子どもの問題の90%は叱らなくても解決できるワケ

アメリカの学校でいいなって思うことの一つは怒っている先生が一人もいないことです。なのに先生を困らすようなことをする子は少ないし目立っていない。この穏やかな環境はどこからくるのだろうかと疑問に思っていたところ、今回今通っているアメリカの大学院の授業を通してそのからくりが少し見えてきたのでご紹介しようと思います!

しつけの新概念

先学期は大学院でCreating Positive Classroom Environmentという授業を受講しました。その中で何度も出てくるのがDisciplineという言葉。

Disciplineって日本語だと「しつけ」が一番近いかな?

じゃあしつけって何?って考えた時、私はしつけって迷惑になる行動やよくない行動をやめさせて、全体の秩序を守るために必要なものというような捉え方をどこかしていました。

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けど、そうじゃないということを今回学んでいます。

実はアメリカでも最初は私と同じような考えがあったようです。それが、1970年代半ば頃から、新しい流れが出てきます。

怒らずに運営できている教室の状況を観察していると、とってもシンプルな事実が見えてきたようですよ。それは、

子どもたちがそれぞれに夢中になにかに取り組んでいると、問題行動は起きない!

ということ。確かにそうですよね。子どもたちが夢中で取り組んでいるときって、隣の子にちょっかいかけたり、ふざけたりする暇もないですものね。非常に納得。

そして、更に面白いなと思ったのは、だったら、何か困ったことが起きてから対処するんじゃなくって、もっと子どもたちが夢中になれる環境、もっと子どもたちが協力しあいたくなる雰囲気そんな環境を創ったらいいじゃん!という大きな流れになったことです。

そこから、子どもたちのしつけは、行動を規制することではなく、如何に夢中になれる場をつくっていけるかということを真剣に議論し、体系化し、広がっていきます。

ざっと挙げて見るだけでも、こんなにも沢山の方法論が!?

-ハイム・ギノットの思いやりと敬意をベースとしたコミュニケーション法 
-1977年から始まったジム・フェイとフォスター W. クラインによるLove & Logic理論
-リンダ・アルバートのCooperative discipline モデル
-ジェーン・ネルソンのPositive Discipline(ポジティブなしつけ)
-ウィリアム・グラッサーの選択理論をもとにした「クオリティ・スクール」
-KaganのWin-Win method of discipline
-B.F. Skinnerの行動分析やそこから発展した応用行動分析
-Lee and Marlene Canterが1976年から提唱しているAssertive Discipline
-そして、今全米に広がっているPositive behavior support, social-emotional learningの取り組み   etc.

少し書いてみただけでも本当に沢山あることが分かります。
University of the Peopleの教育学修士課程ではこんな感じで色んな理論も包括的に読み漁らせてもらえます。

その中で衝撃的だったのがこのグラフです。

しつけの4要素と衝撃のデータ

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これがそのグラフです。
Boynton & Boynton(2005)が提唱しているモデルなのですが、彼らはしつけはこの4つの要素から成り立っていると仮定しました。
1. 先生と生徒のポジティブな関係性
2.モニタリングスキル(ちゃんと見てるよ)
3.「やってくれたら嬉しいよ♡」という行動の明確化
4.お叱り

そして、大人と子どもの関係(この本の場合は、教室内)での理想のバランスを描くと上のグラフのようになると。

なぜこのグラフが衝撃だったかといいますと、
私がかつて考えていたしつけは
この中でいう「4.お叱り」の
たったの10%の部分でしかないということに気付かされたからです!

それよりも、
日頃からポジティブな関係性を築くこと、
しっかりと子どもの様子をしっかりと見ること、
ちゃーんとやって欲しいことが伝わっているか確認し続けること

これができていることで、注意したくなる行動や周りの迷惑になる行動の90%は予防できるとのこと。

視覚的に訴えられると
もう参りました〜と言うしかない状態になりました。

アメリカの小学校を見て思うこと

確かに娘たちのアメリカの小学校を見ているととても納得がいきます。
そして、保護者に対しても同じように接してくださるので本当に助かっております。

今日の朝もそれを感じてしまいました。
というのも、先週から1年ぶりにコロナの中、学校が再開し、安全性を確保するために、Screener19というスクリーニング検査を毎朝学校に提出しないと教室に入れなくなってしまいました。

質問に答えてネット上に提出するだけの、10秒もかからないとっても簡単な作業なのですが、すみません。。朝の慌ただしさに、忘れてしまうことがあるのです。校門をくぐる直前に思い出し大急ぎで提出しても間に合わないことも。

そして、私のように忘れてしまう保護者の方もたくさんいらしたようです。そうすると、学校に入ってから、オフィッスの職員さんが体温を測り、子どもに質問するという時間のロスが起きるとのこと。

それに対して最初は、子どもたちの学ぶ時間を削りたくないからご協力お願いしますというメールでのお願いだったのが、ある日から、毎朝学校から「スクリーン19やったかな?」というテキストが届くようになりました。

月曜日の今朝もうっかり忘れそうになっていた私は救われました。

このように、親にやって欲しいことがある場合、やらない親を責めたり、同じように「やってください」と繰り返すのではなく、どうしたらどんな親でもできるようになるかな?と考え、実行してくださるありがたさと暖かさ。ミスしたって、いいんだよ、環境が変わればできることもあるんだから、と励ましまでいただける気持ちにもなれ、なんだか救われます。ほんと、ありがとうございます。

これは、教室の中でも見られ、「どうしたら色んな国、言語、文化、特性のある子ができるようになるかな?」と常に考え、場を創ってくださっている暖かさを感じます。

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お子さんが言うこと聞いてくれないということがありましたら、是非「じゃあどうしたら聞いてくれるかな?」とじーっくりお子さんを観察してみてくださいね。きっとそんな一歩が、色んな人が安心して育ち合える場につながっていくと思います。

まとめ

で、冒頭のタイトルの「子どもの問題の90%はしからなくても解決できるワケ」は、叱らないと行けない状況をつくりださないことで、多くの問題が解決するからなのですね。

卵か鶏かのようなこの議論。
ところが、実はちょっと意識するだけでうまくいくことが沢山あってとってもお得です。

今日は特別に、紹介されていた色んな技の中からとっーっても簡単なものを一つ。
言うことを聞いてくれないお子さんがいた場合、
そーっと優しく近づいて、
目をあわせ、
小さな声で、
やさしく笑顔で、
やって欲しいことを伝えてみる。

たったこれだけでも、叱らなくても解決することありますよ。
うまく行きますように!

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