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映像翻訳について思うこと①翻訳者になるまで

 会社員の傍ら1年半映像翻訳の学校に通い、3回目のトライアルに合格後、2年程映像翻訳者として活動しました。その経験を通じて考えたことを時系列にまとめます。かなり個人的なまとめにはなりますが、これから映像翻訳を学んでみたい方や映像翻訳者を目指している方の参考になれば幸いです。

まず、映像翻訳とは映像作品の字幕や吹替原稿を作成する仕事です。映像の種類は、映画・ドラマ・アニメ・企業関連動画など様々です。私は主にネット配信の映画やドラマ、アニメの字幕作成をしていました。

私がこの仕事を目指した理由は、ひとことで言うと、家でできる&基本的に1人で完結する仕事がしたかったからでした。

社会人デビューも、壁にぶつかる

 新卒で商社に入社し貿易実務の仕事をするも、仕事が楽しいと思えない日々を送っていました。当時商社を選んだ理由は2つです。1つは、英語を活かせる点、2つ目は「貿易」という専門性がある点です。

これまで、高校・大学と英語系の学部に通っており、比較的英語が得意だったため、仕事でも英語を活かしたいという思いがまずありました。加えて、何かしら専門的な知識のつく仕事がしたいと思い、貿易実務を選びました。しかし、実際に働いてみると、確かに英語は毎日使うものの、ルーティンの書類作成なども多く、あまりやりがいを感じられる仕事ではありませんでした。

それに、割と極端な内向型の自分にとっては苦手なことも多くありました。商社という立場上、常に調整役であることや、マルチタスクが求められることなどです。仕事の特性(=多くの人と連携を取りながら、素早く判断を下し、複数の作業を平行して行う)と自分のタイプ(1人でじっくり作業する方が得意)が合っていなかったのです。

仕事で英語を使うという経験ができたのはすごくありがたいことでしたが、そんなこんなで徐々に他の可能性も考えるようになりました。

軌道修正

 一時は転職を考えたものの、組織で働く以上「一人で完結&家でできる仕事」という条件を満たすのは難しいため、思い留まりました。そして、働きながらできることを探そうという結論に至りました。また、現在働いている会社が、客観的に見て超ホワイト企業であり、かつ人間関係は良好だったので、転職により状況が悪化するのを避けたかったというのもあります。

高校生のころから漠然と、家で1人でできるかつ手に職が得られる仕事がしたいと思っていたことや、英語系の学部にいたこともあり翻訳にも興味はありました。一方で、「帰国子女でもないし、いまだに自分の英語は発展途上だから、翻訳なんて到底無理だ。」という思いが強くあり、実際にやろうとは考えていませんでした。

それに、翻訳=出版or実務のイメージが強く、出版業界は先細りしそうだし…でも実務は面白くなさそうだし…と思い躊躇してしまっていました。しかし、映像翻訳の学校に半年通学していた知人から、私にも向いていそうだと勧められたのをきっかけに、思い切って体験授業に行くことにしました。その頃は既にネット配信が盛り上がっており、映像なら需要が高いしチャンスは増えているということも、翻訳を前向きに考えるきっかけとなりました。

とはいえ、いつも考えてばかりでなかなか行動に移せない自分にしては思い切った行動でした。笑 

翻訳が稼げないということは、既にある程度知っていましたが、会社を辞めずに通えるし、他に今すぐ挑戦してみたいこともなかったので、やらない場合の機会損失の方が大きいと思い行動してみました。

とりあえず挑戦

 体験授業を受けての感想は、「奥が深そうで面白い」でした。そして、とりあえず半年だけ(授業は週1回)通ってみることにしました。授業は毎週とても楽しく、社会人になり勉強から遠ざかっていた自分に、学ぶ楽しさを思い出させてくれました。自分のクラスでは、生徒は20人ほどでした。学生はいませんでしたが、既に定年退職した人、映像関係の仕事をしている人、教師、メーカー等の会社員、実務翻訳者、主婦など様々な方がいらっしゃいました。

その学校では映像翻訳全般(吹替と字幕とVO=ボイスオーバーといって、声をかぶせる方法)を学ぶことができました。毎週、事前に課題を提出し、その内容について授業で解説するスタイルです。

対面式の授業であり、他の受講生の訳も見られることがとても参考になりました。最初は自分の訳を他人に見られるのがすごく恥ずかしかったのですが、それにはすぐに慣れました。

通いながらも続けていくべきか迷っていたのですが、授業のなかで何度か訳を褒めて頂くことがあったり、1つの学期(半年)毎に渡される評価表でも割と高い評価を頂けたこともあり、その気になり?受講を続けることにしました。何より、授業自体が楽しかったので、全コースを修了するまであっという間でした。1年半の受講を終えると、その翻訳学校のトライアル受験資格を得られます。そしてトライアルに受かると、翻訳学校から仕事を受注することができる仕組みです。

翻訳者デビュー

 私の場合は初めのトライアルで次点(惜しいです、という感じ)となり、3回目で合格することができました。トライアルでは、ドキュメンタリー番組の一部(10分程度)の字幕を作成しました。

前述の通り、トライアルに受かると、翻訳学校から仕事を受けられる仕組みだったので、合格=翻訳者デビューとなりました。私の通っていた学校では、デビューが決まるとまずはOJTを受けられました。実際に仕事を受注した際を想定して、模擬発注~翻訳~納品の流れを一通り体験します。

OJTを終えると、ディレクターにあいさつをすませ、いよいよデビューとなります。新人にも本当に仕事が来るのかな、と半信半疑だったのですが数日以内に複数の依頼があり、無事に初仕事を受注することができました。

慣れない翻訳の仕事と会社員の仕事を両立するのは大変でしたが、ちょうどコロナ禍となり在宅勤務が始まった頃だったため、何とか両立することができました。

翻訳の仕事は、会社での仕事とは違い、1人でじっくり取り組めて、かつ「楽しい!」と思える瞬間がありました。それまで、仕事で楽しいと思える経験がほとんどなかった自分にとって、仕事でも楽しいと思えることがあることが嬉しかったです。

次の記事では、翻訳者になってよかったことについて書いています。



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