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父が穏やかになれた場所は畑だけ

私の実家はもうない。親、兄妹は全員消息不明。「家」に良い思い出が少ない。

でもなぜかふと思い立って、10年前に住んでた家をGoogle earthで検索。

一番最新の画像は2019年。当たり前だが、別の人が住んでいる。でも家の外観は全く変わらない。そういえば、元我が家の前には空き地があった。

画面をスクロール。

父が建てたツリーハウスと畑が残ってる?おかしいな、と家の方へとスクロールをする。「ひゃ」と小さく声が出た。

見慣れた車が並んでいる。ベランダには洗濯物。あの体操着は弟のかな。

どのボタンを押したのかわからないが「10年前」に戻っていた。車を洗う父、洗濯物を干す継母の後ろ姿、「もうすぐ試合やから」とテニスラケットを振る弟、お菓子片手に受験勉強をする妹の姿が鮮明に蘇ってきた。Google earthで人は写っていないのに。

私たちを喜ばせようと、父はツリーハウスを作った。夏の夜はツリーハウスに登って、父、妹と弟とアイスを食べた。

父はそのすぐ隣に畑も作った。ミニトマト、ネギやお花も植えた。冬以外は麦わら帽子を被り、いそいそと畑仕事をしていた父。芽が出た植物を一緒に喜び、水やりをして雑草を引っこ抜いた。その後に飲んだアイスコーヒーが格別だった。私が学校から帰ってくると、「おーい!おかえり」と父は手を振ってたな。その横で、弟と妹がバトミントンをしていた。畑で収穫した野菜を家族で美味しく食べた。

最後の記憶は、畑で父が警察官10人くらいに囲まれていた。

そして、Google earthは2021年にまた戻る。ツリーハウスも畑も無くなっていた。父が頑張って作ったのに。少し寂しくもあるけど、忘れていた穏やかな時間を思い出せたからいいか。父、家族も上手に育めたら良かったのにね。

今そこに住む家族が、幸せであることを願う。


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