岡島克佳

約40年のサラリーマン生活を、組織開発という視点で振り返りながら、その時々に思うことを…

岡島克佳

約40年のサラリーマン生活を、組織開発という視点で振り返りながら、その時々に思うことを綴っています。 https://office-okajima.jimdosite.com/

最近の記事

ハラスメントに怯えた“分断”を“進歩”に換える組織開発

ピストルを持った何者かに襲われたとき、相手を立ち上がれないほどに殴りつけると過剰防衛と言われます。一方で、相手を射殺してしまったときは、正当防衛となる…。この違いは、「かわいそう」にあるような気がします。前者の場合は、包帯にまかれてベッドに横たわる姿を目にすることができますが、後者の場合は、感情を寄せる対象そのものが消失しています。このことが、第三者の評価に影響を与えるのではないでしょうか。昨今のハラスメントに対する取り扱いにも、同様のレトリックが存在するように思われます。す

    • 不適切発言が人と人の関係の質を高める組織開発

      瞑想では、「呼吸を感じなさい。そして、指先、つま先へと、全身を感じなさい」と諭していきます。このとき導者は、相手(瞑想体験をしている人)が五体満足であることを前提にしています。しかし、そのことを指摘し、“炎上”させる人はいないでしょう。 多くの者に語りかけるとは、“一般論”を語ることと理解される場合が多いのではないでしょうか。そのように理解すれば、一般論はマジョリティに準じるものであって、“すべて”は対象にしていないという方便が想起されます。すなわち、それを否定するなら、全

      • 武士道に憧れずVUCAを乗り切る組織開発

        合戦に臨む武士を奮い立たせた概念は、「命を惜しむな、名を惜しめ」だったと言います。つまり、後世の人が「意味のある死だった」と認めるような死に方をすることが、武士の生きる目的だったわけです。「武士道とは、死ぬこととみつけたり」という言葉も、そのような発想から生まれてきたように思います。 人が何かを作るときには、必ず目的があります。だから、今、在るものには、すべて存在理由があるはずだと考えます。武士であれば、自身は主君のために存在していると考えたでしょう。そしてその理由とは、周

        • “タイパ”を無視して効率の良い会議を実現する組織開発

          「総論賛成、各論反対」という場面は、よく目にするところではないでしょうか。そして、各論においてディベートが行われ、誰かが勝つことになるのでしょう。しかし、ディベートで得られた結果に満足する人は少数です。負けて納得することは稀で、大抵は悔しがるものだからです。そこで、このような場合の対処方法としては、一度、総論に戻ること、すなわち、総論の根元にまで議論を遡ることが求められます。その上で、改めて各論に向けた議論を展開し、新たな方向性を見つけることが必要でしょう。 この時、対立が

        ハラスメントに怯えた“分断”を“進歩”に換える組織開発

          部下理解の呪縛を解き、部下信頼を可能とする組織開発

          突然ですが、「1+2+3+…+∞=-1/12」という等式を見て、どのように感じますか? 正の整数を無限個足し合わせた結果が、負の12分の1になることを納得できる人は、おそらく少数でしょう。しかし、この等式が正しいことは、証明されています。そして、これだけの説明で、「そうなんだ」と納得する人が少なからず存在するからこそ、アインシュタインを超える理論物理学とも言われる超弦理論の研究が続いているとも言えます。 20歳代社員の説明を聞いても「本当か?」と思ってしまう40・50歳代の

          部下理解の呪縛を解き、部下信頼を可能とする組織開発

          理屈に合わないからこそ思考する組織開発

          Microsoft は頻繁にWindowsの更新を行っています。更新メッセージに従えば、より便利になるのかもしれませんが、更新するたび、自分なりに構築してきた便利さが失われてしまうことには辟易とするものがあります。とくに、自分にとって不要な技術の更新のために、このような苦行を強いられることには抵抗を感じます。それでも、マニア化したユーザー以外は、プラットフォームがコモンとして存在していない以上、『サポート』を経済合理性で解決するために生じる不便には、抗いようもありません。この

          理屈に合わないからこそ思考する組織開発

          “憧れる”から生まれる「知識と経験」を活かす組織開発

          長嶋茂雄氏が現役を引退したのは、38歳でした。しかしダルビッシュ有選手は、42歳までプレーすることを前提にパドレスと契約しています。生命科学の進歩によるものではありますが、それでもそれを実現することは、前人未到の山中に分け入るもののようなものでしょう。 前人未到の山中に分け入るとき、「この岩は迂回できそうだ」という判断は、経験からくるでしょう。また、「この崖は頑丈そうだ」という判断は、知識からくるものだと思います。つまり、経験と知識の積み重ねが、将来を切り拓く術になるのだと

          “憧れる”から生まれる「知識と経験」を活かす組織開発

          会社を家族にしない、居心地の良い組織開発

          会社組織では、組織の一体感が欠如されてきていると指摘されるようになって久しい気がします。かつてバーナードは、「組織とは、2人以上の人間の意識的に調整された行動や諸力のシステム」であり、組織が組織であるためには、共通の目的、貢献意欲、コミュニケーションが必要であると説きました。そのため、組織の一体感の欠如に対する処方箋も、ここから発想されてきたように思います。 共通の目的が曖昧になっているからだとして、ビジョンやミッション、そして最近ではパーパスを明らかにすることが流行りまし

          会社を家族にしない、居心地の良い組織開発

          破壊からレジリエンスを生む組織開発

          東京ディスニーランドには、完成がないと言われます。完成してしまえば、あとは衰退するだけと考えられるからです。しかし、土地には限りがあります。だから、破壊と再生を繰り返すことになるのでしょう。開業当初の東京ディズニーランドは、今の東京ディズニーランドとは別物です。それでも、そこは間違いなく“東京ディズニーランド”なのです。同様のことは、例えばコカ・コーラについても言えます。コカ・コーラの味は、発売当初と今では、全く違っています。それでも、いや、だからこそ“コカ・コーラ”であり続

          破壊からレジリエンスを生む組織開発

          “中間管理職”の悲哀を権限移譲で“やりがい”に換える組織開発

          やらされ感を払拭し、自律的に行動する人材を育成したいというニーズが、多くの組織に内在しているように思われます。そこで、なぜ、自律的に行動しないのかという問が生まれてきます。ひとつの理由として、単純に仕事が面白くないことを挙げることができるでしょう。 では、仕事を面白くするには、どうすれば良いのでしょうか。何につけ、自分でやってみれば面白くなるのではないでしょうか。子どもに「砂山を作って」と言われたときは、「面倒くさいなぁ」と思っても、いざ、自分で作り始めると子どもそっちのけ

          “中間管理職”の悲哀を権限移譲で“やりがい”に換える組織開発

          意思決定された”成功”は”成長”を止めないことを体現する組織開発

          「成功は復讐する」とは、柳井正氏の言葉で、“勝って兜の緒を締めよ”と同義のように使われています。しかし、それ以上の含蓄があるように思われます。例えば、オリンピックの出場メンバーを決めるマラソン大会で、天候不順のために派遣標準タイムは狙わず、着順に的を絞って走った代表候補選手がいました。結果、優勝はできませんでしたが、自己記録は更新しました。さて、彼にとってこの大会の結果は、成功だったのでしょうか、それとも失敗だったのでしょうか。 当たり前の(小さな)目標の達成を繰り返すこと

          意思決定された”成功”は”成長”を止めないことを体現する組織開発

          ワクワクできることを“成長”と定義する組織開発

          挑戦とは、自分を超えようとすることと言えるかもしれません。つまり、自分を知った上で設定する高みに挑むことです。これに対し、自分を知らず高みに挑むのは無謀と言われるのでしょう。「大谷翔平選手のようになりたい」と言う小学生に、正しいボールの握り方を教えたとします。大抵の場合、そう言われた小学生は素直に従うでしょう。彼らは、自然と自分を知っているのです。だから、成長できるのだと思います。 しかし、成長するにつれ、自分を知ろうとしない傾向が強まってくるように思われます。それは、自分

          ワクワクできることを“成長”と定義する組織開発

          自分の「人的資本」を、備えるのではなく、見つけようとする組織開発

          かつて、「2番じゃダメなんですか?」と研究開発の本質が国政で問われたことがありました。1番になることを前提にすれば、「これだけの人と時間と予算が必要だ」と説明することはたやすく、また、受けて立つ方もそれが基準になるため、交渉がたやすくなります。しかし、本来はなぜ1番でなければならないのかが、議論の出発点にならなければなりません。にもかかわらず、1番になる理由、すなわち本質に触れないことが、最も合理的な議論になっているような錯覚を生みます。これは、本質を避けた議論が横行している

          自分の「人的資本」を、備えるのではなく、見つけようとする組織開発

          令和版『巨人の星』を模索する組織開発

          『エンゲージメント』とは、組織メンバーの組織に対する“愛着心”や“思い入れ”を表すものとされています。昭和レトロな表現をすれば“愛社精神”となるでしょう。一方、昨今は、個人と組織が一体となり、双方が双方の成長に貢献し合おうとすることと理解されているようです。ここで「貢献し合う」とは“give and take”を想起させ、合理的に捉えている姿が伺えます。これらをまとめると、サービス残業や過大なノルマと言った要求も“ブラック” な対応ではなく、ただ、メンバーの成長を願ってのこと

          令和版『巨人の星』を模索する組織開発

          「今日のために明日がある」と思える組織開発

          いつの世も、マネジャーの苦悩は、メンバーが思い通りに動かない(結果を出さない)ことにあるのではないでしょうか。この苦悩の発端は、「組織メンバーは、既に在る」という視点に立てないことにあるように思えます。つまり、デザインすべきは組織であるはずなのに、いつの間にか人(メンバー)をデザインしようとしているがために、苦悩が生じているように思えるのです。 多くの場合、個々のメンバーを「こう在るべき」と意味付けしてしまっているのではないでしょうか。しかし、いくらマネジャーが意味づけをし

          「今日のために明日がある」と思える組織開発

          早く決めようとする合理性から逃れる組織開発

          需要と供給が、常にバランスを取ろうとするとは、経済学の基本的な考え方です。例えば、安く買いたいという需要に対して、安く売るという供給が成立すると市場は回ります。しかし、モノを売るという行為に対する需要と供給は価格だけではありません。応援消費や推し消費などは、価格に左右されません。マーケティンの基本の1つであるブランド戦略も、原則は脱価格です。 「どうしたら売れるか?」という会議では、このような多方面の意見が出てきます。しかし、不確定要素が最も少なく、最も自身がコントロールで

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