【中編小説】法案

第一章 

逮捕 カロアとの対話 江谷の過去


 カロアには忘れられない言葉があった。しかし、それを言ったホストは彼女のことを忘れていた。朝日が昇り始めた歌舞伎町の空はサイレンの音で埋め尽くされて、彼女は上京する直前に見た地元の夕空を思い出していた。ノスタルジックな気分に浸るカロアの頭上から日が差し込み、真っ白なワンピースが透けると、白よりも透明な素肌が露になった。辺りの空気は神聖な雰囲気をまとって漂う。森宮はその光景に見とれて声をかけるのを一瞬ためらった。「あなたが刺したということで間違いないですね?」「何回、刺したかも覚えていません、それより彼は死んだんですか?」その質問に、森宮はすぐには答えられなかった。彼女のワンピースには血痕1つ付着していなかったのだ。「死んだよ、息がないのは私が確認済み」「江谷警部、来ていたんですか」「森宮、ここからは私が話すわ」森宮は安堵しきった表情を見せて、広げていた手帳を閉じた。腕はだらんとぶら下がり萎れるように猫背になった。そこに丸下が現れる。「森宮!」と丸下はいかつい声で言い、制服の襟首を掴んでぐっと引っ張り上げ、「そんなだらっしない格好しないで、警部のお話の続きを聞きなさいよ。※」


※ この第一章は完結していない。 

第二章 牢獄の中のカロア

 初めてホストクラブを訪れたときのことをカロアは今でも鮮明に覚えている。彼女は水商売のことを「みず」と略すことを知らなかった。ホストに「水はね、稼げるよ」と言われたとき「水で稼げるわけないですよ、ここはアフリカですか!」とツッコんでしまった。


幻の第三章 カロアの見た夢

夢 クリスマスの新宿でフーディンを倒すんだけど、そのために行列ができてて、なんかのグミを食べたら行列の中でランダムにフーディンに首を曲げられて殺されるシステムで、めっちゃグミ食べちゃって殺されないかハラハラしてた。

第四章 カロアとトイレ

幼き頃のカロアの趣味を知っているのは母親だけだった。カロアはいつもトイレの中で母親がうんこしているところを壁に張り付いて背後から見ていたのだ。母親はトイレに入るとき、いつもカロアに気づかないフリをする。しかし、カロアは母親が踏ん張っているときに話しかける。

第四~五章 あるホストの口説き文句

ホスト「押入れのどこか奥の方に『折り紙』があるのは分かっているから自発的に出してほしい。怒らないから、お前の脳の引き出しの中にある折り紙で鶴を折ってほしいんだ、出してほしい、大丈夫だ、勝手に折りはしないから、折り紙を自発的に出してくれ、折るようなことはしないから」

第六章 釈放(終)

何者かがなんらかの法案を可決させて、カロアは釈放された。


銭ズラ