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ゴッドファザーとマスクと、カンノーリ。

【大いに気になる、小さなニュース】(米9/28)

カリフォルニア州のローカルニュースで、あるビルボードが話題になりました。

マスクは置いて、カンノーリをどうぞ。
Leave The Mask. Take The Cannoli.

フランシス・コッポラの名作映画「ゴッドファザー」の書体と、作中の名言「銃は置いていけ。カンノーリを取ってくれ」をもじって、“反マスク”のスタンスを訴えるこのビルボード。

オレンジ郡にあるイタリアン・アメリカンのレストランが設置したものです。が、もちろんこれは、マスクに反対している“だけ”ではありません。

「我々のビジネスに介入するな!」という、政治的な意味が込められているのです。

実はこのレストラン、以前もアメリカ国旗とガズデン旗(Gasdens Flag)を掲げてニュースになっていました。

元々は米国独立戦争で使われた旗。2009年から始まった保守派の市民政治運動「ティーパーティ運動」でよく使われるようになったそうです。
古き良きアメリカに対する愛国心を示しているのでしょう。

オバマ大統領が進めていた「大きな政府」への反発を示し、「自分たちの縄張り(生活)に侵入してくるな!もし侵入してくれば噛みついてやる!」といった意味だとか。

そんな保守派の人々が支持しているのが、トランプ大統領です。

対するカリフォルニア州のニューサム知事は、リベラル派。

今回のコロナへの対応に関して言うと、ビジネスを止めたくないトランプ大統領に対して、カリフォルニアは独自の規制を行ない、ビジネスオーナーにとっては厳しかったように思います。

ニューサム知事は、どの州よりも先にロックダウンを発表。レストランは休業を余儀なくされました。テイクアウトの経営はOKでしたが、「売り上げは通常の30%」にまで減ったとか。

いざリオープン(店舗での飲食再会)の話が出ても、テラス席のみ、マスクは必須、客席を○%減らして・・・と、指示が細かい。

すでにビジネスに大打撃を受けているレストランオーナーが、プッチン切れてこんなビルボードを掲げてしまうのも、わかると言えば、わかる・・・ような気がしなくもない。

特に政治を論じたいわけではないので、このビルボードの政治的な意味はいったん脇に置いておきまして・・・。

このニュースで話題になった「ゴッドファーザー」の名シーンを、ネタバレ満載に振り返ってみたいと思います。

家を出るクレメンザは、妻から「カンノーリを買うの忘れないで」と言われます。カンノーリというのは、イタリアの伝統菓子。甘くて美味しい、日常の幸せを象徴します。

そんなクレメンザが、ポーリーの運転する車に乗ってお出かけ。運転席の後ろに手下のロッコが座りますが、何か不穏な空気を感じたポーリーはあれこれ言い訳をして、助手席の後ろへとロッコを移動させます。

軽いおしゃべりしながら、3人を乗せた車はNYの町を走り、自由の女神が遠くに見える何もない原っぱで停車。

「ちょっとションベン」とクレメンザが車を離れている間に、後部座席のロッコがポーリーを突然銃殺!実はクレメンザは、ボスから裏切り者ポーリーの殺害を命じられていたのでした。

“仕事”が終わって、クレメンザはロッコに言うのです。
銃は置いておけ。カンノーリは取ってくれ」と。

仲間だった裏切者を撃ち殺したときに使った銃は、車の中に置いておけ。そして妻に買ってきてくれと頼まれてお土産で買っておいたお菓子は、いま殺したヤツの隣に置いてあるから、それを取ってくれ。

そういう意味です。

カンノーリが象徴する日常の生活と、仲間を銃殺する無慈悲な仕事が一行に詰まった、「ゴッドファザー」らしい名セリフです。

そんな名シーンをもじったビルボード、広告としてはどうでしょうか。

「イタリアン・アメリカン」のお店が、「ゴッドファザー」を広告に使う。しかも、尖ったメッセージを伝えたい!となると、映画の凄みというか、マフィアの怖さみたいなものがにじみ出て、ぴったりだと思うのです。

セリフの「銃」が「マスク」に入れ替わっていますが、これも秀逸。

このレストランオーナーにとっては、「マスク」が意味する「政治の介入」は、ビジネスにとって「危険なもの」と言いたいのかもしれません。

ただ、広告の成果はどうなのか?

このレストランが運営しているInstagramを確認してみると、フォロワー数は1000名ちょい。

ビルボードまで立てて、2度もニュースになっている割には、そんなに多くないフォロワー数です。しかもYoutubeチャンネルに至っては、登録者数15名。

・・・もしかして、もしかしてだけど。

客にドン引きされてる!?

集客には、間違いなく失敗しています。唯一、広告の果たした役割として、客を選ぶことに成功した、と言えるかもしれません。

余談。

クレメンザの放った「銃は置いておけ。カンノーリは取ってくれ」というセリフですが、このカンノーリの部分は役者さんのアドリブだったそうです。

そんなことを書いていたら、改めて「ゴッドファザー」を観直してみたくなってきました。

ついでに、カンノーリも食べたい。

でも、このレストランにはあんまり行きたくないなぁ。

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