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意思決定された”成功”は”成長”を止めないことを体現する組織開発

「成功は復讐する」とは、柳井正氏の言葉で、“勝って兜の緒を締めよ”と同義のように使われています。しかし、それ以上の含蓄があるように思われます。例えば、オリンピックの出場メンバーを決めるマラソン大会で、天候不順のために派遣標準タイムは狙わず、着順に的を絞って走った代表候補選手がいました。結果、優勝はできませんでしたが、自己記録は更新しました。さて、彼にとってこの大会の結果は、成功だったのでしょうか、それとも失敗だったのでしょうか。

当たり前の(小さな)目標の達成を繰り返すことが、唯一、“とんでもないところ”へ自身を導くとは、『Early Small Success』(早く小さな成功体験)の考え方です。この考え方のポイントは、成功することよりも、成功後すぐに次の目標を立てることにあります。なぜなら、成功することによってでしか見ることのできない世界があるからです。また、成功することによって自分の限界も理解できます。すなわち、成功の直後は、「できる」と思える次の目標を見定める絶好の機会となるのです。そして、それが成功の連鎖という経験に結びつくのです。

しかし、成功の直後は、一拍の間(休憩)を入れてしまうことが多いように見受けられます。ここで、“自分へのご褒美”をあげる人もいるでしょう。ところが、このようなスキを与えてしまうと、見えていたはずの世界がぼやけ、「もう、いいかな…」というモチベーションダウンを起こす危険性が生まれます。つまり、成功が成長を止めてしまったり、場合によっては、却ってレベルダウンを引き起こしたりする(過去の成功体験にしがみつくような状態になる)こともあります。成功という晴れやかな体験が、いつしか周囲からの侮蔑へと変わってしまうこともあるのです。これは、それが“成功”か否かが、事を成した直後に、次の目標をモチベーション高く設定し、行動に移せたかどうかで決まることを示しているとも言えそうです。

さらに柳井氏は、「成長は3倍まで」と続けます。これは、ある一定の成功体験を積むと、同じことをしても成長せず、むしろ落ち込むことさえあるような時期、いわゆるスランプに差し掛かることを指していると思います。そこで柳井氏は、3倍が射程に入ったら(成功が続いていると感じた時にこそ)、過去を全否定し、一から仕事のやり方も、組織も作り直すプランを立てておくことが重要だと説きます。ただし、それに耐え得る基礎体力があるかどうかを見定めながらとも指摘します。そして、このような成長を止めない十分な配慮をしていると、「どうしたら良いのだ…」という壁に突き当たった時に限って、飛躍のチャンスがくるのだとも語っています。

今回のオリンピック出場を狙える位置に居ながら挑戦しなかった代表候補選手は、自己記録更新をどのように捉えているのでしょうか。「もう、いいかな…」と思っているのでしょうか? それとも、すでに過去を全否定し、一からやり方も何もかも作り直すプランを立てた上で(4年後のオリンピックを見据えて)の自己記録更新だったのでしょうか? いずれにしても、あの結果を、彼が“成功”と位置付けていて欲しいと願うばかりです。

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