緯と淵上旭江『山水奇観』を例に−』
2007年 
『絵本・絵手本シンポジウム報告書 江戸の出版文化から始まったイメージ革命』より(金沢芸術学会研究会)

こちらの76ページ下段に記載がありました。

近年、広重作品の中でも「六十余州名所図会」(嘉永六年七月〜安政三年五月)において南海道、西海道からの引用が頻繁であること、山陰道、山陽道、北陸道も利用されていることなど、どの実態が明らかにされている。

上記論文より

ここを見たのに加えて参照にしている『古地図ライブラリー12  大日本国細図・名所図会で巡る 広重の諸国六十余州旅景色』森山悦乃・松村真佐子著 でも三保の松原のページには『山水奇観』が元になっているのではないかと示唆する記載がありました。

『山水奇観』1800年(寛政12)に出版された日本の山水の名所を描いた画集です。この作品の特徴はこれまでの匿名性のある山水を描いてきた山水画譜とは異なり、日本の名所つまり名前の付いた特徴ある山水の風景を描いた画譜であると言われています。

当の『山水奇観』を参照したであろう絵を探してみます。

国立国会図書館蔵

淵上旭江『山水奇観』第6巻「駿河観音山」です。
うーん、ここは確かに三保の松原だし、湾を窪みから正面に望む角度は非常に似ているけれど、他の三保の松原を描いた作品にもありそうではある、、。
真ん中に描かれる小高い丘は省かれていますよね。
しかし、この作品は1800年のものなので、ここから三保の松原を描く画題というか型が固定されて記号的になっていったのでしょうか。

三保の松原は今年行ってみたいところの一つです。
静岡県にある広重美術館も一緒に行ってみたいし!
ちびまる子ちゃんの聖地だし!笑

今日は久しぶりに書いて、一度にいくつもの浮世絵を見ることができて、初めて知ることがいくつもあって、非常に楽しく記事を書くことができました。

毎日はもしかしたら難しいかもしれませんが、なるべく継続していきたいと思います。


今日はここまで!!

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