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DXとは何なのか? 最先端のIT起業家の成功と失敗に学ぶ個人ビジネスの法則 - 読書感想文

概要:

コロナ禍の期間を通じて、デジタル化は急速に進んでいます。好きか好きでないかにかかわらず、私たちはデジタルに囲まれて生きています。あるものは、それを上手く利用して富を手に入れ、その他大勢はそれに利用されます。

であれば、氾濫しているDXやデジタルという言葉を単に毛嫌いしたり、あるいは無邪気に踊らされるのではなく、それを使いこなして、より豊かに賢く生きようとする姿勢が必要です。

アナログなサービスがデジタルに勝てるわけがない」と、筆者は言い捨てます。しかし同時に、これとまったく矛盾するのですが、成功することができる数少ないITスタートアップが持つ能力は「ストーリーを描ける能力」だとも言います。

当然ながら「ストーリーを描く」のは、社長や優秀なスタッフである人間です。この部分はもちろん「アナログ」です。ということは、最先端の成功するDXは「アナログ(ストーリー)に依存している」ということになります。

最先端のデジタル・DXは、どのように作られるのか。これは、個人ビジネスの成功という視点からは非常に大きな発見がザクザクとあります。それが、この非常にコンパクトにまとめられた1冊の中にちりばめられています。一緒に見ていきましょう。

この本のメッセージ:

DXの本質は「デジタル化」であり「競争力を強化」することだと筆者は言います。また、IT の技術が私たちの日常や生活そのものを大きく便利にしてしまう魔法の技術であるとも。しかしまた、これを生業として成功する起業家はわずか7%。さらには、成功する起業家と失敗する起業家の何が違うかというと、それは最先端のIT技術ではなく、「ストーリーを描ける能力」と「スタート時の展開戦略」を有しているかという、超アナログなスキルだと言います。

これは、個人のナレッジワーカーやクリエーターとも共通する部分が多々あります。

筆者について

AIイノベーション共創PF「hoshiiiiai.com」の代表。 最先端の AI技術を開発する海外スタートアップ企業(主に米国・イスラエル)を国内企業へご紹介するなど、協業や共創を通した新事業の創出に奔走。年間100社のスタートアップ企業と打ち合わせする。最先端ITテクノロジーやポストコロナの新しい働き方について発信されています。

誰がこの本を読むべきか

DXの起業家に加え、Webライター、書くことを仕事とするもの、クリエイターなどとして、自分自身のビジネスをスタートさせようとするもの、これから成長していこうという高い意思を持った全ての読者。

なぜ、この本を読むべきか、そのメリット、その理由は?

ITの起業家と個人のナレッジワーカーやクリエーターは、既存のチームがあるかどうかを除けば、非常によく似ています。筆者は、年間100社もの最先端のITスタートアップ企業の立ち上げや提携をクリエイトする経験から、成功するスタートアップと失敗するものをつぶさに見てきました。本書では、ご自身の起業や日々の経験からスタートアップ成功の核心を知ることができます。

筆者は、成功する起業家が違うのは、「ストーリーを描ける能力」、「スタート時の展開戦略」を有しているからだと言います。このストーリーの描き方を、ITの最前線からの視点から語っているのです。

めまぐるしく変わるWEB上のメディアやサービスから自分に有利な選択肢を絞り込んで競争力を高め、事業の展開を加速しようとする個人のナレッジワーカー、フリーランサー、Webライター、クリエイターなどにとっても、多くの学びがあることに間違いありません。

ここから、個人のクリエーター、ナレッジワーカーが学べることは数多くあります。そのノウハウを自分のビジネスに置き換えて考えたときの気づきの価値ははかり知れないものとなるでしょう。

本書の重要な構成

本書は以下の3つの部分から構成されます。

1. DXが必要な理由とは
2. 成功するITスタートアップの考え方
3. 銀行がなくなる?

このなかで、個人のナレッジワーカーやクリエーターが特に高い関心を寄せるのは、第1部の「デジが必要な理由とは」と第2部の「成功するITスタートアップの考え方」です。

1. DXが必要な理由とは

筆者は、コロナ禍で日本は「20 年分」のデジタル化を一気に進めたと言います。実際に、

コロナが存在しなければ今日のようなデジタル社会が訪れるのは 20年後であったろうとも。これにより、ハンコやFAXの文化が一瞬のうちに消えてなくなることになります。

また、DXの流れは大企業にも大きなうねりが起こり、リモートワークが多くの企業で広がっています。例えば、 NTT データは「 オンラインファースト」というキーワードで働き方の変革を行うことを宣言しました。

これは、職場で1カ所に集まって仕事をするのが当然ではなくなり、オンライン上で仕事をすることが標準となるということです。オンラインファーストがオフィスのDXの面で言う最終形態であると筆者は表現しています。

さらには、新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業でリモートワークが導入されました。業務のデジタル化や働き方改革が急ピッチで進められています。これにより、人事制度が改定され、「ジョブ型」や「裁量労働制」の導入に踏み切る企業も徐々に増えています。最終的には、自立した働き方が普及した末には、組織や社会は完全に「フラットな状態」になると筆者は予想しています。

しかしよく考えてみれば、われわれナレッジワーカーやクリエーターの多くは、すでにオンライン上で仕事を獲得し、クラウドやサブスクリプションのサービスを介して仕事の価値を高めて最終製品を提供するクラウドワーカーとなっていることを考えれば、何を今更と言えなくもありません。(時代がわれわれに追いついてきているのかもしれませんね。)

一方で、筆者は「DX の真の目的は『デジタル化による競争力』を強化すること」と言っています。これにより、「日本が抱える高齢化社会や人口減少を解決することができる」あるいは「ITの技術が私たちの日常や生活そのものを大きく便利にしてしまう魔法の技術」ともいっています。

これを個人のナレッジワーカーに置き換えてみましょう。これまでにも、ブロガーや情報マーケッターと呼ばれる一部の人たちがWEB上でそれなりの成功をしてきました。そして、これまでの働き方の急速な変化は、今回のコロナ禍やで個人の副業化をさらに押しすすめています。例えば、noteのMU(Monthly User数)は急増し、ますます多くの人が自分の考えを気軽に発信し、まざまな個人ビジネスが次々と立ち上がりつつあります。

4,400万MAU突破の先に。CEO×CTO×エンジニアが明かす、noteが直面する3つの難敵

noteなどのウェブサービスでマネタイズも容易になってきました。ここまできて「デジタル化」で、これまで一部の人たちだけが利用してきたサービスが、一般の個人にも無料や定額でAIや高度な分析を可能にしたサービスを利用できるようになってきたのです。

これは、個人のナレッジワーカーやクリエーターにとっても、最新のAIや分析ツールを使う、そのようなツーを使った成功事例や方法を学ぶことにより「デジタル化による競争力」を強化できると言うことです。

具体的には、AmazonのKindle本の出版にしても、Amazonは次々と新しい販売ツールや方法を追加しています。また、キーワードの分析やWebマーケティングのSEO、そして新しいSNSの利用方法など、個人にも使いやすいツールや方法論が多くのナレッジワーカーやクリエーターにも広がりつつあるのです。すでに、一部の鋭い著者やマーケッターたちが気がついて活用し、Kindleベストセラーのお冠を手に入れています。

つまり、DX化やデジタル化によってまったく新しいサービスが次々と現れてくる中、個人のナレッジワーカーやクリエーターは、最先端のサービスを試しながら他の競合から一歩先を行く競争力を手に入れることができると言うことです。

2. 成功するITスタートアップの考え方

筆者は、「成功する起業家はわずか7%」だと言います。これらの起業家 は何が違うのか、この点について深く掘り下げています。

それは、単純に知識の量や実践知ではありません。「ストーリーを描ける能力」、「スタート時の展開戦略」を有しているからと言います。

なんと、ITスタートアップ企業の立ち上げに「ストーリー力」というアナログな用語が飛び出すとは意外でした。小説や絵本を書くならストーリーというのは分かります。さらには、マーケティングで訴求力を強化するために個人が使用したときの体験談や問題解決の事例などもあり得ます。しかし、新規事業の立ち上げや成長戦略にストーリーという言葉は新鮮です。

どのようなものか、見ていきましょう。

筆者は、新サービスの構築をするプロセスを「ストーリー」と呼んでいます。このストーリーの描き方は、次の4つから構成されます。

① 自社のコアコンピタンスをリスト化する

ここでいう「自社」は、個人のナレッジワーカーやクリエーターにすれば、「自分」と置き換えることができます。

コアコンプタンスとは、自分が有する競合と比較して優位な能力のことです。自分にしかない強みをリスト化していき新しいビジネスの構築をはかっていきます。これは、自分にしかない強みをリスト化し、新事業に反映させるということです。

② SCQA フレームワークを活用して戦略を構築する               

ITの起業家が使う戦略構築の方法にSCQAがあります。SCQA とは、 S(Situation)/C(Condition)/Q(Question)/A(Answer)の意味です。具体的には、 

S: Situation - 社会が抱える問題を特定します。
C: Condition - 問題によって生じる課題を抽出します。
Q: Question - 課題を解決するためのアイデアを捻出します。
A: Answer - アイデアを解決するための答え(解決方法)まで具体化します。

案が数個挙がった後は、リスト化した自社のコアコンピタンスを 付加価値として追加できないか検討していきます。

つまり、これはターゲット顧客層が抱える問題を非常に大きな枠組みからはじめて、よりフォーカスされた解決すべき課題とその具体的な解決方法を提供するまでの絞り込みのプロセスです。

③ トレンドではなく、トレンドの課題を見つける

ここでいうトレンドとは、 ITの先端サービスのことを指しています。現在では AI や量子コンピュータ、ブロックチェーン等が当てはまります。これを個人のナレッジワーカーやクリエーターに当てはめれば、これは例えば副業の選び方や始め方オンライン講座のつくり方、あるいはクリエーターとしてのスキルの取得方法かもしれません。

筆者は、成功する7% の起業家はトレンドに乗ることはしないと言います。彼らは、トレンドの課題に新事業の可能性を見出します

この3つの点を上手く説明したものに、松尾 茂起(ウェブライダー/Betters)@seokyoto氏のグラフがあります。

ビジネスで一番楽しい瞬間って、「成功しかない」領域を見つけたときだな。

④ PESTLE(ペッスル)分析を定期的におこなう

最初の3つのステップに加え、中長期的なアプローチに使うのがPESTLE分析です。以下のの6つの要因から分析します。

・ P(政治)
・ E(経済)
・ S(社会)
・ T(技術)
・ L(法律)
・ E(環境)

この手法では、世の中の現在の状況及び将来的な状況 を6つの側面で分析し、「今取り組んでいくべきサービス」を見つけていきます。 PESTLE 分析等は、企業の中期経営計画や経営戦略の立案でよく使われます。

多くの個人のナレッジワーカーやクリエーターに欠けている点は、目先の売り上げや利益に目を奪われるばかりに、どのようにビジネスとして成長させていくかの視点が欠けていることです。

筆者も指摘しているように、短期的な内部環境の分析も大事ですが、数年先、5年先と言った中長期の視点を外部環境の分析と一緒に行うことは、成長するビジネスを育てていくためには、短期的成長以上に重要なことなのかもしれません。

成功するIT起業家は、外部環境の分析を軽視せず、定期的に分析する能力を有しているケースが多いとのことです。

一人ビジネスの営業を考える

筆者によれば、IT企業のスタート時点での最も重要な展開戦略は「優秀な営業社員の確保」に尽きるといいます。経営者が一人で営業に行き、一人だけの会社だとわかると足元を見られるからです。

この優秀な営業社員とは「自社のサービスを信頼して情熱を持っている社員」のことです。

商品をドンドン売ってくる営業社員よりも「うちの商品を買いたかったら、買ってもいいですけど?」というようなちょっとツンとしたタイプの方が望ましいと言うのです。

また、スタートアップはピッチ大会でアピールする機会も多いかと思いますが、大事なことは「媚びないこと」に限るとしています。媚びずに自社のサービスを心から信じていること。そして、心のどこかに不安がある場合は、その不安材料を取り除いてから事業展開をするべきだと言います。

これを個人のナレッジワーカーやクリエーターに当てはめてみるとどうなるでしょう。

もちろん、個人のナレッジワーカーやクリエーターが最初からIT企業のようなチームや立ち上げのための資金を持っていることはありません。いわゆる一人社長が一人で営業も製品開発も具体的な結果としてのサービスも、全てこなしていく必要があります。

しかし、よく考えてみれば、IT起業家も一人社長も、基本的な考え方やアプローチもよく似た一面を持っています。

それは、人にマネのできない、ユニークで顧客の本質的な問題を解決する製品・サービスを提供することです。であればこれは、顧客が並んでも求める「解決方法(ソリューション)」を提供することになります。そしてこれは、顧客に媚びる営業が必要ではないということになります。

これに共通する考え方は、読書レビュー「副業出版の手引き」でも紹介しています。TwitterなどのSNSでは、ただ単にフォロアー数やいいね!を増やすのが本来の目的ではありません。ビジネスの観点からは、「媚びる」営業ではなく、お互いに自分自身とビジネスを成長させることのできる、お互いを高め合える仲間を作っていくことが必要です。

失敗する起業家とは

成功する起業家の要件に加え、筆者は以下の点を失敗する起業家の特徴としてあげています。これらは、その多くが失敗する個人のナレッジワーカーやクリエーターと共通しています。

① コアコンピタンスを活かせていない

自分自身の差別化ポイントが全くないか、製品・サービスに反映されていない。

② ROI の説明に欠けるサービス展開

ROIとは、投資収益率、あるいは費用対効果とも同じです。失敗する起業家の展開するサービス は ROIがうまく説明されていない傾向があります。つまり、製品・サービスを項に有することで、どれくらいの効果があるのかを具体的な数字で表すと言うことです。

個人のナレッジワーカーやクリエーターについて言えば、提供するスキルやサービスなどの関係で具体的な利益の数字に表すことが難しい場合があります。このときに使えるのが、それを使った人の体験談です。もしなければ、自分がそれを使うことでどれほどの効果があったかを前面に押し出します。自分自身のものではじめ、サービスを提供していくうちに追加することもできます。また、儲かるノウハウであれば実際に自分がいくらもうけたかと言うことになります。

③単純 に GUI にしただけのサービス

海外のサービスのローカライズやGUI化(日本語化や国内展開)を検討するのであれば、簡単に真似できない自社だけの情報を付加価値として追加するべきです。これを個人のナレッジワーカーとクリエーターに置き換えれば、競合と類似のサービスを提供するのであれば、競合と差別化のできる、自分独自の価値を前面に押し出したものでなければならないのです。

これ以外にも、以下の要因を失敗要因として挙げています。

④ 失注した要因を分析しない。
⑤ 世の中が追いついていないサービス
⑥ トライアルが無償でない

結論:

ちまたでは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やデジタル化という言葉が飛び交っています。ニュース報道では、これはあたかも企業やお役所の問題のように語られています。しかし実は、デジタル化というのは、それを意識するかしないかに関わらず、私たちの仕事や生活を大きく変えつつあります。

本書では、「DXとはは何か」という疑問に対して、個人のナレッジワーカーやクリエーターとって非常に重要な2つの点を提示しています。

1. DX(デジタル化)を使いこなして競争力を手に入れる側に立つことで、自分自身を常に有利な立場に置くことができる。

2. 成功するIT起業家が使う(アナログな)「ストーリーを描く能力」を手に入れることで、個人のナレッジワーカーやクリエーターも、わずか7%という成功するビジネスを創り出すことができる。

つまるところ、デジタルを上手く使いこなし、競争力を手に入れたものは大きな能力と富を手に入れ、そうでないものは、それに使われる側になるのです。

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