【第5話】家族の本当の闇
今日は「家族の本当の闇」について、自分の気持ちを書こうと思う。
私が20年以上目にしてきた家族の有り様というのは、家族の一員であったはずの私にすら闇の底が見えなかった。少しでも足を踏み外せば、すぐに普通の1日が崩れ去ってしまう…そんな日々を、家族全員が送っていた。
両親は私が物心つく前からすでに重度の共依存。
力で押さえつける者と、押さえつけられる者。父は「わが道」以外を一切認めず、歯向かうものは全てなぎ倒して行く。
母は父の怒声を聞けば、体を硬直させるか、ヒステリックに怒り始める。まるで調教された犬のように。反発し合うから、エスカレートしていく。
私は父から、存在価値を否定されるような罵声を浴びせられることもあった。思わず「お前が勝手に生んだんやろ!」と怒鳴り返してしまうようなこと。
それでも、遺伝的なものなのか。子供である私たちは、親を憎みきれない。どうすることもできず、暗い部屋で泣いて「自分がいなければ…」と思うような日々も過ごした。
私たち兄弟は常に両親の顔色を伺い、優しさと理不尽さの間を行き来しながら、彼らに気を許すことも、逆に嫌いになることもできずに混乱していた。
スーツを着た10人くらいの男性に父が取り囲まれて、連れて行かれたこともある。母親は顔をアザだらけにしていたこともある。
自分自身、理由もわからず父にふっ飛ばされたことも。
鬼のような形相で、母を張り倒す父を止めに入ったこともあった。まだ小さかった弟と妹は、顔を真っ青にして震えていたのを覚えている。
挙げだすと20年分、本当にキリがないけれど、そんな調子で4年前。本当に背筋も凍る事件が起きた。怒りをコントロールできない父が暴れ、私と母を守ろうとした弟が巻き込まれて大ケガを負ってしまった。
おびただしい血。慌ただしく家に入ってくる警察官たち。無言で連れて行かれる母親。逃げた父親。弟と一緒に救急車に乗った私…
その場で起きている状況を呆然と眺めるばかりで、実際に何が起きているかを理解したのは病院に着いた後。自分の服や手足についた弟の血をみて、体の奥底の方から「逃げないと殺される…」という叫びを聞いた日だった。本当にあの時は、生きた心地がしなかった。
こんな家族でも、楽しい思い出もたくさんある。だからこそ、こういう悲しい思い出との折り合いを、未だにつけきれずにいる。こういう気持ちを文章にしていくのは、まるでセラピーに通うように、自分の気持を整理する手助けになってくれている。書くのを迷ったり、ためらったりする気持ちと葛藤しつつ、未だ残る家族への愛情と、だからこそ悔しく、悲しい気持ちを書き綴って行きたい。
それが「バッタモン家族」を書く本当の目的。
上に挙げた目を覆いたくなるような事態の数々も、もう少し後で、整理のついたものから文章にしていければと思います。