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あの人


次に僕が目を覚ましたのは、さっきいた時代から逆に過去の時代に来たような場所だった。

どうやらさっきいた場所が都会で、ここは田舎の部分という感じかなと思っていると、さっきの袴すがたの友人にすごく似ているけどちょっと違う人がすぐ隣にいた。

『ああ、来てたか。俺が〇〇だよ。清晴』

そう言って話し出す友人にすごく似たそいつはここが何か教えてくれた。

『ここは清晴が来たところのもうちょっと前の時代だよ』

え?逆行したの?何で?先を見せてくれるんじゃなかったの?と思ってパッとそいつの格好を見ると、さっきいた友人の豪華な袴とは打って変わって誰がどう見てもちょっと貧しい感じの格好だった。

『清晴が見た世界には未来の俺がいたと思うけど、まあ何とか成功してたでしょ?あれは今日この町で俺がやるあることであそこまで大きく変わっていくんだ』

話によると【立て直し】というのは、しっかり片付けるのと整理整頓、その時の流れをちょっと変えていくというのを時代ごとに施していくらしい。

それはすっごくめんどくさいから、計算外の僕がここにいて何かやらかしたらこの先に立て直すのが大変だし、大きなことをするほどに取り返しがつかない要素も出てくるのだという。

「えーっと、もうこの先は何があるかわかってるっていうか戻ってきた人?ってこと……だよね……?」

『うん。ちょっとずつ手を加えていってる。先の時代で起こったこと、飛び回って修正する感じかな。でも俺としての人物は時代の数よりもっともっと存在する。ほら。俺見て思ったでしょ。ちょっと違うなーって。でも俺は俺。○○だよ。まあこっちの世界では一字変えて名乗ってる。あの苗字は今この時代に存在していない、もう少し先の未来に新しくできた名前だから』


そして今日その友人が何をするのかと聞いたら、何やら【取られたものを取り返す日】らしい。

そこは僕の育った地元の地名で驚いたが、友人の実家のあるその場所は性格の悪い役人に取り締まられて普通に立ち入れなくなってるのだと。

土地柄がよく豊作で、僕の知らない名前の金や石油の類のものが取れるからと追い出されたのだという。

しかし友人はそこのすごく難しい公務員試験のようなものを突破して見回りのような仕事に就いている状況で、今日のこの日に【取られたものを取り返す】計画を実行しようとしていた。

二人で歩いてその場所に向かった。

道中、八百屋のような店の前に箱が並んで置いてあり、中には見たこともない木の実が沢山入ってた。これは何か友人に聞くと財布を開きながら

『見せたあげるよ。あまり無駄に使いたくないけどね』と言って、寛永通宝のような硬貨を八百屋のおじさんに渡して箱から適当に木の実を取った。

その場でその木の実をぐっと潰すと、炎が出た。

しばらくゴーッと炎が出た後、スッと木の実ごと消えた。

僕は魔法じゃん……と唖然としてると、やってみる?と一つ渡された。

ピスタチオの仲間みたいなそれをぐっとつまんで潰すと、バリッと光った。

バチバチ音を立てながら自分の手を中心にプラズマみたいに電気がグルグルと回っている。

『これがこの世界でいろんなものを動かしてる動力だよ。なんだっけ?清晴がいた世界にあったあれ、忍者の漫画の……』

「ナルト?」

『ああそう!それだ!忍法!!なんつってな』

その中で一番すぐに効き目が切れる木の実があったのだが、自分的にはそれが一番楽しかった。

自由に空中に浮ける木の実。身体にもう一つの感覚が出来て自在に素早く空中を移動できる。

大量にあったらしばらく飛べると思うけど、友人に『これ一個いくらするか分かってんの?』と怒られたから多分高いんだと思う。

この世界のその木の実で、何がどう動いているかの話も交えながら歩いていくと木で出来た巨大な丸太の塀が見えてきた。

木でできた丸太の塀がずっと続くと、一箇所が門になって開け放たれている。

丸太の塀はドームくらいの大きさを囲うような作りで、そのちょうど真ん中には見張り小屋のような高い建造物がある。

そのてっぺんに取り返さなきゃいけない何かがあるらしい。

と、ボソボソしゃべっていると、友人の同僚みたいな人が来てちょっかいを出してきた。向こうは三人組だった。マジでノリがDQNのソレ

『どうせまた何か企んでるんだろ?何ー?まあお前なんか何もできっこねえけどな』

笑いながら通り過ぎるそいつらを気にもとめてない感じで友人は話し続けているが、多分派閥的なのがあるんだろうと察した。

そいつらが告げ口したのか、そうとしか思えないタイミングで男の人がやってきました。

見るところ40歳前後の男の人に、マシンガンのように「どこから来たの?」「いくつ?」「どういう関係でここに?」と何も答えられないからそりゃ怪しいけども、友人の顔を見ると相当困っている感じできっと内心は(なんとかしたいけどちょっと今日のこれだけは失敗したら困るしその……)という顔をしていたように思えた。

まあとにかく黙って余計なこと言わなきゃいいでしょと僕は楽観していた。

その敷地内の取調室のような場所に連れていかれて、男の人はここで待ってなさいと言って、僕をボロボロの椅子に座らせました。

しばらくして女の人が入ってきました。

僕の前に座るなり質問です。

『どこから来たの』『名前は』『なんでここにきたの』

適当にヘラヘラ笑いながらその人の顔も見ずに「サー?」とか繰り返していたら

『顔上げて』と言われました。

「え」

この人。前の時にいた【夢見】の人だ。

「え。あの……子……なの?」 やっぱり少し違うけどあの子みたいだ。

『私もあなたのこと知ってるよ』

「え。ちょっと待ってわかんないわかんない……君も……飛んでる?いやそのぶっ飛んでるとかじゃなくて!時代を……」

『そうだよ、あいつ見たこともない奴連れてるなーと思って、また会うとはね、あなたが私を【見た】後に、まあ今更責めるわけじゃないけど大変でね。簡単に言うと私はあの後に狂ったまんまで〇〇が私に、時代飛ぶしか治せないかもって、なんやかんやで今ここにいるけど』

「いやほんとマジごめん……」

『もういいって〜、で、一つ聞いていい?私は悪い奴らの仲間じゃないから、正直に言って? あなた。 どこから来たの?』

僕は西暦で答えた。元の世界の年号で。すると驚いてた。

『かなり予想外なところから……それは完全には元の場所には戻れないかもね……』

そんな話をしていると外が騒がしくなってきた。

何か異常事態が起こっているのは周りの様子で感じ取った。

目の前の女の人が慌てて立ち上がった。

『○○が下手打ったかも……!』

そういうと僕を連れてその場所を出た。

外でものすごいスピードで死に物狂いで走る友人の姿を見た。DQN三人組が追っているのを全速力で走りながら途中で空を飛んで行った。

(あれって、木の実じゃん)と思っているとDQNの一人が『何であいつあんなの買う金持ってんだよ!?』と驚いて、飛んでいく友人を見て追いかけるのをやめていた。

僕は女の人とその丸太の塀の外へそのまま抜け出して、少し離れた林に身を隠した。

『ここ、どこかわかる?』

「いや全然……」

『〇〇町』

「ああ、そっかこんなぐらいの距離だったっけ」

そこは僕の育った地元の地名だった。

『1999年の〇〇町。その辺の時代生きた人でしょ。確かあれだよ、ポケベルとかあった。たまごっちってのが流行ったでしょ。こんなこと言って説教するつもりはさらさらないけど、キリがないほどあるいろんな世界の中ですごく楽しい時代だよ。君のいたところ』

「僕が子供の頃だよ。もう少し先まで居たんだけどなんか戻れそうにも思えなくなってきたよ。なんか途中からおかしかったし」

『あとふたつ、この先の世界を通ったら君は元の世界で目を覚ますよ。元の世界を楽しもうと思うのと同時に少し悲しくもなると思うけど、君は心配しないでそこで生きればいいの。あとは君の世界にも【立て直し】の効果は響いていくから大丈夫』

「大丈夫…………か…………」

『その言葉。過去を見たね今。誰かの口癖か何かかな?』

「え。ああ。僕の口癖。よく言ってた。自分にも他人にも【結局大丈夫だって、心配すること何にもない】ってなんか見えるの?まさか思ってることわかっちゃう何かがあるの?」

『ううん。あなたが言いながら左のほうを見たから。それだけ』

夢見ってのはやっぱ心理学的な何かなんだろうと思った。

『右見て』

はいというと張り倒された感覚で僕は倒れた。

意識が遠のく最中に、次の世界に行くのかとどこか安心した感覚もあった。

薄れ行く意識の中でその子の声が微かに聞こえた。

『まあ大丈夫だよ』






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