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答えのない問から始まる組織開発

自身が、組織のなかで満足度高く在り続けるには、自分は役に立つのだという実感が大切だとされています。しかし、そのためには、自分にはそれができるのだという客観的指標が必要でしょう。だから組織は、従業員のモチベーションを高めるために、自己効力感と自己肯定感が高まるような仕組みを展開しているのだと理解できます。
ただし、これらは論理的であり、論理では割り切れない感情への配慮はありません。そこで、個々に異なる多様な価値観にも配慮する姿勢が、組織には求められているのでしょう。しかし価値観は、時に周囲との摩擦を引き起こすことがあります。「これは、自分のわがままだろうか?」と悩み、自身の価値観と周囲(上司)からの要求の均衡がとれずに悩むことも、少なくないのではないでしょうか。
人が組織に属する究極の目的は、おそらく生活を維持していくことでしょう。すなわち、滅私奉公も、最終的には自分のためになると信じられるからこそ実施できることなのだと思います。このような組織従属意識は、あまりにも“当たり前”と考えられるでしょう。実際、組織は「従業員は、とくに強制されなくても組織に貢献しようとする」のだと信頼し、従業員もまた、「自身に組織貢献がある限り、組織はそれに見合う処遇をする」と信頼する関係があることは、組織が組織として成立するための前提条件なのでしょう。
その意味で労働運動は、このような組織との信頼関係が崩れた結果と見ることができるかもしれません。ただし、組織に何でも可能とする力があるかのごとく錯覚し、無理難題を組織に期待する姿が見られることもあるようです。このような組織観は、逆説的に盲目的な従属を生むようにも思われます。とくに、学卒後は組織に属することが世の習いとばかりに、半ば無目的に就職し、ただ、組織のなかに在り続けようとすると、「あなたのために、組織は何でもします。だから、組織の指示には盲目的に従いなさい」という託宣を受け入れる土壌を育むかもしれません。ひょっとすると、これがブラック企業を生む温床なのでしょうか…。
おそらく、自身が組織メンバーとしてモチベーション高く在り続けるためには、その答えを組織に求めないことが重要でしょう。なぜなら、組織に答えを求めようとすることは、組織が答えを持っているということになり、したがって盲目的に組織に従おうとしてしまうからです。そうならないためには、自分のなかに、“答え”ではなく“問”を見つけることが大切であるように思われます。
論理的あるいは合理的に考えれば、「問を見つけること」と「答えを欲すること」は同義でしょう。しかし、ここに答えはありません。ただ、問い続けることのみが大切なのです。換言すれば、「今のところの、私の答え」を思考することです。この答えは“今のところ”であって、永遠かつ絶対的な答えではありません。したがって、一旦は答えを得るのですが、思考は継続するわけです。だから、“問い続ける”ことになるのです。
このとき、why(なぜ?)を問として建てると、右脳的論理思考に支配された原因追求をすることになります。思考のきっかけとしては重要ですが、それだけで解を求めると、自身を苦しくしていくでしょう。直感的かつ感傷的な左脳が優位に働いた結果に生まれる「素朴な疑問」にまで思考を進め、その答えに従うことが望ましいと言えます。つまり思考は、why→how→whatの順に行うことが良いとされます。また、whatから思考を始めると固定観念に囚われ、今までと同じ思考の繰り返しで出口を見失う(堂々巡りに陥る)ことになるかもしれませんので留意が必要でしょう。
それはともかく、“問い続ける”ためには、自身が成長していくことも必要です。自身がとどまっていれば、周囲がどのように変化しても、自分だけは変わらず、結果的に“おいてけぼり”になってしまうからです。だから、経験によって教示を得ることと、自己効力感・自己肯定感を高める習慣を身に付けることが大切になるのだと思います。おそらく、これらが育まれ、獲得されているという実感をもつことが、自身の持つ能力や可能性が現実化されつつあることの実感であり、成長実感と呼ばれるものとなるのでしょう。
だから、このようなプロセスでは、決して高いハードルを設定してはいけません。早く小さな成功体験の連鎖とすることが必要です。そのためには、昨日と同じ今日はなく、ゆえに、今日と同じ明日が来ることは予定されないということを認識すると良いでしょう。すなわち、明日という新しい時間が新たに生まれてくるという再生の連鎖が、将来を展望するということ繋がると思うのです。このようにアドホックにあることは、少し刹那的で、その場しのぎの感があるかもしれませんが、これは決して悪いことではなく、予定調和を避けることになるのではないでしょうか。
自己効力感、自己肯定感、そして価値観に基づく組織メンバーとしての自身の在り方は、結局は、自身で問続けるしかなく、それが成長実感へと繋がっていくように思われます。

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