ドミノ

「データドリブン」って何だ?

テクノロジーの進化によるマーケティングの変革が起きているのは皆さんご承知の通りです。例えば、Amazon EchoでAlexaと対話すれば、スマホやキーボードで文字を打ち込むこともなく、料理などの家事をしながら必要な情報にアクセスしたり、買い物したりできますし、(そんなTVCMを見ました)Amazon Goではレジを通らずに買い物ができるそうです。(私も現地で体験したいです)

技術力を武器にした独自のサービスで、ECの行動データに加え、リアルな行動や音声のログデータまでも掌握することで、独自のユーザー体験を提供することでユーザーのデータが集まり、集まったデータを活用しさらに良い体験を作る、こうした好循環を作れるAmazonの様な企業は今後も成長を続けるのではないでしょうか?マスマーケティング時代には得られなかった消費者のデータが増え、それをいかにして活かすか?多くのマーケターが注目しており、それを支援するツールも爆誕し活用される機会も増えています。

テクノロジーの進化によってデータを介して企業と顧客のステキな関係づくりがしやすくなってきています。しかし、高度化するテクノロジーに翻弄され、目的不明瞭のままデータ集めに躍起になったり、多様なKPIに翻弄されたりと、多くのリソースを浪費しているマーケターも増えてしまっていると感じています。テクノロジーの進化によって、デジタルマーケティングの「HOW」の手法や情報が増えたことでその活用に思考が偏り、マーケターが「WHAT」を考え抜いたり学んだりする機会が相対的に減ってしまっているのではないでしょうか?

筆者が小学生だった30年前には企業が得られなかったWebアクセスログやインターネットでの購買履歴、位置情報など、「顧客の行動ログを企業が得られる様になったことで、それを貯めて、分析すれば『お宝』インサイトが発掘できる」と安易に期待しているマーケターが増えてしまっている印象があります。その安易な期待値はマーケターのデータリテラシーと反比例している気がします(リテラシーが低い方ほど安易な期待値が高い)

合理的に戦略を描ける、すなわち、目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」を行うことができるマーケターが希少な存在となってしまっている様に感じています。そこで、デジタルマーケティングの「HOW」は、多くの専門書や業界ニュースに任せ、企業の経営者やマーケティング組織が最も重要な「WHAT」を定義するために、消費者理解や市場構造把握などの戦況分析から、正しく、確からしい意思決定を行う為のリテラシーとなるノウハウとしての「データドリブン」な手法をマーケターの皆さんと共有しながら共に学びたいと考えています。そうしたスタンスで書籍出版やnote執筆を行いながら、企業の戦略立案支援などの業務を行っています。

インサイト発掘の独自手法をもつデコム社の松本健太郎氏は、過去noteで「私たち(マーケター)はデータ・ドリブン・マーケティングを都合よく解釈をしていないか?」という論考を執筆され、ツイッターなどでバズっておりました。

※上記noteでは「『ドリブン』とは、ドミノではなかろうか?(中略)指標Aが倒れたら、指標Bが倒れて、指標Cが倒れて…繋がりのある指標を作り、あるいは発見するのが「ドリブン」ではないでしょうか。」という記載があり、そこからヒントを得て、本noteのキービジュアルにドミノを使用しました。また、同noteでは拙書「Excelでできるデータドリブン・マーケティングもご紹介頂いております。また、本noteの骨子はデータドリブン論考ですが、のちに紹介するイベント告知含め、筆者のマーケティング作家としてのセルフプロモートを含みます。あらかじめご報告いたします。

氏は過去スポーツ分析でNHKの番組にも出演され、経済、文化など、さまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とし、著書多数でラジオや雑誌にも登場しています。氏の作家活動は、いわば、正しいデータドリブンを探求し言及する「データジャーナリスト」といった側面を持っています。

私が考えるデータドリブンは、松本氏の論考にある様な内容であり、さらには、合理的に戦略を描ける、すなわち、目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」を行うために消費者理解や市場構造把握などの戦況分析から、正しく、確からしい意思決定を行うリテラシーではないか?そう考えています。

※マーケティングの戦略についての理解は、個人的にバイブルとさせていただいてる「確率思考の戦略論」を参照しています。(同書籍によってインストールされた知識が私の(マーケティング)戦略思考の核となっています。)

実証分析入門 データから「因果関係」を読み解く作法という書籍の冒頭にこんな一節があります。

「実証分析とは、客観的データに基づいた分析手法であり、理論研究と対をなす。社会科学では、複雑な現実社会を分析するためにさまざまな理論モデルを構築するのが一般的だけれども、理論モデルのうちいずれが現実をよりよく説明するのかは、理論モデル同士で論争しても決着がつきにくい(論理的に破綻しているような場合は別として。そのような場合、現実社会のデータに基づいて、いずれの理論モデルがより当てはまりがよいかを検証することができれば、決着をつけることができる。(中略)訴訟でも実証分析の手法は使われることがある。たとえば、上場企業であれば株価という企業価値の指標があるから、株価の変化を追えば会社法において裁判例が言う「企業価値の毀損」があったのかどうかを検証することができるかもしれない。(たとえば森田(2010))。また、賃均等で労働者の男女差別があったかとうかについても、賃金水準等の変化を観察すれば、結論を出すことができるかもしれない。独禁法でも、一定の行為によって消費者が害されたかどうを、商品市場に関するデータを分析することで判断ができるかもしれない」

以上が参照引用部分です。

「企業価値の毀損」があったのかどうか?

「企業価値の毀損」という曖昧なものを株価というデータを解析することで、金額換算でいくら価値が減少した。と具体的なものにできるかもしれません。

企業価値をブランド、商品またはサービス単位の価値として考えマーケティング(主にtoC)に置き変えてみましょう。消費者向けの商品やサービスのマーケティング実務で収益の源泉となるものはブランド価値やブランドロイヤリティいった、曖昧なものです。こうした曖昧なもの変化をデータ分析によって説明し、例えば売上など、金額換算できるものへの影響として定量化し、それを確からしい方法で行うことが重要です。

ある原因(例えばTVCM投下)があったから結果(売上の向上などの変化)が起こった。おそらく原因(TVCM)がなかったら結果(売上UP)は起こらなかった。こうした因果関係を定量的に把握することで、(TVCMの投下によって売上がいくら増えた)その変化を起こす為の原因となる施策の投資判断をデータによって確からしく導くことができます。そのための要素技術のひとつが(統計的)因果推論の分析デザインです。こうした知識について、マーケター に殆ど知られていません。しかし、こうした知識こそ、マーケターが戦略を描くために必用ではないでしょうか?

消費者も自覚していないインサイトなど、質の良い仮説を立て(ここでいう「仮説」が参照した文章の「理論モデル」に相応)それを確からしい方法で検証、または過去検証した知見により定量的に因果関係を把握する(参照した文章の「現実社会のデータに基づいて、いずれの理論モデルがより当てはまりがよいかを検証すること」に相応)

こうしたことから、戦略を描く、すなわち目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」を行うことが、データドリブンと言えるのではないでしょうか?

今、マーケターに必用な知識としてのデータドリブンは(行動データをやみくもに集めてそこからお宝を探すことではなく)質の良い仮説を導き、(例えば「インサイト」)確からしい方法で「因果関係を読みとく」ための手法ではないでしょうか?「(統計的)因果推論」を学ぼう。「交絡因子」とは?みたいな講釈じみた紹介を避けるため、エンタメ性(私も好きな人気番組ダウンタウンDXにノっかる)を加え、それら知識について噛み砕いてnoteで紹介させて頂き、note編集部にオススメを頂いたことがありました。こちらも、ぜひご覧になってみてください。

【告知】

松本氏とともに「インサイトとデータドリブン」について言及する書籍を出版予定です。(出版社や正式タイトルなどの詳細情報は現段階では公開できず)それに連動する形でマーケターの皆さまに我々の考える「インサイトとデータドリブン」について紹介し、議論させて頂けるイベントを2019年8月30日に開催致します。松本氏が「インサイトって何だ?」をお話頂き、私は本noteのタイトルにさせて頂いた「データドリブンって何だ?」についてお話し致します。


以上

ここまでお読み頂き、ありがとうございました!是非、イベントでお会いできれば幸いです!

追加情報(2023年12月18日更新)

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