“デザイナー”なんて大したことはしていない。でもそれは高尚な仕事だ。
ご存じの通り、僕はプロのデザイナーです。
こうやって名乗ると十中八九「かっこいい!」だとか「オシャレ!」だとか「センスあるんだね!」といった言葉をかけてもらえます。
ガッツリ本音を言いますが、大変嬉しいですし、全部合っていると思います。
(幼い頃、親に「謙虚な人間が将来成功するんやでぇ」と言われたのを思い出しましすが、無視します)
実際、クリエイティブ職と言われるデザイナーたちはカッコ良いですし、作り上げるデザインはどれもオシャレなものばかりです。
当然ながら、センスも持ち合わせています。
だからこそ多くの人が“なんちゃらデザイナー”を目指して今日も頑張っているわけです。
確かに、「デザイナーはすごい!」というのは事実だと思います。
誰もがなれる職業ではないですし、実力勝負の世界。
そこでプロを名乗れるというのは確かにすごいことだと思います。
ですが、僕はこの記事を通して、デザイナーを必死で目指す人たち、プロのデザイナーとして活躍して慢心している人たちに、
「デザイナーなんて大したことはしていない」
ということをお伝えしたいと思います。
デザイナーなんて大したことない
僕は今WebやらアプリやらのUIデザインを本職の仕事にしています。
僕のようなデザイナーの存在無くしてWebサイトやアプリは完成されません。
ですが、やってることは大したことありません。
Webやアプリを通して提供したいユーザー体験(UX)を考え、Adobe系のデザインソフトを使って画面のデザインを作る。
この「デザインを作る」というのが本当にどうしようもないくらい、大したことないのです。(大前提として、僕は自分の仕事に誇りを持っています。ですが、それ以前に自分の仕事が大したことないという、そんな考えも持っています。)
ではなぜこの「デザインを作る」ということが大したことないのか。
様々な制約条件、クライアントの意向をくみ取って作り上げた最高のデザイン。
それ自体は素敵ですが、そのデザインは「動き」ません。
「デザイン」は常に“見た目”だけであって、その裏に本来あるべき“機能”を実現していないのです。
例えば、メルカリのようなフリマアプリの場合、デザイナーが作成できるのはせいぜいアプリの動線や各ページの見た目の部分だけ。
仮にカッコいい「出品ボタン」をデザインして、Adobe XDを使って、そのボタンを押したら別のページに進むアクションを付けたとしても、実際にアプリが完成することもなければ、出品した情報がアプリ内に表示されることもありません。
要するに、デザイナーが作り出せるのはせいぜい上っ面の見た目だけ。
その中身までは作り出せないのです。
それを誰が作り出すかと言えば、まさにそれこそがエンジニア。
彼らが開発にかける労力はデザイナーの数倍。
これはWeb開発・アプリ開発にかかる工数を比較しても一目瞭然です。
結局、何かを作る上で一番大変で重要なのは、中身を作る人なのです。
そういった意味で、デザイナーなんて、本当に、大したことないのです。
デザイナーの存在価値とは?
今日も頑張って作業に励む全世界のデザイナー的に回す発言を繰り返してきた僕ですが、とはいえ僕もひとりのデザイナー。
デザインの魅力やデザイナーにしかできない役割については重々理解しています。
ここからは「デザイナーなんて大したことない」という前提の上で、デザイナーがどのように考え、どのように振る舞うべきかを語ります。
デザイナーとは、まさに「設計士」。
デザイナーがいなければ誰も作るべきプロダクトのイメージが掴めず、プロジェクトのゴールが不明確になるため、確実にうまく行きません。
世の中のほとんどのものは、優秀なデザイナーによって設計されています。
あなたが使っているWebサイトやアプリ、それを表示させるパソコンやスマートフォンなどの端末、お店の内装やそのお店が入っているビルそのもの、ひいては、あなたが今生活している街ですらデザイナーによって設計されているのです。
私たちが今も便利に安全に生活できているのは、デザイナーたちのアイディアやスキルがあるからこそです。
では、結局僕は何を訴えたいのか?
僕がデザイナーを目指す人たち、デザイナーという立場に慢心している人たちに訴えたいのは、
「驕るな」
ということです。
どれだけ美しいデザインを作り出せても、それを具現化したり、実際に使えるようにするのは別の人たちです。
そしてそこにかかるコストはデザインよりもはるかに大きい。
デザイナーである以上、これは事実として受け止めなければなりません。
だから、今あなたがどれだけすごいデザイナーでも(もしくはすごいデザイナーを目指していたとしても)、「驕る」ほど大したことはしていないのです。
「センスがある」などという言葉に踊らされて自分を過大評価したり、自分のデザインしたものを作り上げる人たち(エンジニア、大工さん、その他様々な職種の人たち)を見下したり。。
この世には、そんなデザイナーが多いように思います。
デザイナーはどのように振舞うべきか?
あなたが作り出すデザインは美しいかもしれませんが、ただそれだけ。
その程度です。
あなただけの力ではそれを具現化させることも、ユーザーに届けることもできません。
だから、あなたの力など大したことないのです。
無論、僕も同様です。
作り出すデザインは大抵、クライアント評価されていますが、所詮はその程度。
見た目を作るだけの大したことない、ちっぽけな存在です。
だからこそ、僕たちはもっと多くの人に感謝をするべきです。
上流でアイディアを出したり用件を決めたりする経営層やディレクター。
下流でひたすらものづくりの励むエンジニアや大工さんたち。
その人たちに感謝をし、決して上からものを言わず、常に尊敬の目を向ける。
自分のスキルに慢心せず、自分一人では何もできないことを自覚する。
そうすればきっとデザイナーという職業は今よりもっと必要とされるし、デザインが持つ力が今よりもっと社会を良くする。
僕はそう思っています。
デザイナーがやっていることなど大したことはありませんが、それは高尚な仕事です。
デザイナーにしかできず、デザイナーが社会に必要とされるだけの価値を証明してくれます。
だからこそ驕らず、自分を特別なものだと勘違いせず、常に周りを見ながら協力し合う必要があります。
僕ももちろん大したことない存在。だからこそ日々努力を欠かしません。
何かを作る上で無くてはならないデザイナーになれるよう、驕らず、共に頑張っていきましょう。
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