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書籍【チャイナテック中国デジタル革命の衝撃】読了


https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/4492503250

◎タイトル:チャイナテック中国デジタル革命の衝撃
◎著者: 趙 瑋琳
◎出版社:東洋経済新報社



中国の経済発展を牽引したテクノロジーの進化は凄まじいものがある。我々が学ぶべき点は本当に多いと思う。
中国でこれだけ一気に最先端テクノロジーが浸透したのはなぜなのか。
もちろん、リープフロッグ現象もその一因だろうし、個人情報管理の考え方の違いという面も影響があると思う。
しかしそれらを差し引いても、日本の状況とここまで差が付くものだろうか?
未だにアナログ昭和感から脱していないと感じてしまうのは、私の勝手な思い込みだろうか。
否、我々は謙虚にチャイナテックという現状を正しく認識しなければならないと思う。
著者は、ここまでのテック大国となれた理由を、政府のグランドデザインがあったからだという。
全体の計画が優れていたという「企画の差」もあるかもしれないが、ことデジタル化、テック化については、「一党独裁」というトップダウンで物事を進められる「運営面の差」が大きいことは否定のしようがない。
もちろん、トップダウンがすべて正しいということはあり得ないので、ここは文化の違いとしか言いようがないが、どうも自分の肌感覚的にも「総論賛成各論反対」「石橋を叩いて渡る」というのは、日本の悪癖の気がしてしょうがない。
(きっと自分も他人に対して、気付かずにやっている可能性があるのだが)
「白猫であれ黒猫であれ、ネズミを捕るのが良い猫だ」は鄧小平氏の言葉か。
結果を出せばやり方は問わないというのは、あまり日本には馴染まないのかもしれない。
しかし、結果を重視してこなかったからこそ、これだけ世界との差がついてしまったのも事実なのではないだろうか。
高齢化と人口減少が急速に進んでいる日本で、これからイノベーションを起こして世界を牽引していくのは相当に困難だろう。
だからこそ「どういうポジションを狙うのか」「縮小する中で国家をどう運営していくのか」という、それこそ「グランドデザイン」が非常に重要な気がする。
個人レベルではできることが限られているが、当然中国の事例で参考に出来ることは取り入れていきたい。
日本ではまだまだニューリテールと言われる「C2M」は浸透していない。
ここはもっと中国の事例を研究して、早期に取り組んでみたい分野だ。
当方の所属する会社も、通販事業を行っているため、真剣に研究したい。
そのために急いで手を付けなければいけないのが「デジタル化」か。
当然分かっているし、本当に当たり前のことであるが、これが実はなかなか進まない。
個別の事象は確かに遅々としながらもデジタル化されている。
しかしどうしても「一気通貫でのデジタル化」とならない。
縦割り組織は未だに存在するし、なぜか全体最適よりも個別最適が優先されてしまうという文化が根強くある。
部門を超えて議論していたとしても、結局は個別バラバラにデジタル化することに帰結してしまうのはなぜだろうか。
これではデジタル化の真の恩恵は受けられないし、「C2M」のような今までの延長線ではない全く新しい業態に変化を遂げることはあり得ない。
このハードルを超えたいと思っているのだが、見えない高い壁に阻まれてしまっている。
個人の気持ちだけであるが、本気で何とかしたいと思っている。
本書内でも出てくるが、現在の中国は「ABCD5G戦略」(AI・Blockchain・Cloud・Big Data・5Gのこと)を推し進めているという。
このスローガンをそのまま真似ずとも、日本でもこの5点を推し進める必要があることは疑いようがない。
このAI・Blockchain・Cloud・Big Data・5Gの全てが揃うから、「一気通貫でのデジタル化」が実現できる訳だ。
この分野も日本は立ち遅れている気がするが、国家を上げて今からでも全力で取り組まないと、本当に国防や国家安全保障まで影響しかねないとすら思ってしまう。(大袈裟ではない気がしている)
偶然なのか、かつて戦争に突入するきっかけとなった「ABCD包囲網」と語呂が似ているが、中国が「ABCD5G」を駆使して、日本との距離を縮めているのは気になるところだ。
本書内では、今だからこそ中国企業が日本進出を狙っていると、著者が説いている。
高齢化と人口減少というマーケットが縮小していく中で、なぜ日本なのかと思ってしまうが、案外そこはマイナス要因と見ていないらしい。
日中の政治的な緊張が緩和されつつあるのも一つの要因らしいが、日本は消費者の目が厳しいために「もし日本で成功できれば、他国でも成功できる」と考えているらしい。
この主張はある意味納得できる。
製品のクオリティにしても、サービス面にしても、もしかしたらUI・UXにしても、一番厳しい目を持っているのは、日本の消費者かもしれない。
ここをクリアできれば、品質は担保されたと言える。
世界のどこに持って行っても通用するということか。
いずれにしても、中国企業のようなしたたかさを、日本側ももう少し持ってもよいと思う。
BATHだけでなく、次世代プラットフォーマーのTMDPが現実的に勃興してきた点でも日本の状況とは大違いだ。
TikTokは日本でも絶好調であるが、それが中国企業だということを日本のユーザーは理解しているのだろうか?
とにかく世界は新時代に突入している。
日本だけ、かつての栄光を懐かしんでいる場合じゃない。
「昔の金メダリスト」なんて揶揄されているのを、指をくわえて黙って見ている訳にはいかない。
今からでも世界を席巻するようなジャパンテック企業が生まれてほしい。
心の底からそう思っているのだ。
(2023/9/26火)


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