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そして箱根へ…

前回、箱根登山電車にて強羅迄やって參りました。
そして鋼索線に乗り換えて一路、早雲山を目指します。

ケ10形客車

これ迄と打って変わって、この年出たばかりの最新鋭車輛とご對面であります。
従前迄、スイス製のケ100形客車が主力だったところ日本の京王重機製の客車が登場であります。

友達からケーブルカーと電車の違いという素朴な疑問が出てきました。
要するに自分のモーターで登らないで頂上にある機械で巻き上げているヒモで引っ張ってもらって動いているのがケーブルカーなのだと説明。
こう云うのはマニアックな知識や導入などは極力省いて簡潔且つ解り易く言うのが一番です。

「そうか、つまりだらしない男と同じだな!」…と友人の談。
「おいおい…、ヒモってそう云う意味じゃねえぞ!」…と私。
「他力本願な乗り物だな」…ともう一人の友人が……。

嗚呼、ケーブルカーさん。御免なさい………。
この短距離で急勾配の坂道を登るには車輛が自走するよりも拠点に設けた設備で引っ張った方が効率的なのだと云う事を附け加えておきます。

そして早雲山驛から更に索道に乗り継いで大涌谷を目指します。

こう云うゴンドラに乗る時は、なんだかワクワクするものです

索道とは所謂「ロープウェイ」の事であります。
驛舎も新しくなりゴンドラもハイカラな雰囲氣ですが、この日「箱根ロープウェイ」に最後に乗った事になりました。

この時から約2年後、箱根ロープウェイは箱根登山鉄道に吸収されて消滅したのでありました。
今はどうなっているのか存じませんが、書庫に大事に残しておいたこの時のロープウェイの券面にはしっかりと「箱根ロープウエイ」とあります。

切符は大事な旅の思い出

私はイマドキの「チケットレス」と云うのにどうしても馴染めない身の上なのです。
用が濟んだら消えてしまう電磁的なデータでなく、一つの旅が終わった後も實物が手元に残る事は私にとって大切な事なのです。
手に取ったり眺めているだけで、あの時の樂しいひと時が蘇ってくる様なのです。

眼下に見える温泉造成施設

ロープウェイにご乗車の皆さんは景色ばかりに氣を取られている中、私は一人キャメラを下方へ…。
この様に大涌谷温泉を精製して配給する設備を上空から見物する事が出來ます。
この温泉は強酸性で硫黄の含有量も多いので、こう云う特別な設備が必要なのです。

専門的な事はともかく、こうして湧出する源泉を貯蔵しといて、この馬鹿でかい設備で火山ガスと混合して精製する温泉水を供給する事によって、各種ミネラルが豊富にある素晴らしい湯を箱根の町で愉しめるのが解るDAろう?

ステキだわー!
霞がかる箱根の山々

勿論、ロープウェイからの景色も一枚。
快晴は勿論ですが、こうして少し霞んでいる風景もまた良きもの。
人生で大事な事は「これはこれで良い」と云う、一つの物事を多角的に愉しめる精神にあると思います。

これはこれでいいのだ!
大涌谷に到着

然してやって參りました大涌谷驛であります。

山間の硫黄を観察

標高も高く、その日の外は強風が吹き荒れておりましたが、早雲山と云う名だけあって雲が走り去る様に過ぎていきます。
この様子を山頂から見るに、恰も山が雲海を進む巨大な浮遊大陸の如きであります。

まさに雲を取るが如し

先程の温泉造成施設關係の機器が至る所に見えますが、この設備のタンクや配管はすぐに硫黄や湯の華が附着してしまうので毎日の除去作業は欠かせません。
しかも有毒な火山ガス濃度が高いので防毒面(ガスマスク)が必須の現場です。
私達がこの後愉しむ事になる箱根の湯もこうしたところの不断の努力に依って維持されている事を忘れてはならないと思います。

そうです。この箱根の旅に出た我ら3人、泉湯民族!
温泉はただ面白おかしく入るものでない事位とうの昔に、とっくに理解しているのです。

温泉を愛する者、それは宇宙一の誇り高き一族の様に…。
大涌谷のくろたまご

當地では、この茹で卵が名物です。
温泉で卵を茹でる事によってそこに含まれる硫黄と鐵分が結び附き、酸化鐵が卵に附着して卵の表面が黒く変色する事から「くろたまご」と称されております。

くろたまごを「手に入れた!」

賣店があるので、さっそくみんなで購入するのです。
卵に振る塩が附いていて親切です。

立て!立つんだ、くろたまごー!!

尚、この場所は活火山の眞っただ中です。
當然、この日も火山ガスが發生しておりました。
この臭氣の中で茹で卵を食べるのもまた一興でありますが、大自然の猛威は恐るべきものです。注意して観光しましょう。

…密かに「なるほど、火山ガスか……」と趣味でやっているRPGツクールのダンジョンのギミックを思い附いてお土産屋さんを散策致します。

賣店で見附けた物…

私は極度の近眼なので「箱根のおしり」と見えてしまったお菓子。
自宅での珈琲のお茶請けに賈って行きました。


さて、一通り大涌谷見物も濟んだので索道と鋼索線を乗り継いで下山致します。
そして強羅驛からバスに乗り換えてお待ちかね温泉タイムです。

この日は「ユネッサン」と云う場所を訪れたのでありますが、相当の混み様と山道をバスで揺られた疲勞で3人ともお寫眞を誰も撮らないと云う事態に……。
しかし、流石は大規模な温泉施設。
これだけの人員が入り込んでもゆったり入浴する事が出來ました。
先程見學した源泉を思い出しつゝ、大自然の成分の溶け込んだ湯に思いを馳せてありがたく浸かり、ありがたく湯上りの一杯を戴くのでありました。


さて折しも、今日は11月26日。
毎度お馴染み「良い風呂の日」であります。
この旅で入った箱根の湯を思い出して、この後お風呂にゆっくりと入る事に致しましょう。

箱根のお土産

こんな事もあろうかと大涌谷の賣店で賈ってきた、この「檜チップ」をお湯の中に浮かべて遊びましょう。
天日で乾かして繰り返し使えるのが嬉しい逸品です。
パッケージをわざわざ取っておくのは、この箱根の旅が思い出深い樂しいものだったからに外なりません。

續く…

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