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『どこでもいいからどこかへ行きたい』
このタイトルを知った時、「これは今の私が言いたいことだ〜!」と思わず共感してしまったほどだった。
みなさん、多かれ少なかれそうでしょう?
昨秋から徐々に流行り病が落ち着いてきたように見え、年末年始は束の間、帰省や旅行などで思い思いのお出かけ欲が満たせたかと思ったら…またまた勢いが増してきた。
どこかへ行く楽しさを知ってしまったが故の我慢の辛さ、みたいなものが充満している。
そんな昨今に効く一冊が『どこでもいいからどこかへ行きたい』(pha著)でした。
タイトルにものすごく共感したと思えば、「え!?そんな風に捉えちゃう!?」とすんなり理解は出来ずとも新たな視点をもたらしてくれ、久々にいい読書体験をしたなぁと思う。
phaさんは私からすると実に独特で明確なお出かけに対する思いを持っている人だ。
旅先でも一切特別なことはしない。観光名所なんか一人で行ってもつまらない。景色なんて見ても2分で飽きる。一人で食事をするときはできるだけ短時間で済ませたいので、土地の名物などは食べず、旅先でも普通に吉野家の牛丼とかを食べている。
えええー!?ある意味なんとアグレッシブな旅!
観光名所は抑えたいし、名物は食べたいしな私とは対照的。
でもこれは考えようによってはphaさんてとんでもなく適応能力の高さがあるのではなかろうか。
出かけた先で特別なことをせずとも自分なりに楽しんで帰れてしまう。これって最強なのでは。
要は普段家の近くでやっていることを別の場所でやっているだけなんだけど、僕にとってはそれで十分楽しい。
多分、僕が旅に求めているものは珍しい経験や素晴らしい体験ではなく、単なる日常からの距離だけなのだ。
この後、どんな街にもあるチェーン店の魅力や散歩の流儀がとくと語られて、どんな場所でも贅沢に楽しむphaさんがとても魅力的。
また、激しく共感が止まらなかったのが、旅先で感じる多少のセンチメンタルに関するこんな文章。
僕が旅行で一番好きな瞬間は、旅の終わりに家に帰る途中、バスや電車の車窓からどこにでもあるような街の風景を見て、
「ここには何千何万の家庭があるけれど、みんな僕とは関わりなく、これまでもこれからもそれぞれの人生を送っていくんだな」
という、少し寂しいような、すがすがしいような気持ちになるときかもしれない。
わかりみが深すぎて膝をバシバシ叩きたくなった。
初めて一人旅をした金沢、夕暮れの香林坊にて似たような気持ちになったことを思い出した。
「明日、私がここから帰っても、この景色はこのまま何ら変わることなくあり続けるんだよなぁ」
自分のちっぽけさ、取るに足らなささを感じるために人はどこかへ出かけたくなるのかもねー、なんて。
◇
まだしばらくは遠出が難しそうなこの頃だけれども、『どこでもいいからどこかへ行きたい』には遠く離れても、日常半径○m以内でも楽しむコツがたくさん紹介されている。
(特にサウナと散歩する際のフォームの話は秀逸!)
共感したり「そういう考え方もあるのか〜」と新たな視点を教われるカラフルなお出かけ指南書。
きっと今、誰しもがくすぶらせているであろうお出かけ欲を新たな場所へと連れ出してくれる一冊、おすすめです。
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