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メディアと報酬としてのトークンエコノミーの力

以前、社内のメディアの取材で、ブロックチェーンに関わるきっかけについて聞かれる機会がありました。この中で、以前仕事で関わっていたキュレーションの問題がきっかけであったことを話しました。

キュレーションメディアで問題が起きた時、屋台骨を作っていた側としては、悔しく悲しかった。再発を防ぐ仕組みを考えていたとき、「フェイクニュースと戦うブロックチェーンで作られた記事システムの話」を読んだことがきっかけ https://fullswing.dena.com/archives/6040

エコノミックスの側面から見たメディアコンテンツの信頼性の課題

「ユーザーにとって、公平であり、正しいと思われていた情報コンテンツが実は正しくなかった」という事があります。私が体験したこと以外にも、芸能人が行うようなインフルエンサーマーケティングなど、メディアに対する信頼性の問題は度々問題視され、社会問題とされてきました。コンテンツに何らかしらのバイアスが強くかかっていて、客観性が著しく失われているのです。

これらが起きる原因のひとつとして、広告のレベニューにより、メディアが成立しているケースがあげられます。コンテンツは事実を伝えるために存在しているのか?それともスポンサーの「広告」であるのか。この境目は時として曖昧になります。一般消費者の観点だけではありません。コンテンツの内容が、スポンサーにとって有益なのかどうか、これは重要な側面であり、下記の記事にもありますが、米抗議デモなど、市場にネガティブなコンテンツを配信する場合には、情報を発信する側にとってもスポンサーとの関係地を築く上で頭を抱える問題となります。

エスカレートする米抗議デモ:広告主とメディアが直面する、新たな危機の姿
https://digiday.jp/managing-through-crisis/as-protests-escalate-advertisers-and-media-owners-face-a-fresh-crisis/


メディアだけに限らず、私たち研究開発に関わる立場の人間も状況は同じであると言えます。研究開発にお金を出すスポンサーの意図はなんであるのか、そのニーズに答えることができない場合、研究開発を続けることはできないからです。

ブロックチェーンに期待されることに、報酬の再分配ということがあります。トークンエコノミーという観点です。

持続可能な分散型ジャーナリズムCivil構想

JosephLubin氏は、Ethereumの共同創設者で、Vitalik氏と共に、Ethereumを世界に広げる活動行なっている人物です。
SXSWのkeynoteの中で、彼がそもそもBLockchainに関わった理由であるとか、今後の展望などを語られていて大変興味深いのですが、セッションの中盤に分散型ジャーナリズム構想のことを話しています。

CIVILはトークンを利用した読者からの直接支援で、ジャーナリストや編集者等のコンテンツ制作者側に対する経済的インセンティブを創出し、新たなエコシステムを構築することで、従来のような広告報酬に頼らない「持続可能なジャーナリズム」というビジネスモデルを打ち出した。

ざっくり言うと、コンテンツに対して複数の収入源を確保し、再分布することで、スポンサーの顔色を伺いながら、コンテンツを生成することをしなくてよくなるというメリットがあります。Civil以外にも、ブロックチェーンを採用している数々のメディアがあります。

Trive(https://trive.news)
DNN(https://dnn.media)
Snip(https://media.snip.today)
Civil(https://civil.co)
PressCoin(https://presscoin.com)
Truepic(https://truepic.com) 
Alis(https://alis.to/)

ブロックチェーンを用いてメディアをつくるメリットは報酬の再分布だけではありません。検閲に対して抵抗することであるとか(内部告発者の保護)、オリジナルの文書を保存することで知的財産権を保護することなども、ブロックチェーンでメディアを作る意味と言えます。

http://reportercommunity.tech
タイムスタンプを記載することで、オリジナルの文書がどれであるのか、自動的に確認できる仕組み

Civil自体の試みは失敗したものの、次の挑戦に引き継がれる

2018年10月のCivilのトークンセールでは、目標であった800万ドルには届かず、失敗に終わったとされています。ただ、分散型のジャーナリズムという側面から、トークンを用いて、報酬体系を確立したことは、大きな社会的な実験であり、大きな前進であったと思います。社会現象にもなった位置情報を用いたゲーム、ポケモンGOですら、Field Tripに始まり、Ingressでテクノロジーを成長させてきました。そして、ある日、強大なIPとタッグを組んで大成功を納めたわけですが、位置情報アプリ全体の歴史から見ても、その歴史は長く、Foursquareなど多くの挑戦の貢献がもたらしたことは確かです。Civilの目指した構想は、次世代の挑戦に引き継がれると思います。

報酬の再分配によって描かれる未来のクリエイティブ活動

昨年、Devcon5に参加させていただいたときに、blockpunkというセッションをみました。セッション後に、自分でも下記のようにTweetしたほど、熱烈にファンになったプロダクトでした。

blockpankはアニメ映画『微睡み(まどろみ)のヴェヴァラ』などにおいて動画の視聴権が紐づいたブロックチェーントークンとして配布される取り組みを行なっています。トークンの所有者は動画をストリーミング視聴できるだけでなく、監督のオーディオコメンタリーやアートワークやデザイン素材などの特典を得ることが可能となります。このような仕組みを入れることで、これまでの出版や映画業界の構造をディスラプト(破壊)しに行くんだと言うことを話されていましたが、組織構造化された意思決定よりも、分散化された意思決定の仕組みに重きを置くことが可能になるわけです。
初音ミクのようなモデル
が一種の成功パターンであるとセッションの中で述べられていて、誰かが作ったデータに、誰かが重ねていくようなことで、さらに面白いものが作られていく世界を目指すことができます。ゲームのmod文化なども似たような事例かもしれません。ブロックチェーンの利用によって、作りたい人が心から作りたいものを作れる世界、そしてそれを収入に繋ぐことができる世界が構築されると良いと思います。

Conclution

DtoCというダイレクトなチャネルを活用したビジネスモデルは、今後益々進んでいくと思います。Amazonが小売業に変革もたらしたのと同じようなことが、先に述べたメディアであるとか、映画や書籍など、ものづくりの現場に至るまでで起き、あらゆるものの業界構造が、ここ数年で大きく変わるのではないかと思っています。


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