ミューズ誕生
松任谷由実(荒井由実)/ 通称・ユーミン、私の女神。
彼女が生み出してきた音楽は、一体これまでどれだけの悩める女の子に魔法をかけてきたんだろう。女の子に生まれたのなら、遠慮なくミューズに頼ってしまおう。
ユーミンが紡ぐ言葉たちは美しい情景を思い浮かばせ、恋い焦がれた彼をひょいと目の前に誘い出し、大人になりきれていない少女に真っ赤なルージュを引く。
ユーミンとの馴れ初めばなし
どういうわけか顧問の先生の意向で、CDデッキから永遠とサザンとユーミンが流れる中学校の部活動に、当時私は励んでいた。部員に喝を入れるために必要不可欠なメガホンと一緒に運び出すCDデッキ。特に印象的なのがアイキャッチの「天国のドア」だった。
いま思い返すと、ユーミンとこのCDデッキだけはいつも息を切らす私たち部員をやさしく見守ってくれていたのかもしれない。
顧問の先生だけに留まらずユーミンは父までをも魅了していた。ありがたいことに車の中ではひっきりなしにユーミン、山下達郎、角松敏生でそれはもう溢れかえっていた。お父さん、娘は一生かけて感謝します。
父との思い出で印象的なアルバムはこちらの「ノイエ・ムジーク」
中でも「DESTINY」「カンナ8号線」が好きだったのを覚えている。きっとわかりやすくポップなメロディーに乗せてユーミンは、まだ小さかった私に「大きくなったらもっと素敵に、悲しく聴こえる日が来るわ」と囁いていたに違いない。
踊りすぎた金曜日を残して
さて、そんなこんなで人並み(あるいはそれ以上?)には恋煩いに勤しみながら、いつしか私も大人と呼ばれる若者になってしまった。数々のヒット曲をリリースしていた当時のユーミンと同世代に並ぶと、昔から知っているはずの曲が全然違うものみたいに感じることに驚く。ユーミンの楽曲の中にだけ存在すると思っていた世界が、自分のすぐそばで色づき息をしていることを知ったからだ。
悲しいことに、自分ではどうにもできないこともあると気付いた私が、「いま誰かに聞いてもらいたいなら」と、ない頭をひねって3曲セレクトしてみました。
街角のペシミスト /「昨晩お会いしましょう」(1981年)
全体的に、どこかシティーガールの香りを漂わせる一枚。色々なアルバムを聴き込んでいくうちに好きになった。女の子がたった一日で、一時間で、十分で、ぐんっと成長してしまうあの抽象的な何かを、ユーミンは歌で教えてくれる。
14番目の月 / 「14番目の月」(1976年)
まずこのアルバムリリースが1976年ー私が生まれるより20年以上前なんて!ーということに対して、その楽曲をこうして感情の隅々まで行き届かせて聴けることの有難さに脱帽、そしてお礼を言います。若々しいユーミンが勢いよく踊り出すかのように、イントロから駆け上がっていくキャッチーな曲。恋はときめきサバイバル。
影になって / 「悲しいほどお天気」(1979年)
そよ風みたいにゆったり、静かに過ぎていくリズムが最高に気持ちがいい。ユーミンが歌う言葉にじっと耳を傾けると、まるでその"彼女”が真横を通り過ぎていったみたいに錯覚する。彼女は誰を、何を思ってそんな悲しみ、寒がっているんだろう。それにしてもこのジャケット、ちょっと洗練されすぎではないでしょうか。
私はいつでもユーミンに泣きついて、励まされて、背中を押されて、一緒に怒って、そしてもう一度幸せだと言って抱きしめてもらえる時を生きている。
ユーミンにがっかりされないようにこれからもいっぱい恋をして、いい女に近づかなきゃいけない。沢山の音楽の中で今も力強く輝くあの子たちに負けないように。
それが、「日本の恋と、ユーミンと。」
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