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松村北斗の才能が詰まりに詰まった90分間

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7月24日(土)23:30。
私は家で爆睡していた。友人宅に遊びに行き、極上のハンバーグと豚汁をご馳走になり、お腹もいっぱい、胸もいっぱいで、帰宅して即ベッド。

そんな呑気な私にラジオの開始を知らせる通知音がスマホから鳴る。おぉ、もうそんな時間か、とおもむろにradikoを開き、聴き始めたのは『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』。SixTONESのメンバー田中樹くんをメインパーソナリティに、週替わりで他のメンバーが出演するこのラジオ。ここ最近はメンバーたちの出演も3週間前に1周回って、メンバーの入れ替わりも前半のターンとなっていた。私の推し松村北斗は大抵いつも後半。その周の最後か最後から2番目、ということが非常に多い。「忘れた頃にやってくる松村北斗」といった感じだ。今日は北斗くんじゃないんだろうなぁ、と眠気まなこで開いたradikoから流れてきたのはまさかの松村北斗の声だった。

おっと、いつもより早いターンでのご登場じゃない!?と思いながら、まだ眠っている頭で聴いていた私だが、この日のラジオの90分間は松村北斗の魅力が詰まりに詰まった90分間だった。眠気がふっとび、1:00を迎える頃には松村北斗への愛情で息ができなくなっていた。こんなに愛おしい人がこの世にいるのか?と自問自答しながら聴いたその後の「オードリーのオールナイトニッポン」はほとんど記憶にない。
松村北斗の真骨頂と言ってもいいのでは?と思うほどの魂のラジオをここに残しておきたい。(ちなみに冗談でなく既に10回は聴いている)



ラジオに詰まった松村北斗の4つの魅力

1.一貫して存在するトークテーマ

SixTONESのオールナイトニッポンは90分の間にいろいろなテーマが取り上げられ、コーナーも行われる。多くの場合、冒頭に最近SixTONESで起こったことや時事的なテーマを取り上げ、その後、その日来ているメンバーの近況トーク、コーナーを1〜2個やるという流れだ。取り上げる話題やコーナーによってトークテーマが変わるのだが、この日の松村北斗のトークの中には静かな川のようにある一つのトークテーマがずっと流れていた。

それは「静岡の田舎町から出てきた自分がいつの間にか東京という街で26歳の大人になっていた」というものだ。

冒頭の蝉を触れるかというトークから始まり、フリートークまで一貫してこのトークテーマが流れているのだ。打ち合わせしてできたものなのか、あるいは偶然の産物かはわからないが、虫が触れなくて東京にしか住めない松村北斗、定食屋に入り、東京の街を見下ろす松村北斗、定食屋から提供されるもの全てに東京らしさを感じ取る松村北斗、10代の店員に対して、26歳らしく振る舞おうとする松村北斗、ご飯のおかわりという行動を笑われたと感じる松村北斗、東京は嘘に溢れていると感じる松村北斗。

すっかりこのANNの中では細かいことにぐちぐちとこだわる捻くれ者、ちょっと面倒臭いキャラになっているが、そんな彼らしく今回は東京という街、そして先月26歳という年齢を重ねた自分を多面的に捉えて表現しているのだ。

私自身も田舎出身なので彼の言いたいことはなんとなくわかる。住んでしまえばそんなことはないとわかるのだが、東京という街はどこか冷たく、人と人の間に距離があり、気取っているイメージがある。きっと彼もそんなイメージをかつて抱いていたのかもしれないし、今も抱いているのかもしれない。そしてそんな東京の街で気付けば大人の階段を登っていて、東京の街に自然と馴染んでいる自分を俯瞰しているように感じた。

冒頭にそんな話題が出たからその名残を自分のフリートークでも引っ張っていたのかもしれないが、もしそうだとしたら相当頭の回転が早く、高いトーク力を見せつけられたような気がする。逆に本当に心の底からそう思ったり、感じたりしているのであれば…それはそれで自分の哲学を持つ松村北斗らしくて愛おしいと思うのである。



2.貫き続ける自分の哲学と価値観

松村北斗というのは自分の置かれている状況を客観視することに長けた人である。それはこれまでの彼の発言やエッセイから十分に読み取れることであり、時にそれは謙遜と捉えられることも多いが、私の中では謙遜というよりかは「達観」だと感じることが多い。芸能界、ジャニーズという普通の世界とは勝手が異なる世界で生きることを望み、幼少期からそこに身を置いた彼はこれまでいろんな達成感と幸せ、不都合と葛藤に折り合いをつけて生きてきたことと思う。そんな彼だからこそ、周囲の人間や自分の周りに溢れている情報に迷わされることなく、自分の価値観や意思、道理・真理をしっかり見極めているように思う。周りに流されることなく、踊らされることなく、どしっと構えている、そんな印象を受ける。


この日のラジオの中で先日松村北斗が1位を獲った「【2021年上半期】ViVi国宝級イケメンランキング」について話があった。普通であれば、ViViというトレンド感度の高い女性たちが注目する雑誌が集計しているイケメンランキングで1位を獲ったら素直に喜ぶはずである。


しかし松村北斗はViViの取材においても、

「今回の1位は……粘り勝ち?地道に頑張っていたら順番が回ってきた、という印象です。(中略)『本当にこの人を1位に選んでいいの?』という葛藤を乗り越え、投票してくださってありがとうございます。ただ、前もってお伝えしておきますが、2連覇して殿堂入りすることは不可能ですから。僕はあくまで王道イケメンではないですから。逆に万が一殿堂入りしたら謝ります!!」

と話していたが、ラジオでも、


「じゃあ気付いたこと言おうか?平野紫耀、永瀬廉、殿堂入りしたね?殿堂入りして、だからもうランキング入んないの。じゃなきゃおかしいでしょ?俺が1位なの。だからその今、なんかこう、イケメンとしてパッと見つけられた2人が今旅立っていった、残り…カス…みたいなのが今。だってさ、あの投票のさ、2位・3位のさ、なんか顔ぶれなんとなく見たでしょ?カッコいいじゃない…!」

と、自分が1位になったことを受け入れ、喜びつつも浮つくことのない姿勢が印象的だった。

彼としては今回のこの評価は嬉しいものでありながらも、自分の哲学や判断基準で捉えているからこそ、冷静に動じず、静かに噛み締めているんだろうと感じた。

また一方でこの自分の哲学と価値観から生まれるこだわりを強く持っていると感じたのが、フリートークでのエピソードだった。お店に行く前に事前に調べて「とろろ食べますよ」と心に決めて挑む姿、日々の自分の仕事の頑張りからご褒美に少しお高いランチを食べること、とろろの食べ方、小鉢への情熱、お漬物は小鉢なのか論争、好きなものは最後に残すこと、天ぷらとお蕎麦の汁兼用が許せないこと。とにかく彼にはこだわりや譲れないポイントがあるのだ。そしてそのポイントが意外にも若者らしくない、渋いものであることが多い。一見「何言ってんだよ!笑」と笑いのネタになりうる、それこそが松村北斗の人間性に奥行を出している。

自分の哲学や価値観において、強いこだわりを持ち、それを貫くことで、どうなろうとも動じない心を持ち、自分を達観する松村北斗は無限に掘り起こしたくなるようなやみつきで気になる存在なのである。



3.豊かな文学的才能

現在この『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』では、8/11の5thシングル『マスカラ』のリリースに向け、「SixTONES土曜ラジオ劇場『マスカラ』」というコーナーをスタートしている。これは『マスカラ』の歌詞にある「凡庸なラブストーリー」から着想を得て、『マスカラ』にちなんだ6話完結の一つのラブストーリーラジオドラマをSixTONESが1話ずつリレーで執筆し、朗読形式でお届けするというものである。

この回は松村北斗のターン。
日頃から読書が趣味で文学に触れていたり、エッセイを書いていたり、ドラマで幅広い役を演じている彼だからこそ、まさに今回の企画の本丸。メンバーもファンも「松村北斗はどんなものを書いてくる?」と期待を募らせていた。

そして実際に松村北斗が書いてきたものは予想をはるかに超えてくるリアリティと繊細さが込められたものだった。

第1話をジェシー、第2話を森本慎太郎が担当し、第3話を担当することとなった松村北斗。2人が書いた内容をこのように振り返る。


「(ストーリーの内容は)まぢだったけど、なんかその…凡庸なラブストーリーって、この世に溢れるってことじゃん?よくドラマ・映画で見るこの世にない素敵すぎるラブストーリー始まってるなとは思った。難しいし、意外と2人の間で視点があっちこっちしてるというか、なんか読んでて自分の居場所がわかんなくなる感じがちょっとあったかもなっていうのがあって、それをなんとかグッと回収してこの日常なじみするものに変えようっていうのはあったな、俺。」

雑誌のインタビューやラジオのフリートークでも言葉選びにこだわったり、繊細な表現をする彼らしく、作り手と受け手の両方の目線に立った振り返りで、「さすが」と思わずにはいられなかった。

そんな松村北斗が書いたラジオドラマ。私の心に残った描写をここに書き留めておく。

「最寄りの駅まで徒歩で8分 そして電車に15分間揺られる。乗り換えは無い。」
「♪ブーブッブッ♪ このパターンのバイブレーションを設定しているのは1人だけだ。」
「そう言えば、文面の最後に『私』や『僕』をつけるのが僕達だけの特徴だ。
いつだかの昔に
『”2人だけの”って嬉しいじゃん』と君が決めた。」


このラジオドラマを聴いた時に真っ先に思ったのは「リアルだ」ということ。もしかしたら彼の実体験…?なんて考えを巡らせてしまうほど、リアルだったのだ。彼の言葉で言うならば、ちゃんと「日常なじみするもの」になっていた。

恋人と同棲をしているとお互いの勤務先の中間地点に住むことだったり、そうなるとこの最寄り駅までの距離や電車に揺られる時間もとてもリアルで。そこにさらに自分に恋人がいた頃を思い出させてくれるような恋人からの連絡だけバイブレーションの設定を変えて、誰から連絡が来たのかすぐにわかるようにしていたり。文末に「僕」「私」をつける二人だけのルールを設けたり。

「恋人」という特別な存在に対して行う、特別な行動やルールを盛り込み、細かな描写することでこれまでの2話との繋がりを守りながら、多くの人から共感を得られる物語にしてきたこと、そしてこういう日常の小さな一つ一つの行動に着眼するセンスが松村北斗だな、と思うのだった。
この後のラジオドラマを作る3人のメンバーに向けた伏線を散りばめるあたりは表現にこだわる彼ならではだと感じた。

彼の表現の魅力は、普通の人が通り過ぎてしまいそうな小さなことにも目を向け、必ず拾い上げ、言葉のニュアンスの違いを大切にしながら、繊細に紡いでいくところだ。それが凝縮されているとても素敵なラジオドラマだった。



4.器用で不器用なコミュニケーション

松村北斗といえば、「コミュ力が高くなく、人見知り」というイメージが強い。実際に本人も雑誌のインタビュー等でその話をしている。ただ実際のところコミュ力が高くないなんてことはなく、不器用なだけだと感じる。そして不器用が故に頭の中で思考し、こねくり回した結果出てきている言葉たちが彼自身の魅力となっている。だが、なんというかその不器用さが親近感になっていて、よりファンたちを惹きつけているように思う。

今回のラジオの中でも田中樹くんの「股間毛虫話」の中で、つぶやいた言葉たちは「日頃テレビを見てるの?どんなSNSを見てるとそんな広告が流れてくるの?」とこちらが気になって仕方なくなったり、とろろ御膳がオーダーミスされてるのではないか?と思っても店員さんに確認の言葉を言い出せなかったり、隣のテーブルのお客さんとオーダーミスの件で話すか?という雰囲気になった時に照れ屋さんで会釈しかできなかったり、おばあちゃん・おじいちゃんのことを「ばぁばとじぃじ」と呼んでいたりすること、全てが松村北斗も一人の人間なんだと感じさせてくれる。アイドルや俳優としての姿の向こう側を垣間見てる感覚になるのだ。

アイドルや俳優というテレビの画面の向こう側にいる人たちが完璧でないといけない時代はとうの昔に終わった。作られた姿を見せるだけで人々から共感を得られる時代も終わった。自分の長所・短所両方を含んだパーソナルな面、仕事に取り組む上での努力や葛藤をさらけ出すことで、共感を得て応援を得るように変化している。人柄を感じられることが何よりも重要なのだ。

それでいうと松村北斗という人間は人柄しか感じない。その人柄が彼のこれまでの葛藤や苦難を乗り越えさせ、成功を作り上げているのだと、遠くから見守っているファンですら感じ取ることができる。

このラジオの最後で

「今日トゥルさん(放送作家)とねー、始まる前にね、今までを反省したんだよ。『もうちょっと、あのー、話と話、行動と行動の間、詰めましょう!』」

と松村北斗は話してる。

ほら、この素晴らしいフリートークだって、事前に彼自身が考えた上に放送作家さんと打ち合わせをし、綿密に準備されたものだったのだ。以前もフリートークは放送作家さんと打ち合わせをし、構成を考えてる的な話をしていたが、実際にそうなのだ。
リスナーを楽しませるために、ちゃんと考え、準備をして挑んでいる努力を垣間見せてくれる松村北斗に最後の最後まで愛おしさを感じるのだった。



以上、7月24日の『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』に詰まった松村北斗の才能である。

最後に。昨日のラジオは京本大我がゲストで、松村北斗が作ったラジオドラマの続編が放送された。松村北斗が散りばめた伏線を汲み取り、作られた京本大我のラジオドラマにきょもほくの絆を感じ、より愛おしさが募ったのは言うまでもない。




おけい

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