「見附 天竜川図」−心がキュッと締め付けられる背中−『東海道五十三次』
数日前にまつげパーマをして、非常に気分が上がっております。
やっぱりまつ毛がギュンと上がっていると、正面から顔を見る勇気も出ますし化粧の時間以降も多少の自信がついてきます。
全然外で遊びにいく予定がなくてもまつげは上げておきたいなと再確認しました。
そんなまつ毛とともに気分も上がっている今日も広重。今回は『東海道五十三次』の「見附 天竜川図」です。
◼️ファーストインプレッション
こんなにも川の中にいて、人々と同じ目線で渡しの様子を描いています。
手前の船には小さな人がしゃがんで、もう一人が手を後ろに組んで人々の多くいる方向を眺めているようですね。
向こうに行って客引きをするわけでもなく、来たらもてなすくらいの精神が垣間見られます。
向こうでは多くの荷物を持った旅人と馬がこれから渡るのか、渡った後なのか、話し合いをしています。
あの客たちを見つめて、来るかなあ、、来ないか。くらいの緩さで見ているのでしょう。
どうしても向こう側の人々の賑わいは想像できるし、ワイワイと話が繰り広げられているんだろうなというのは感じることはできます。
けれど、こっちサイドの二人に気持ちを寄せると沈黙と水がチャプチャプと船とぶつかって小さな飛沫をあげている音が微かに聞こえてくるようです。
その雰囲気はきっと向こうの人々をさらに超えて遠景に位置する木々のシルエットがそんな侘しさを物語っているかも知れません。
彼らの視野に映るものははっきりくっきりと輪郭を持って描かれるけれども、視野の外にあって背景と化しているものに関してはぼんやりと靄がかっている描写です。
今回はこの天竜川の場所とそこを描いた他の絵を見ていきたいと思います。
◼️見附 天竜川
天竜川もまた大きな川であるような雰囲気がこの絵から出ていますね。
前回の袋井が地図の右側にあります。
そこから西に行くと大きな川、天竜川があります。
こちらもまた場所によって幅は異なりますが、丁度東海道新幹線やJR東海が通っているあたりで、大きな中洲がありますね。
そこが今回の描かれた場所に該当する可能性があります。
天竜川はこれまで見てきた安倍川や大井川と違って、人が水に浸かって人間や物を運ぶ様式ではなく、船で人や物を運びました。
なので今回の絵でも全ての物を船で運んでいます。
実際に広重が訪れていたかは定かではないけれど、こうした事実からは外れることが無く、忠実であったこともよくわかります。
天竜川を描いた作品で、とても詳細な描写をしたものを見つけました。
一鶯国周の『東海道之内(御上洛東海道)天竜川』(1863)です。
水の描写が毒々しい印象を与えています。
しかし川面が荒れている様子もなく、船は落ち着いて運航できていそうです。
一艘の船にいろいろな職業の人間が相乗りしています。
以前見た天狗入りの箱を背負った金毘羅参りの人や琵琶を持った弾き方りの人たちなどなど乗り合わせていますね。
川の向こうを見ると、お祭りがあったのか行列が組まれています。
今回の広重の絵と違って人間がいることでの賑わいやさまざまな種類の人間が集っていたことが強調されています。
本来はこうした光景がよく見られたのかも知れませんが、広重はそこを排除して手前の船頭二人に心情を重ねました。
どこか侘しく、背中をさすってあげたくなるくらい傷心が伝わってきます。
国周の作品よりも広重の作品の方が先に出版されたので広重が参考にしたものではないけれど、広重は実際の光景からいくつかのモチーフを排除したであろうことはわかりますよね。
こうした人間に心情を重ねてしまう特徴こそ感傷的や叙情的と評される所以なのでしょう。
今日は見附の場所と、絵の侘しさ源を見ていきました。
今日はここまで!
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