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Episode.3 2週間寝込んだ話
「熱が……」
私が社会人1年目の、クリスマスシーズンの話。
38度の熱が出て、仕事を休んだ。
「おねにライン、しないと……」
当時は、コロナウイルスが流行り始めた年だった。
私が感染しているかわからないので、PCR検査を受けて結果が出るまで、同居の姉には同じ都内の実家に帰っていてもらおうと思った。
姉とは帰宅時間のすれ違いでしばらく顔を合わせてないし、もしコロナでもまだ感染してないと思ったからだ。
(ごめんだけど、実家に泊って、と)
姉に事情を連絡し終えた私は、スマホを置いてベッドに潜り込む。
頭が痛くて、ぼーっとしながら、私は自分が体調を崩した理由を考えた。
(コロナなのかな…いや、でも…)
理由はなんとなくわかっていた。
自分にとって大きな仕事を何とか終えて、それまで後回しにしていた小さな仕事を締め切りに間に合うように進めて…
そんな最中の発熱だったからだ。
無意識に気を張っていたのか、心身ともにだいぶ疲れていた。
社会人1年目から業務量が多く責任も重い部署に配属になり、やりがいを感じるより前に、新人としてはキツイと感じる場面の連続だった。
(このままPCR検査の結果出るまで休んだら、職場に戻ったとき仕事が山積みになっちゃう。どうしよう)
私は復帰後の仕事量を想像して滅入った。
体調不良で仕事を1日休んだのは、初めてのことだった。
職場に迷惑をかけていないか、体調を理由にさぼってると思われないか、もしコロナウイルスに感染してたらどうしようか。
いろいろなことが不安で駆け巡って、私は気づけば泣いていた。
そんなとき、玄関が開く音と一緒に、姉の呑気な声が聞こえた。
「ただいまー。無事?」
(……!!)
もう夕方だったのだ。
あれ。ラインで「実家に帰って」って連絡したのに。
「あのさ。わたし、熱あって、コロナかもしれないから…」
私は部屋のドア越しに、姉にそう言った。
すると姉は言った。
「一緒に住んでるんだから、コロナなら私もとっくに感染してるよ。これで私が実家に行ったら、逆に感染広げちゃうかも」
(正論だ…。)
姉はそれから、おかゆも作ってくれた。
「ふつーに仕事の疲れがたまったんだと思うよ。ゆっくり休みなよ」
「うん…そうかもね」
姉がそう言ってくれたおかげで、私は「休もう」と心のスイッチを切り替えられた。
それから数日後、PCR検査の結果は陰性だった。
職場に戻って、先輩たちのお陰で仕事を何とか片づけて、けど体調不良は長引いて、そのまま年末年始に突入した。
年末もほとんど寝込んでいたので、合計で2週間ほど私は寝込んでいた。
「あ~しんど…」
コロナが流行って、友達にもなかなか会えなくて、遊びにも行けなくて。
だけど仕事は毎日大変で。
体調が悪くて、気も滅入って、追い詰められていた。
だからあの日、姉が帰って来てくれて嬉しかったな…と、
振り返るとそう思ったりする。
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