🚲「私と自転車と子育て」② 〜ヒルクライムの魅力って？〜【ゲストコラム】おおやようこさん（全3回）

2023年5月31日 11:47

オージーケーカブト公式noteです。
オートバイ用／自転車用ヘルメットのメーカーとして、各ジャンルのライダー、アスリート、個人やチームのヘルメットをサポートし応援しています。
いまKabutoが応援する、各シーンで頑張っている「人」を通じ、その方が関わる世界をより深く知っていただきたく、ご本人によるレポートやコラムなどを掲載しています。

今回は、３歳の息子さんの子育てをしながらサイクリストとしてさまざまな活動をされているおおやようこさんに執筆いただきます。

🚵じつは・・・坂をのぼるのが好き・・・！

こんにちは。おおやようこです。自転車を楽しみ、自転車に関する仕事を色々とさせていただいております。

実は私、ロードバイクで坂をのぼるのが好きなんです。

好きが高じて数年前にNHK BS1で放送中の『チャリダー★快汗！サイクルクリニック』の番組内で結成されたチーム『坂バカ女子部』に所属していたこともあります。
（※坂が好きな人を『坂バカ』と呼びます）

今回は私がヒルクライムにハマったきっかけとヒルクライムの魅力についてお話しさせていただきたいと思います。

🗻そもそもヒルクライムとは？

ヒルクライム(hill climb)とは自転車で峠や山道などの“坂を上る”ことです。
坂を上るタイムを競う『ヒルクライム大会』も日本全国で開催されています。
ロードレースやエンデューロなどと比較すると初心者でも参加しやすく、仲間に誘われたり地元開催の大会があったりした際に参加したことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

※富士ヒル→富士山の５合目までを自転車で登るヒルクライムレース。約24キロで麓からの標高差は約1200ｍ。

🚴埼玉の平地在住民、初めてのヒルクライム

私がスポーツバイクで初めてヒルクライムをしたのは、埼玉県秩父市、秩父郡皆野町と児玉郡神川町の境に位置する城峯山（じょうみねさん）です。かつて開催されていた『龍勢ヒルクライム』のコースにチャレンジしました。

Ride with GPSのルートより。
距離は約16㎞。初めてのヒルクライムとしてはなかなかハードなコースでした。

私は埼玉県行田市で育ちました。行田は関東平野のど真ん中。生活圏には坂がありません。数分間のぼれる一番近い坂まで自宅から数十キロ。そんな私にとって自転車で坂を上り続けるのはこの時が初めての経験でした。

走ったのはスポーツバイクを購入して４ヶ月目です。８月で暑かったため、タンクトップに日焼け対策の長袖パーカー、ハーフパンツにスニーカーという虫取り少年のような服装で挑みました。愛車はBianchiのシクロクロス車のLUPO。凸凹のしっかりとしたブロックタイヤをはいていました。

当時使っていたサイクルコンピューターには地図が表示されず、スマホもまだ折りたたみ式。自宅で入念に地図を読み込み、記憶をたよりに初めてのコースに一人で挑みました。わくわくドキドキの大冒険です。

坂を上り始めてすぐ、圧倒的な進まなさに驚きました。ペダルを必死に踏んでいるのに景色は全然流れていきません。力を使っているのに風を切る感覚もなく、体がどんどん熱くなっていきます。でもせっかくチャレンジしに来たのだから…と必死に踏み続けました。

勾配が10%を超えるところは手押しで歩き、勾配が緩んだところから再乗車。その後も「ここまで来たからには引き返せない」という一心でのろのろふらふらと誰も来ない寂しい坂道をなんとか進んで行きました。

顔の周りにしつこくブンブンと飛ぶ虫に気力を削がれ、かといって振り払うほどのスピードも出せず、足元を歩く脚の長いクモを見て泣きそうになりながら坂をのぼること２時間。やっとゴールらしき場所に辿り着きました！

しかしそこはゴールではありませんでした。山の途中で分岐を間違えた私はスタート地点とは反対側に下山してしまったのです。

畑仕事をしている地元の方に道を聞き、山を半周回ってなんとかスタート地点に戻ることができました。車に戻ると脚はがくがく。疲労感で頭がぼうっとします。

これでは運転もままならないと一人でアイスを食べながら休憩している時「私、これからヒルクライムにハマるな」と確信しました。

当時23歳の社会人になりたての私は学生時代の部活動のように真剣に打ち込める事を探していました。ある程度体力には自信があったのに坂に対して全然歯が立たず体中が筋肉痛。その衝撃にワクワクが止まらなくなっていました。
たまに「今龍勢のコースを走ったらどんな風に感じるんだろうな」と想像することがあります。今度走ってこようかな・・・。

🗻ヒルクライムの魅力

ロードバイクでサイクリングをする以上、切っても切れないのが坂道です。意図的に山をのぼらずとも、ロングライドをしていれば坂のひとつや二つはつきもの。しかし坂ばかりを好むサイクリストも結構多いのです。

坂を好むサイクリストにヒルクライムをする理由を聞くと「頂上からの景色が見たいから」「達成感があるから」という答えが返ってくることが多くあります。「そこに坂があるから」「上り終えた後の下りというご褒美のために」という答えもよく聞きます。

私が感じている一番の魅力は単純明快。「気持ちがいいから」です。

坂は大抵森の中にあります。木々に囲まれ、沢の流れや鳥の囀りが響く空間をロードバイクで静かに走っていく。その瞬間が私は大好きです。そして自分の心や体と向き合うことができるのも魅力だと思います。山を上っているうちに頭の中で絡まっていた考え事が緩んでいくのを感じます。追い込んでいない時のヒルクライムには瞑想をしているような心地よさがあります。

🗻ヒルクライムをしていると・・・

ヒルクライムはカロリーの消費が激しく、体重が軽いほど楽にのぼれるため、ハマった人は大抵引き締まった体になっていきます。

「自転車に乗ると脚が太くなるのでは？」と心配する方がいますが、持久系のスポーツなので、必要な筋肉がつき引き締まるという言い方がしっくりくる体型になっていきます。

また、ヒルクライム大会は比較的接触や落車などのリスクが低く、自分のペースでトレーニングができるため、社会人になってから始めてハマる方も多くいらっしゃいます。

🗻My坂のすすめ

ヒルクライムに興味を持った方は、近所にマイ坂を見つけることをおすすめします。ヒルクライム大会のコースはもちろん、数分間でのぼれるちょっとした峠でも構いません。そこを定期的に上ってみると自分の走力や体の調子に気づくことができます。

Stravaというアプリを入れるとサイクリスト達がタイムトライアルをしている場所やその区間を見ることができますので、その中から探してみてもいいですね。

緩やかな坂、きつめの勾配が続く坂。長い坂、短い坂。それぞれの面白さがあります。
東京都内だと読売ランドへ向かう「V坂」や「都民の森」までのルートが有名でしょうか。

ちなみに埼玉県民の私がたまに走っているのは大東文化大学前の「大東坂」、県内の有名な峠「白石峠」、鎌北湖から白石峠までの「奥武蔵グリーンライン」（越生町発着にするため白石峠をゴールにしています）です。それぞれ特徴が違い、走りごたえがあって面白いですよ。

👴👵80歳になった時も坂をのぼっていたい！

若い頃は、最年少や最高記録といった言葉がよく目についていたのですが、最近は年上の先輩方の走りに目がいくようになりました。

結構走りごたえのあるイベントでも「実はとっくに還暦を超えていて…」と話しかけてくださる方がいらっしゃいます。皆さんはつらつとされていて、私も30年後にこうありたいという思いを強くしています。

先日『鳥取うみなみライド2023』に参加させていただいたのですが、魚見台という坂を上った時、あるサイクリストの方に颯爽と追い抜かれました。あとで話を伺うと、その方は怪我をされ、回復後の相棒にE-Bikeを選択されたとのことでした。自分のライフスタイルや身体に合わせた自転車を相棒にすることで自転車を楽しみ続けることができるのだと新たな可能性を教えていただいたように感じました。