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モーリス・ベジャール・バレエ団来日公演2021~クイーンの名曲に振り付けられた『バレエ・フォー・ライフ』など、音楽を観るバレエの興奮を味わいたい

8月23日に行われたモーリス・ベジャール・バレエ団2021年来日公演記者会見の模様。登壇者は、モーリス・ベジャールが他界した2007年より同バレエ団を率いるジル・ロマン芸術監督(中央)と公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS)の高橋典夫専務理事(左)。

■「音楽を観るバレエ」を堪能できるプログラム

 1967年の初来日以来、今回で18度目となるモーリス・ベジャール・バレエ団来日公演が、2回の延期を経て、いよいよ2021年10月9日(土)からスタート。 NBSとしては、2020年2~3月のパリ・オペラ座バレエ以降、初となる海外カンパニーの招聘だ。
 Aプロは、ベジャール振付の『ボレロ』『ブレルとバルバラ』、同バレエ団芸術監督であるジル・ロマン振付の『人はいつでも夢想する』というミックスプロ。Bプロは、英国のロックバンド、クイーンの17の楽曲にベジャールが振り付けた『バレエ・フォー・ライフ』。クラシックからロック、シャンソン、アバンギャルドまで、多種多様な音楽に振り付けられた圧倒的なパフォーマンスの数々を、今回は「音楽を観る」という視点で楽しんでみてはいかがだろうか。

■クラシックから現代音楽、シャンソンまで

 『ブレルとバルバラ』では、「愛しかないとき」「行かないで」「華麗なる千拍子」「平野の国」「帰り来る人への祈り」「黒いワシ」「脱帽」「いつ帰ってくるの」など、バレエを観ながら、20世紀を代表するシャンソン歌手ジャック・ブレルとバルバラの名曲を発見できる。
 『人はいつでも夢想する』の音楽は、ロック、クラシック、アバンギャルドなど多様な音楽シーンで活躍する現代アメリカの音楽家ジョン・ゾーン。彼は日本に長く滞在した経験を持ち、ロマンにとっても「今回の上演は日本とのつながりを強く感じる」と感慨深げだ。
 『ボレロ』はあえて説明する必要もないだろう。音楽は20世紀フランスの作曲家モーリス・ラヴェル。赤いテーブルの上で踊る「メロディ」と、それに導かれる「リズム」たちが、静寂から爆発的絶頂へと盛り上がるカタルシス。ベジャール不朽の傑作が、本家本元のベジャール・バレエ団で味わえるのだ。

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■クイーンの音楽を使った『バレエ・フォー・ライフ』で幸せと喜びを分かち合おう

 日本では13年ぶりの再演となる『バレエ・フォー・ライフ』。1997年の初演でも踊っているロマンは「クイーンの象徴的存在フレディ・マーキュリーやバレエ団のスター、ジョルジュ・ドンなど、若くして逝った者への追悼の意を込めた作品。以前はエイズに苦しみ、今はコロナウィルスに苦しんでいる我々だが、この作品で観客と共に幸せと喜びを分かち合いたい」と語る。
 「ボヘミアン・ラプソディ」「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」「RADIO GA GA」など人気曲はもちろん、往年のクイーン・ファンとしては「ブライトン・ロック」「シーサイド・ランデヴー」「テイク・マイ・ブレス・アウェイ」「ミリオネア・ワルツ」といった1970年代の隠れた名曲が「目と耳で楽しめる」のも嬉しい。

■3000人以上の子供たちを無料招待

 今回の来日公演では、文化庁の子供文化芸術活動支援事業における4000万円の助成金を、6歳から18歳以下の子供たち人の無料招待券に当てる。ロマンは「現代のデジタル社会の中で、私たちのステージが子供たちの想像力を掻き立てるものになってくれれば嬉しい。彼らこそが私たちの未来であるから」と期待する。招聘元のNBS専務理事の高橋は「『ボレロ』や『バレエ・フォー・ライフ』は、若い人たちにも関心をもっていただきやすい作品ではないか。まだまだ難しい世の中だが、公演をやらないことにはこのまま衰退していくのではないかという危機感を感じており、バレエ層の拡大は最重要課題。中学生や高校生たちにもご覧いただき、新しいバレエファン層を開拓したい」と、今回の無料招待企画の意義を強調した。

 まだまだ感染対策を講じながらではあるが、緊急事態宣言以降、初となる海外バレエカンパニーの来日公演。記者会見の最後は次のように締め括られた。「私たちの使命は、『バレエ・フォー・ライフ』のラストシーンのように、The Show Must Go On(ショーは続けなければならない)なのです」

文:石川了(音楽・舞踊ナビゲーター)

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写真は全て(c)Yuji Namba


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