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出世してほしいな、と思える人の特徴

世間の会社の人事発表はいつごろだろう。

一般的には、役職者の人事であれば発令日の2ヵ月前くらいだろうか。一般社員であれば、その前月が多いと思う。

金融機関だと発令日の間近に辞令が出るとも聞くので、業種業態によって、知らされるタイミングには差があるのかもしれない。

前職の会社では、4月1日が発令日なので、2月下旬にマネージャーなどの役職者の人事発表があって「ついにあの人が課長!」とか「あの人が拠点の責任者に!」とか、辞令の載った社内イントラページをながめては周囲と盛りあがっていた。

ぼくは前職でコーポレート部門に属していたけれど、自分たちコーポレートの人事異動は事前に聞き及んでいることが多かったし、そもそも人が少なくてサプライズ人事もほぼ少なかった。発表当日に盛りあがらないのである。

一方、現場の人事発表は出てみないとわからないし、自分たちとは別世界があるからこそ無責任に盛りあがれる気安さがあった。プロ野球のドラフト会議を視聴する心持ちといったらいいだろうか。

ぼくはコーポレート部門の中でもいくつか部署を転々としたが、業務購買をつかさどる部門にいたときが、いちばん人事発表を気にしていた気がする。

業務購買の部門は、もっぱら受発注業務と売上・仕入伝票をチェックするところで、発注と売上の処理段階では、営業部門のマネージャーと対峙・折衝することもしばしばあった。

コーポレートの人間から見て出世してほしいな、マネージャーになってほしいな、と思える人物の評価と、現場の評価はかならずしも一致しない

たとえば、営業マンとして荒稼ぎする、とか、自社の商材に精通している、とか、お客さんと心をつかんで離さない、とか、そのような能力はコーポレートの人間からすると、実務でメリットに感じる場面がないので、わりとどうでもいい。

もちろん、そとから売上や粗利を稼いでくる能力はとても重要で、そこから自分たちコーポレート部門の給与も出ており、ありがたい存在だとは思っていた。ええ、もちろんですとも。

ただ、この記事では、上記のような建前を脇に置いた本音として、出世してほしい人と思える特徴を挙げてみたい。


①事務職に信頼されている人

コーポレート部門の人間からすると、社内手続きをおそろかにする人は注意が必要である。要チェック人物は脳内でブラックリスト化して日々更新していた。

社内手続きをおそろかにする人がマネージャーになると、配下の社員たちに伝播する。現場にとって社内手続きの優先順位は低い。それはある意味で健康な証拠でもある。現場のパワーの大半が手続きにさかれる会社は危険だ。

ただ、現場部門にも社内処理のために書類を集めたり、ファイリングしたり、部門のもろもろの庶務をこなす事務職がいて、おろそかになった社内手続きのしわ寄せの波は、事務職のひとびとがおっかぶることになる。

そのためコーポレート部門の観点だけみれば、現場の事務職の勤務状態は、社内手続きが適正に保たれているのか否かをはかるサインになりうるので、事務職の退職とか不満の声は意識的に気にかけていた。

社内手続きを軽視しない社員は貴重だし、しぜんと事務職に信頼されるので、そういう人が出世して良い影響力を持ってくれることが望ましい。

②後輩のフォローができる人

マネージャーになる前から後輩の面倒をみたり、フォローをしている社員は、出世してほしい、と思える人物像だった。

たとえば、内線で問い合わせの電話がかかってくる。手続きの質問で、こちらはそれに答える。そのとき、電話ごしで周囲の誰かに共有している様子が感じ取れる。後輩から質問されたので、こちらに電話してくれたのだろう、と察せられる。

「業務部門の○○に聞いてみろ」とアドバイスを提示するのではなく、いったん質問を引き受け、いっしょに解決まで取り組む。そういう所作をするかしないかは、わりと気になるところだった。

今でも思い出すエピソードがある。ある日、営業の中堅社員がコーポレート部門のフロアに来て、法務部門の人間と1対1の打合せをしていた。遠くで聞くかぎり、複雑な海外案件の処理で、急を要するようだった。

その法務の人間は、やや冗長な話をするタイプで、営業の社員がしびれを切らさないか、端から見ていてハラハラしていた。しかし、営業社員は適度なタイミングで話を整理したり、軌道修正をはかりながら結論に導いていた。

そして、後で聞いたところ、海外案件はその社員が担当ではなく後輩のものだった。後輩が、急な体調不良かなにかにより法務と話を詰めきれなかったので、代わりに巻き取ってクローズさせたのだった。

「課長でもないのに立派なもんやな」と感心したことを覚えている。

③「あわよくば」に時間をかけない人

数字をつくることは難しいもので、決算期末になると営業部門が売上計上の可否を相談しに、コーポレート部門のフロアにやってくる場面があった。

不正会計に手を染めようとする悪人こそいないが、みんな必死なので、どうにか売上計上ができないかと詰めよってくる。

コーポレート部門として悪しき前例をつくることは避けたいが、妥当性があれば監査する会計士に確認ができるので、慎重に正確に情報を把握したい。

こういうとき、日ごろのブラックリストが役に立つ。正確に情報を出してくれるタイプと、都合のよい情報だけ抜き出して提示するタイプがいる。話を鵜呑みにしてはいけない場合がある。

そして、結果的に「売上計上は無理ですわ」と回答しても、いやそれならこの場合はあの場合はと粘る社員がいる。「あわよくば、を期待しないでくれ。その粘りは社内ではなく営業活動に向けてくれ」と心で唱えていた。

一方、丁寧に説明すれば、理解してすんなりと引いてくれる人もいる。こういう人は、その後に同じ案件があっても「あわよくば」を期待して問い合わせることも無く、誠実で信頼に足る人物だ、と思える。

まとめ

総じていえば、社内手続きに対して理解と配慮があり、指示されるまでもなく周囲をケアしようとする誠実さと知性を持った人、になるだろうか。

現場は社外のお客様や仕入先、パートナーにパワーを割くべきで、社内を見て仕事をする必要はない。ただ、社内だからといって義務をおろそかにしたり、処理をないがしろにすると、人間として腐敗や堕落につながると思う。

以上、限られた視点になるが、コーポレート部門から見て出世してほしいと思った現場の人物像をあげてみた。


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