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Yellow Magic Orchestra「Solid State Survivor」

1979年発売通算2枚目のアルバム。前作はどちらかというとフュージョン寄りなテイストだったのに対し本作はフュージョン要素はかなり薄くなり、全体的によりニュー・ウェイヴ色が濃く出たテクノの代名詞のひとつと呼んでも過言ではないアルバム。アルバムの前半はインスト、後半は歌ものという構成なっている。
もはや音楽の教科書に載っても不思議ではないほどの歴史的名盤であり、本作がいかに凄い作品かというとNHK BSの番組でこのアルバムで丸々1時間特集を組まれるほどで、本作に衝撃・影響を受けて多くのフォロワーを生み出し、ある者達はミュージシャンとして音楽の道へ進むきっかけにもなり、YMO自身も一世風靡するきっかけとなったアルバムであろう。言い過ぎかもしれないが、神の書物ともいってもおかしくない作品だ。
流石に今の若者達のほとんどが聴いた事がない、そもそもYMOすら知らない人も多い今日、是非とも若者におススメしたいアルバムだ。

メンバー
坂本龍一・・・キーボード、ボイス
高橋ユキヒロ・・・ドラム、ボイス
細野晴臣・・・ベース、キーボード、ボイス

収録曲

TECHNOPOLIS / テクノポリス
作曲 坂本龍一
坂本のヴォコーダーを通した「トキオ」という第一声からスタートするYMO代表曲の1つである曲。このアルバムの始まりに相応しい近未来チックなサウンドが特徴。坂本が「筒美京平がYMOの曲を作ったらどうなるかをコンセプト」にして作られたらしい。また、坂本曰く「単に売れる曲を書いてやろう」という事で出来た曲でもあり、見事に的中している。
メロディ、ベース、ドラムの音など1音1音が国宝級といってもいいだろう。個人的に好きなのはBメロ(それともCメロ? あまり詳しくないです…)にあたる0分43秒あたりのメロディが好き。
後にシングルカットされ、シングルはアルバム版とは大きい変化はそんなにないがヴァージョン違いとなっている(演奏時間が数秒短い、フェードアウトの最後の部分 etc)。

ABSOLUTE EGO DANCE / アブソリュート エゴ ダンス
作曲 細野晴臣
沖縄音楽とディスコミュージックの融合的なナンバーで全体的にピピンと飛ぶようなサウンドが特徴。ベストアルバムにもあまり収録される事が少ない曲だが一度聴けばかなり印象に残るだろう。個人的にディスコというよりは祭りのような感じで男たちが阿波踊りのような感じで踊るイメージが浮かぶ。合いの手は歌手のサンディー(第2シリーズのルパン三世のエンディング「ラヴ・スコール」などを歌ってた人)によるもの。
この曲は発表当時のライブでは披露されなかったらしいが、比較的2010年代以降のライブで「Cosmic Surfin'」の流れからこの曲へ移行するパターンが多く最近になって演奏されていた。

RYDEEN / ライディーン(雷電)
作曲 高橋ユキヒロ
チッチキチッチキなイントロから始まる疾走感溢れるナンバー。YMOを知らない人でも間違いなくどこかで聴いたであろうYMO最大のヒット曲。幸宏が鼻歌で歌っていたところを側にいた坂本がメモして書いた話が有名だが、幸宏が家で作ってスタジオに持ってきたという話もあるのでどちらが本当かはあまりはっきりしていない。
個人的には特にここが好き、という部分的な好きというのがなくこの曲に対してはすべて素晴らしすぎると感じる。有線放送等どこからか聴こえてくるとテンションが異様に上がる。
2007年には「RYDEEN 79/07」というタイトルでセルフアレンジされたものが配信された。こちらは原曲と違い、音数が少なく(「Sketch Show」の曲に近い)トイピアノが用いられているのもあってか、どこか哀愁ともの悲しさが漂うこれはこれでちょっと新しいイメージの曲といったところか。
余談だが、小さい頃からこの曲をよく耳にしていたが具体的にどのバンドの曲なのか長年分からなかったが、高校生辺りになってYMOというグループの曲と知った。本格的にYMOを聴くきっかけとなったのが「電気グルーヴ」関連でメンバー全員がYMOに触発されたという話を聞いてからだった(同じ理由でKraftwerkやNew Orderも)。

CASTALIA / キャスタリア
作曲 坂本龍一
今までの流れを止める様なシリアスでスローテンポな落ち着いた曲。映画やゲームのサントラにありそうなドラマチックなサウンドでダークな雰囲気がある。坂本が得意とするピアノの音が魅力的。ベストアルバムに収録される事がほとんどなく、YMO散会後に発売されてある程度多く収録されているベストアルバム「SEALED」にも、1992年にボックスセットとして発売された「Techno Bible」にも収録されていない。それとは逆にライブでは結構披露される事が多かった。

BEHIND THE MASK / ビハインド・ザ・マスク
作詞 クリス・モズデル
作曲 坂本龍一、高橋ユキヒロ
こちらもYMOの代表曲だが坂本のソロでもシングルとして発売されたり、ライブでも披露される事が多いため、両者の代表曲とも捉えられる。
イントロになんともいえぬ美しさを感じる。うにょうにょしたような電子音があちこちで聴こえてくる。歌詞はすべてヴォコーダーを用いて坂本が歌っているが、散会ライブや坂本のソロライブでは生の声で歌っている。
細野が当初この曲に対して「教授にしては普通で当たり前の曲」としてあまり印象がなかったらしいが、後に曲の素晴らしさを認識できなかった自分に対してプロデューサー失格と話していたのは有名な話。作曲においては坂本の名前のみ記載される事が多いが、メロディは幸宏との共同である。2003年発売のベストアルバム「UC YMO」にはCM ver.も収録され、歌がない短いデモ版のようなヴァージョンだが、坂本的にはこっちの方が好みらしい。

DAY TRIPPER / デイ・トリッパー
作詞・作曲 レノン=マッカートニー(ジョン・レノン、ポール・マッカートニー)
ビートルズの同名曲をアメリカ出身のバンドであるDEVOの影響を受けてDEVO風味にカバーした曲。原曲と聴き比べるとかなりテクノアレンジされ、時差聴こえてくる震わせた感じのみょみょみょーんとした音がちょっと可愛らしい。幸宏の声は加工されている。
シーナ&ザ・ロケッツの鮎川誠がギターで参加。

INSOMNIA / インソムニア
作詞 クリス・モズデル
作曲 細野晴臣
細野が不眠症のなか作られた曲で、何とも言えぬリズムにもやもやとしたテイストのサウンド、中盤から登場する死んだ星が妙な音をたてて次々と降るような旋律、どこか沖縄風味な音色が登場したりとなんとも不思議な味わいをした曲。細野がヴォコーダーを用いて歌っており、曲の終盤に差し掛かるあたりでようやく登場する。凄く疲れているんだけど何故か寝付けない苦悩なイメージが浮かぶ。

SOLID STATE SURVIVOR / ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー
作詞 クリス・モズデル
作曲 高橋ユキヒロ
ラストはアルバムの表題曲でまさにYMO流のニュー・ウェイヴといった感じの曲。この曲にも鮎川誠ギターで参加している。軽妙なリズムで曲調も軽やかで明るいが、歌詞が少し物騒で曲の途中からバックで聴こえる音声はアナウンサーが今まさに地球最後を知らせ、次第に周囲にいた人間達が咳き込んだり精神が可笑しくなって笑いだすような感じでなかなか恐ろしい内容、所謂明るい狂気といったところだろうか。この曲もDEVOの影響を大きく感じる。

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