♯21 マーケティングとイノベーションだけが、成果をもたらす 前編
(この記事は約3分で読めます)
前号では、もしドラのベースとなった名著「マネジメント」の骨子について書きました。
その教えは、日本人にも馴染み深い近江商人の教えである「三方良し」と、驚くほど相通じるものがあったんですよね。
大著マネジメントは、三方良しを構成する「買い手良し=顧客のニーズ」、「売り手良し=社員のニーズ」、「世間良し=社会全体のニーズ」について、一つひとつ、そして相互に連関させながら、深く掘り下げて考察しています。
今回は一つ目の構成要素である「買い手良し=顧客のニーズ」について、一緒に学んでいきたいと思います。
まずは先生に質問です。
もし先生が、社員さんや患者さんから、
「先生は、なぜ治療院を経営しているのですか?」
と聞かれたら、なんと答えますか?
実は今月のテーマ本である「マネジメント【エッセンシャル版】」では、冒頭から読者に対し、この問いを投げかけてきます。
いきなりこんな問いを投げかけられたら、だれでも戸惑いますよね。
「んんん、自分の専門領域だから...」
「生活するため...」
「他人に雇われて仕事をするのがいやだから...」
「自分で事業をしたかったから...」
「治療を通じ、患者さんの健康維持に役立ちたいから...」
こんな感じの答えが、一般的ではないでしょうか?
その問いに対するドラッカー氏自身の回答は、「顧客の創造である」。
ドラッカー氏らしい、なんか虚を突かれる言葉ですよね。
また、「顧客の創造」というと、新規顧客を常に作り出すような響きがあり、「新規の患者を拡げ続けることが、経営する目的じゃあないよな。」と反論をしたくもなります。
しかし、ドラッカー氏の意図は単純明快。
「顧客のニーズに応え続けること」が、その真意。
そしてそれが、企業を存続させる唯一の目的だと説きます。
この「顧客のニーズに応え続けなさい」が、実はドラッカーの教えの一丁目一番地。
キリスト教の「隣人を愛せよ」、仏教の「諸行無常」と同様、ドラッカーを学ぶ人にとっての根本的な考え方。
ドラッカーの教えの、すべての基点です。
続けて、先生に質問です。
「先生は治療院の経営を、マーケティングまたはイノベーションに基づいて行っていますか?」
恐らく多くの先生は、「マーケティングという言葉はよく聞くけど、患者さんの体を治療する我々には関係ないでしょ?
イノベーションは先端技術の会社がやることですよね?」という回答になるのでは?
この回答、ドラッカー氏に言わせると、めちゃくちゃ不正解です!
ドラッカー先生、言い切りました。
「あなたの会社を存続させたいと思ったら、マーケティングとイノベーションだけに集中して取り組みなさい。それ以外の機能は二義的なものですよ。」と...
つまり、その2つの機能が働いていない会社は、社会に存続する理由がないと断言しています。
なので、先生の院が今も存続しているということは、先生は気付いていなくても、実はその2つの機能が働いている証拠です。
まず、「マーケティング」に関し、ドラッカー氏はこう説きます。
それが、ドラッカー氏の提唱するマーケティングの定義です。
ドラッカー氏の名言「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」は、そんな背景から生まれた言葉です。
治療院経営における『販売』は、「先生が現状施せる技能レベルや院内設備をベースに、患者への治療方法を合わせる」。
つまり、院で出来ることが基軸になっています。
対して『マーケティング』は、「患者が必要とする状態になるよう、最適な治療を施す」ということ。
つまり、患者のニーズを起点とするのがマーケティングです。
マーケティング業界には、「ドリルを売るな。穴を売れ」という有名な話があります。
有名なので詳細は割愛しますが、「ホームセンターにドリルを買いに来た顧客は、ドリルそのものが欲しい訳ではない。
穴を開けたいのだ。
なので、顧客にはドリルではなく、穴を売れ」というのが、その話の要点。
ドラッカー氏も一貫して、
「あなたの顧客は、つまるところ何を買っているのですか?」
「それを欲している顧客は、どこにいるのですか?」
「その顧客の欲求を提供しているあなたの事業は、つまるところ何なのですか?」
を読者に対し、強く問い続けます。
その視点の置き方ひとつで、院に求められる技能や対応レベル、そして患者の満足度レベルも大きく変わってきますね。
長くなりましたので、「イノベーション」につきましては、次回お話します。
~前号の「近江商人とドラッカー」を読み返す~
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