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アニメが繋ぐ仲、引き裂く仲

最近毎日かわるがわるワンピースのTシャツを着てくる人がいる。
ワンピースというのはあの国民的海賊アニメのワンピースのことで、ちなみに彼が特段気に入ってきているのはワノ国編のモモの助とカイドウがお互い龍の姿でにらみ合っている、名シーンでもあり絵としての迫力もあるTシャツだ。
着用頻度は、私の体感によるとほぼ毎日。

かく言う私もワンピースはど真ん中の世代で、子どもの頃から単行本でストーリーを追い続けているので、マニアとは言わないまでもかなり好きな方だ。

ときどきあるのは、ワンピースのTシャツを着ているので「そのキャラが好きなんですか?」と話しかけてみるもののワンピース自体全く知らないケース。正直寂しい。

柄をなんとなくいいなと思って中古などで買ってきているらしかった。

しかし冒頭の彼は「好きです!!ワンピース知っているんですか?どのキャラが一番好きですか?」とかなりいいリアクションだった。

それ以来ときどきワンピーストークを交わす仲になり、彼の周りの友達もみんな好きだそうで、ときどき廊下にワンピースTシャツの輪ができるようになった。

先日はTシャツの背中部分に、半分は白ひげ海賊団の海賊旗、もう半分はエースの海賊旗という、ワンピースを知っている人なら思わず唸るデザインのものを着ていたので思わず声をかけた。

「それ、白ひげですか?」
「そうです。どうですか?」

どうですか?と感想を求められたのでいろいろな気持ちを一言に込めて「素敵です」とだけ答えた。もっといい感想があったかもしれないが出なかった。

また別日、ワンピースの最新話見ましたか!?と興奮気味に話しかけられたが、
単行本派の私はアニメを追っていなかったので、おずおずと、しかし正直に「見てないです…」と打ち明けた。

その日はとにかく絶対に見てください、とのことだったのだが、あれよあれよと見ないまま翌日になり、その日に限ってまたその彼にばったり会った。

再度「見ましたか?」と問われ、
「ちょっと昨日は時間がなくて…」と情けない言い訳をひねり出したところ
「はあ…先生、アニメ好きじゃないじゃないですか」とがっかりされてしまった。

幾ばくかの罪悪感があったので、その日の晩はなんとなくネトフリで最新話を視聴した。たしかにアツい回だった。

翌日、これで後ろめたいことはないぞという気分で一日過ごしたが、彼には別に遭遇しなかった。

まあ、なんかそういうものだよね。

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