労務の必須知識ーー整理解雇の4要件とは?
今、自民党総裁選の論点の一つとして「解雇規制」が大きな注目を集めています。
企業内でどの役割を担っていても、解雇に関する正しい知識を持つことは極めて重要です。
解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」「諭旨解雇」の4種類がありますが、今回は特に会社の業績悪化や事業縮小などの理由で行われる整理解雇について、必要な4つの要件を確認していきます。
整理解雇の4要件は、①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③被解雇者選定の合理性、④解雇手続きの妥当性
まず、「整理解雇」も「4要件」も法律上で正式に定められたものではありません。過去の裁判の判例や実績に基づいて確立された労働慣行上のものです*1。
そもそも、解雇についての法的な根拠の一つは、労働契約法第16条です*2。
これによれば「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています*2。
"解雇権濫用法理"と呼ばれますが、これは整理解雇にも適用されます*3。
さらに、解雇の中でも「整理解雇」は他の解雇よりも厳格な基準で有効性が判断されます。具体的には、その要件として、今回取り上げた4要件がポイントになります。すなわち、①人員削減の必要性、②解雇回避の努力義務、③被解雇者の選定の合理性、④解雇手続きの妥当性の4つが求められるのです。
「整理解雇の4要件」は要件だけでなく、企業の倫理や社会的責任も忘れずに考慮することが重要
それでは日本の人事部様が整理している内容をもとに、中身を見ていきましょう*1。
「(1) 人員整理の必要性」は、例えば倒産の危機にある場合や経営状態が非常に厳しい場合、その有効性が認められます。この際、具体的な経営指標や数字を用いて、経営状況や削減する人員数を明確に示す必要があります*1,3。
「(2) 解雇回避努力義務の履行」は、解雇を回避するために、他の手段などを駆使して最大限努力していなければ認められません。例えば、役員報酬の削減、新規採用の停止、保有資産の売却など、あらゆる手段を尽くしているかがポイントです*1,3。
「(3) 被解雇者選定の合理性」は、客観的で合理的な基準に基づいて行われるかどうかが重要です。「真面目さに欠ける」「勤勉ではない」などといった抽象的な選定基準では認められません*1,3。
「(4) 解雇手続きの妥当性」は、使用者は、労働者や労働組合に対して、現在の経営状況や整理解雇の必要性を誠実に説明する努力が必要です。労働者の理解を得るための手順を踏まない整理解雇は、他の要件を満たしていても無効とされる可能性があります*1,3。
以上、ここまで整理解雇の4要件を見てきました。
改めて押さえておきたいのは、整理解雇は経営難を乗り越える最終手段のひとつで、その実行は慎重な対応が求められるということです。ですので、これら要件はもちろんですが、経営や人事としては、企業の倫理や社会的責任も考慮しながら検討することが重要だと考えています。
(参考情報)
*1 日本の人事部「整理解雇の4要件」https://jinjibu.jp/keyword/detl/289/(2024年9月17日アクセス)
*2 「労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)」https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128(2024年9月17日アクセス)
*3 「整理解雇の4要件と実施手順|人員整理が無効とならないために」https://人事労務alg.com/roumu/retirement/dismissal-4requirements/(2024年9月17日アクセス)
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