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自分の「人的資本」を、備えるのではなく、見つけようとする組織開発

かつて、「2番じゃダメなんですか?」と研究開発の本質が国政で問われたことがありました。1番になることを前提にすれば、「これだけの人と時間と予算が必要だ」と説明することはたやすく、また、受けて立つ方もそれが基準になるため、交渉がたやすくなります。しかし、本来はなぜ1番でなければならないのかが、議論の出発点にならなければなりません。にもかかわらず、1番になる理由、すなわち本質に触れないことが、最も合理的な議論になっているような錯覚を生みます。これは、本質を避けた議論が横行している一因であるように思えます。

組織運営においても、1番になるには、自分の組織が1番にならなければならず、自分の組織が1番になるためには、自分が1番ならなければならないと、簡単に“自分”に落とし込めるため、1番という目標は組織メンバーを動かしやすくします。そうは言っても、人数が多くなれば本質に疑問を持つメンバーも現れるでしょう。そこでリーダーが、周りはどうあれ、自分は一番を目指すという強い意志を持ち、それを示せることができれば、組織は盲目的にそれに従うのかもしれません。

このような体制をトップダウン型と称するわけですが、そもそも、組織を動かす最初の一歩はトップダウンとなるため、対するボトムアップも、それに付随する行為に過ぎないと見ることもできるでしょう。ただ、文字通り“トップ”が発する指針だけが、これに該当するわけではありません。昨今の『パーパス』『ビジョン』なども、トップダウンの変形とみることができます。ただ、「1番」のようにわかりやすくないため、組織力が分散しがちになるだけとも言えるでしょう。

このように組織の動的エネルギーを捉えた場合、リーダーに必要なことは、“失敗”を認めることでしょう。「1番」が目標であれば、トップを取れなければ“失敗”となります。ただ、わかりやすい目標ではない場合、成功の範囲は曖昧となります。そのため、「成功とまでは言わないが、失敗でもなかった」と自分を納得させるケースが増えてきます。人は“失敗”から学び、成長すると考えるのであれば、このようなリーダーに期待は持てないでしょう。

ただ、“失敗”したとき、諦めず、やり直しを含め再起の方法は必ずあると思えることも重要です。なぜなら、「1番」はたった一人しかおらず、99%の人材は“失敗”するわけですから、失敗が再起不能となってしまっては、組織はすぐに疲弊してしまうからです。そこで、困ったときは、困った事態そのものにフォーカスするのではなく、どこかに希望を見出だすこと、換言すれば、自分で自分に期待できることが、この時の助けになるのではないでしょうか。

しかし、出発点である目標が、外からあてがわれたものである限り、このようなリーダーを求めることには限界があるように思われます。したがってリーダーは、自分自身の目標を明確に持つことが必要でしょう。そして、その目標達成の一里塚として、目の前の組織目標を位置づけられることが重要だと考えます。これが、個人の目標と組織の目標の合致と言われるものであるよう考えます。

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